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「豊さんと和田さんに叱られた(苦笑)」──涙腺が崩壊した3月4日のこと【In the brain】

  • 2023年03月16日(木) 18時01分
“VOICE”

▲涙腺が崩壊した福永調教師の引退式の話(撮影:福井麻衣子)


3月4日、福永祐一調教師の引退式が多くのファンが見守る阪神競馬場のパドックで行われました。両親や師匠である北橋元調教師をはじめ親交の深い方々が登壇する中、引退記念のTシャツとキャップを被ったジョッキー仲間の中に涙を堪えきれない川田騎手の姿がありました。

これまで見たことがないほどの大粒の涙を流す川田騎手。「あの日は本当に無理でした」と話す3月4日の裏話に加え、引退式を終えた後、空港でひとり号泣した秘話まで明かしてくれました。

(取材・構成=不破由妃子)

「周りにどう思われようが、そんなことはどうでもよかった」


 3月4日、土曜日。最終レースが終わったあとの阪神競馬場のパドックで、(福永)祐一さんの引退式が行われました。

 僕は後輩代表として花束を贈呈し、そこで祐一さんに対して言葉を贈る役割を担っていました。普段の僕であれば、あらかじめコメントを順序立てて考えて臨むのですが、あの日は完全にノープラン。というのも、あれこれ考えたところで、いざ壇上に立ったら泣いて言葉にならず、ひと言も話せないだろうなと思っていたからです。

 壇上に立ち、祐一さんと目が合いました。そして、小さくひとつ、うなずいた祐一さん。「ちゃんとしなければ。なんとか言葉を発さなければ…」と思ったときに浮かんだのは、サウジアラビアでの最終騎乗後の祐一さんの姿でした。

「長い間、本当にお疲れさまでした。サウジアラビアでの最終騎乗から帰ってきたときの爽やかな笑顔。とても心に焼き付いております。本当に無事に終われて何よりです。お疲れさまでした」(花束贈呈の際の川田騎手のコメント)

 無事に最終騎乗を終えてよかったとホッとしているところに戻ってきた祐一さん。リメイクとともに戦い切ったあの笑顔、「アメリカの馬、強いなぁ」と相手を称えながら戻ってきたときの、あの晴れやかな笑顔──。結果は3着でしたが、騎手として最後の騎乗を終えたからではなく、リメイクとともに作り上げてきた競馬をしっかりとやり切り、一切の悔いを残さない戦いであったことが伝わってきて、すごく印象に残ったんです。

 結局、ほんの一言でしたが、なんとか言葉を発することができました。(武)豊さんと和田(竜二)さんに比べれば短いものでしたが、僕としては上出来(笑)。思ったより喋れたなぁと

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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