昨年負けた天皇賞(秋)を大目標に
大阪杯を制したジャックドール(c)netkeiba.com
ジャックドール(父モーリス)のGI初制覇は、武豊騎手のJRA、GI勝利ジョッキー最年長記録(54歳19日)であると同時に、前人未到のGI「80勝」だった。
勝利騎手インタビューで、「きょうの馬場状態だと遅くする必要はないので、前半を59秒くらいで入りたいと思っていた」と振り返った言葉通り、レースレコード1分57秒4の中身は、前後半バランス「58秒9-58秒5」だからすごい。
絶妙の前後半は、ベテラン武豊騎手の卓越したペース感覚だが、同時に、ジャックドールはこれで2000mを「1分57秒台での逃げ切り勝ち」3勝目となった。
2022年の
白富士S(東京) 1分57秒4=「59秒4-58秒0(上がり34秒7)」
金鯱賞(中京)1分57秒2=「59秒3-57秒9(上がり34秒6)」
今回の
大阪杯(阪神)1分57秒4=「58秒9-58秒5(上がり35秒3)」
前半1000m通過の差は、コースも相手も異なるのにわずか「0秒5」。ジャックドールが理想とする前半のペースだったことも示している。
昨秋の天皇賞(秋)は、1分57秒8で乗り切りながら4着止まりの敗戦だが、リプレイからの推測だとジャックドール自身の前後半はおよそ「60秒9-56秒9」。体調も関係したが、パンサラッサのペース(1000m通過57秒4)に幻惑された内容だった。
陣営は「宝塚記念も視野に入るが、今後の大目標は昨年負けた天皇賞(秋)」であることを表明している。おそらく武豊騎乗と推測されるが、好タイムで決着する天皇賞(秋)の直近5年の前半1000mの平均は、昨年の猛ペースを入れても「59秒36」。飛ばす馬不在なら、ジャックドールが流れを作りやすい数字を示している。
ただ、それだけに上がりは高速。5回の勝ち馬の上がり3ハロン平均は「33秒28」だった。この数字は現時点のジャックドール向きではない。
2着スターズオンアース(父ドゥラメンテ)は、出遅れというほどではないが、ダッシュ一歩だった。最後は巧みに馬群をさばいてジャックドールとハナ差。同じ阪神2000mの秋華賞と同じようなレースになってしまった。馬体の戻っていたジャックドールの気配も抜群だったが、自己最高の484キロまで身体が大きくなった4歳牝馬スターズオンアースは、一段とすごい牝馬に成長している。上がり34秒4は断然トップだった。
「もともとが2400m向きの馬で、長い直線があれば…(ルメール騎手)」と残念がる惜敗になったが、その能力をフルに発揮できるのは、ジャパンCの東京2400m、新京都2200m(外)のエリザベス女王杯ということになる。
10番人気のダノンザキッド(父ジャスタウェイ)の「ハナ、クビ」差3着は、懸念のイラつく仕草を見せなかった陣営の入念な仕上げも大きいが、流れを読んで積極策に出た横山和生騎手のファインプレー。一瞬は勝てるかと思わせるシーンもあった。マイルから2000m前後までこなす距離の幅は広くなり、ホープフルSは勝っていても最近は不得手に近い中山コース以外なら、再びビッグレース制覇も展望できる。
3番人気のヴェルトライゼンデ(父ドリームジャーニー)は、直前人気が上がったように素晴らしい状態だった。位置取りも絶好だったが、スパートのタイミングの難しさが出た印象がある。右前の屈腱炎を見事に克服したが、オールカマーと、今回の大阪杯は凡走。逆に左回りでは3戦すべて快走。あのあと右回りはあまり得手ではない。
4番人気のヒシイグアス(父ハーツクライ)は、馬体重マイナス18キロ。前走がプラス14キロであり、好走した5歳末の香港Cが485キロだったので、馬体細化ということではなく、ここ一番で絞ったと思えた。ただ、2週前、1週前と好調教のあと、直前は木曜追いでやや控えめ。輸送を前にして仕上がりすぎてしまったのかもしれない。
最内枠の牝馬2頭は、好タイムは出ていたものの「内側の芝コンディションがタフに変化していた」ため、前半の追走がスムーズではなかったことを敗因にあげていた。