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【オークス予想】チャンスは十分!? AIが指名した伏兵の一発を警戒しておきたい

  • 2023年05月15日(月) 18時00分

オークス出走予定のペリファーニア(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)


どちらかと言えば上位人気馬の好走率が高いレース


AIマスターM(以下、M) 先週はヴィクトリアMが行われ、単勝オッズ7.6倍(4番人気)のソングラインが優勝を果たしました。

伊吹 お見事と言うほかありません。スタート直後はポジションを取りに行く素振りも見せていましたが、無理せず先行勢を先に行かせて、道中は中団のインコースを追走。コーナーワークでスムーズにポジションを押し上げ、4コーナーを6番手で通過しています。その後も脚色は衰えず、道中ですぐ前にいたスターズオンアース(3着)を残り200m地点のあたりで、先に抜け出していたソダシ(2着)をゴールの直前で、それぞれかわし切りました。ゴール前の直線に入っても内ラチの方に寄らなかったソダシや、直線半ばでそのソダシよりも外へ切り替えたスターズオンアースとは対照的に、ソングラインは最後の最後にソダシへ併せていくまで、ずっと内ラチから数頭分くらいの進路をほぼ真っすぐ走り切っているんですよね。陣営はもちろん、完璧なエスコートで勝ち筋へと導いた鞍上の戸崎圭太騎手にとっても、会心の勝利だったのではないでしょうか。

M ソングラインは昨年の安田記念に続く自身2度目のGI制覇。3歳時にはNHKマイルCで勝ったシュネルマイスターとハナ差の2着に健闘した実績もあります。

伊吹 昨年のヴィクトリアMこそ5着どまりでしたが、その実力やコース適性の高さは十分過ぎるほどに証明済み。この3頭の組み合わせで3連単1万2830円というのは、ソングラインを信じた方にとっては妙味ある配当だったかもしれません。前走の1351ターフスプリントで10着に、2走前のセントウルSでも5着に敗れていた点をどう見るかが、最大のポイントでしたね。正直なところ私はここを見誤っていたので、深く反省しているところです。

M 改めて結果を残したことで、今後は再び注目度が高まるのではないでしょうか。

伊吹 5歳とはいえキャリア14戦ですから、まだまだこの路線を盛り上げてくれるのではないかと思います。ただ、右回りのレースはこれまでのところ2回しか使っておらず、2021年桜花賞と2021年阪神Cでいずれも15着に敗退。今秋のマイルCSに参戦してきた場合は、また世間の評価が割れるかもしれません。ゴール前の直線に急坂のない京都芝1600m外ならば難なくこなしそうな気もしますが……楽しみですね。

M 今週の日曜東京メインレースは、東京芝2400mの舞台で争われる3歳牝馬クラシック競走の第2戦、オークス。昨年は単勝オッズ6.5倍(3番人気)のスターズオンアースが優勝を果たしました。なお、その2022年は単勝オッズ28.2倍(10番人気)のスタニングローズが2着に、単勝オッズ7.1倍(4番人気)のナミュールが3着に食い込み、3連単の配当は11万9010円。伏兵の台頭を期待して良いレースなのでしょうか。


伊吹 何とも言えませんね。低評価を覆して上位に食い込んだ馬も決して少なくはないのですが、過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝1番人気馬の3着内率は80.0%に、単勝2〜3番人気馬の3着内率は50.0%に達しています。



M 対照的に、単勝4〜6番人気の馬や単勝7番人気以下の馬は、3着内率がやや物足りない水準。むしろ、堅く収まりがちなレースと見ておいた方が良さそうですね。

伊吹 2019年以降のここ4年連続で単勝10番人気以下の馬が1頭ずつ馬券に絡んでいるわけですし、あえて超人気薄の馬から入るというのも、ひとつの手かもしれません。ただ、たとえそういう作戦で臨むとしても、上位人気グループの馬を安易に嫌ってしまわないよう心掛けるべきでしょう。

M そんなオークスでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ペリファーニアです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。さすがに超人気薄ではないと思いますが、人気が集中するということもなさそう。

M ペリファーニアは半兄に2021年のJRA賞年度代表馬であるエフフォーリアがいる超良血馬。前走の桜花賞では、勝ったリバティアイランドと0.2秒差の3着に食い込んでいます。ただし、収得賞金400万円の1勝馬であることもまた事実。懐疑的に見ている方は少なくないかもしれません。

伊吹 積極的に狙おうと考えている方がそれなりにいる一方で、バッサリ切ろうと考えている方も結構いるだろうな……というイメージです。Aiエスケープが高く評価していることを踏まえたうえで、オークスの傾向とこの馬のプロフィールを照らし合わせてみましょう。

M 桜花賞は勝ったリバティアイランドと0.2秒差。高く評価して良い結果だったと思うのですが、どう見ていますか?

伊吹 当然と言えば当然の話ですが、強調材料のひとつと見て良さそう。近年は前走好走馬が優勢で、2018年以降の過去5年に限ると、3着以内となった15頭はいずれも前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.4秒以内でした。



M なるほど。前哨戦で大きく敗れてしまった馬は強調できませんね。

伊吹 桜花賞までは1マイル前後のレースが中心ということもあって、このオークスは血統をはじめとする戦績以外のファクターに注目が集まってしまいがち。ただ、近年の傾向を見る限りだと、どちらかと言えば直近のパフォーマンスを素直に評価したいレースです。

M 前走の着順や着差といったところ以外では、どのあたりに注目するべきなのでしょうか。

伊吹 やはり最大のポイントは脚質。2018年以降の3着以内馬15頭中、2018年1着のアーモンドアイを除く14頭は、前走の4コーナー通過順が3〜12番手でした。



M こちらもはっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 今年は前走の4コーナーを16番手で通過したリバティアイランドが断然の人気を集めそう。アーモンドアイ級の大物である可能性もそれなりに高いとはいえ、極端な競馬をした直後の馬がこれだけ苦戦しているわけですから、あまり信頼し過ぎない方が良いのかもしれません。

M ペリファーニアは桜花賞の4コーナーを4番手で通過。この点に関してだけ言えば、リバティアイランドよりも高く評価できる内容だったと見て良さそうです。

伊吹 ただ、桜花賞でマークした上がり3ハロンタイムが出走メンバー中7位タイどまりだった点は少々気掛かり。同じく2018年以降の3着以内馬15頭中11頭は、前走の上がり3ハロンタイム順位が3位以内でした。



M ペリファーニアは桜花賞における上がり3ハロンタイムが34秒1。断然のトップだったリバティアイランドの数字(32秒9)を1秒以上も下回っています。

伊吹 ちなみに、前走の上がり3ハロンタイム順位が4位以下だったにもかかわらず3着以内となった4頭は、いずれも“東京、かつ1勝クラス以上のレース”において1着となった経験があった馬。よほどコース適性が高い馬でない限り、苦戦する可能性が高いと見るべきでしょう。

M 残念ながら、ペリファーニアはこの条件もクリアしていません。

伊吹 もっとも、先程触れたリバティアイランドを筆頭に、今年は出走予定馬の大半が何かしらの不安要素を抱えているという状況。Aiエスケープは高く評価しているわけですし、私も相応のシルシは打つつもりです。実際のオッズも踏まえたうえで、ペリファーニアの最終的な位置付けをじっくり検討したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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