▲日本ダービー出走予定のメタルスピードに騎乗する津村明秀騎手 (C)netkeiba.com
初コンビとなったスプリングSでは8番人気3着、続く皐月賞では13番人気4着と、低評価を覆して好走を続けているメタルスピード。特に皐月賞の4コーナーでは、「これは」という手応えで勝利も意識されたそう。
津村騎手自身、今年が2度目となるダービー騎乗。初騎乗となった2020年は無観客競馬でしたが、今年は初めてスタンド超満員の日本ダービーに挑みます。「一発狙って」という強い意気込みを聞かせてくれました。
(取材・構成:佐々木祥恵)
4コーナーで「これは」という手応えだった皐月賞
──メタルスピードに初めて跨ったのはスプリングS前の調教だったと聞きましたが、その時の印象はどうでしたか?
津村 攻め馬に初めて乗った時から、とても素直で乗りやすいと感じました。レースではマイルを使われていることが多かったので、カーッとする面があるのかなと思いましたが、坂路を普通キャンターで乗ってみて、短距離馬という感じがしませんでした。
坂路からウッドチップコースに入っても、良いリズムで乗り手との呼吸が乱れることなく、手綱を引っ張ることなく調教ができました。思ったよりも時計が出ていたのですが、そんなに速いタイムだと感じなかったくらいのゆったりした走りだったので、この時もマイルなどの短い距離の馬ではないという印象を持ちました。
──実際レースに乗ってみてどうでしたか?
津村 道中も調教同様、乗り手に従順で折り合いもついていました。中1週のきついローテーションで3着に来て力があるところを示せましたし、皐月賞の権利を取れたのは良かったです。
▲初コンビとなったスプリングS (ユーザー提供:モエロウエクラさん)
──スプリングSでは出負けしていましたが、皐月賞ではスタートもまずまずだったように見えました。
津村 スプリングSでは、ゲートの中でソワソワする面がありました。中1週でのレースも影響していたように思います。皐月賞はスプリングSよりもゲートは良かったですね。
──皐月賞では中団の位置からレースを進めていましたね。
津村 道中はとても良い位置につけられたなという感じはしました。中山も最終週で雨も降ったりしていて、内側の馬場が結構悪くなっていたので、外枠もちょうど良かったですね。
──外枠のおかげで馬場の良いところを通れたということですね。
津村 はい。それに2着馬がちょうど前にいましたので、それを見ながら良い感じで行けました。
▲「外枠もちょうど良く、良い位置につけられた」 (ユーザー提供:じゅんさん)
──直線では差されて4着でしたが、しぶとく伸びていましたね。
津村 4コーナーでは「これは」という手応えでした。ただレースも詰めて使ってきていたので、それを考えると本当に頑張ったなと思います。
──まだ成長段階だと思いますが、現段階でのこの馬の強みは?
津村 競馬のセンスが良いですし、スピードもあります。かといってこちらの意にそぐわないことをしないので、総合的に良い馬だと思います。
ただ少し緊張する面があるので、ゲートの中でソワソワするところもあるのだと思います。真面目な馬なのだと思いますよ。
──真面目だからこそ、レースの時には緊張してしまうのかもしれないですね。
津村 そうですね。ゲートの中に入った瞬間から競馬だということがわかっていると思います。
──頭も良いのでしょうね。
津村 はい。ゲートの中以外は無駄なこともしないですしね。
──斎藤誠調教師とはこの馬について何か話されていますか?
津村 先生とは秋になればもっと良くなると話しています。距離ももう少し長くしてもいいのではないかという話もしています。
──ではダービーの2400mも大丈夫ですか?
津村 青葉賞を使った馬以外は、ほとんどの馬が2400mは初めてですし、ほぼ条件的には一緒ですからね。それを考えると競馬に行って乗り手に従順で折り合いがつく面はプラスに出ると思います。
本来のダービーの雰囲気を味わえるのは初めて
──津村騎手個人の話題になりますが、先日600勝を達成されて、今年は23勝(※5/12取材時)と好調ですよね。
▲5月6日の東京3Rでレディアスに騎乗して1着となり、JRA通算600勝を達成 (撮影:下野雄規)
津村 今年は馬との呼吸が良いと感じています。競馬前の準備を以前よりも意識するようになりました。
──例えばどのように意識しているのですか?
津村 事前に乗る馬についてレース映像を見たりして調べるのはもちろんのこと、馬に乗った瞬間から馬と会話するといいますか、どんな馬なのだろうと探るようにしています。
返し馬でも勝手にキャンターに行かないように、ちゃんと乗り手の指示に従って走り出せるようにするなど、1つ1つを丁寧に行うよう心掛けています。あとはゲートもちゃんと出るように、そのあたりも工夫しながらやっています。
──前から努力はされていたと思いますが、今年はより一層努力されているという感じですか?
津村 足りてないところはたくさんあったと思います。それに去年、GIを初めて勝ったジョッキーがたくさんいて、僕も早く勝ちたいという気持ちが一層強まったというのもありますね。
──その悔しさがバネになって?
津村 そうですね。GIを勝てないことでそこでダメだと思うか、それをバネにするかは自分次第なので、そういう意味では(悔しさを味わったことは)良い経験だったと思います。
──ダービーは2020年のビターエンダー以来、2度目のダービーとなります。
津村 ビターエンダーの時は無観客でしたから、本来のダービーの雰囲気を味わえるのは初めてなので、楽しみにしています。
──では最後にメタルスピードとともに臨むダービーへの意気込みをお願いします。
津村 馬が頑張ってくれて皐月賞の権利を取れて、そこからそのままダービーに出られるのは本当に嬉しかったですし、皐月賞からダービーまでの期間を過ごせるというのが日々のモチベーションになっています。本当にレースが楽しみですね。
強い馬はたくさんいますけど、この馬も力をつけていますので、一発狙って何か起きないかなということを期待してレースに臨みたいと思います。
(文中敬称略)