▲いよいよICUで夫と面会 (撮影:桂伸也)
障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。
夫が眠るICUに入る許可が下りましたが、由紀子さんには引っかかることが…。しかし看護師さんの「会っておかれたほうがいい」という助言で面会することを決断しました。
雄造騎手は眠ったままの短い面会時間でしたが、白浜夫婦らしいひとときとなりました。
「奥様のお声が聞こえて安心されているのかもしれませんね。」
身に着けていた衣類や防具の確認を終えると、看護師さんからこんな報告がありました。
「コロナワクチンを3回接種している成人の親族ひとり、15分間だけICUに入る許可が下りました」
滋賀から遠路はるばるやってきた患者家族に、配慮していただいたのだと思います。ただ、ずいぶん前に夫と「事故などで怪我をして意識を失い、目を覚ましたとき、誰に側にいてほしいか?」という話をしたことがあり、そのときに夫は、
「誰にもいてほしくない。ひとりがいい」
と、言っていたのです。
子供たちは面会できませんでしたし、夫はきっと誰にも会いたくないだろうと思い、私は面会を辞退する旨を看護師さんに伝えました。
すると、看護師さんからは、「お子さんの声をスマホに録って聞かせてあげるのはどうですか? それに、今を逃すと一カ月は会えない可能性が高い。急変する可能性もゼロではないから、会っておかれたほうがいいですよ」と助言が。
そうか、もう二度と会えない可能性もゼロではないんだ──最悪の事態に思い至った私は、面会をすることに決めたのです。
子供たちにパパを応援してもらおうとスマホのカメラを向けましたが、たくさんの大人たちに囲まれ、遊んでもらえる状況に興奮しているふたり…。上手く応援動画を撮ることはできませんでした。
動画撮影はあきらめ、ICUに入る諸々の手続きを済ませ、いざICUへ──。一度溶けた緊張が、再び私の心を覆っていくのを感じました。
途中、緊張する私を見た看護師さんが、そっと肩を抱いてくれました。「しっかりしなければ」と気合いを入れ直し、夫が眠るベッドへ向かいました。