早くも名牝の歴史に名を連ねる勝ち方だった
オークスで二冠を制したリバティアイランド(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
驚愕の桜花賞も強烈だったが、リバティアイランド(父ドゥラメンテ)のオークスは早くも名牝の歴史に名を連ねる勝ち方だった。
競走馬資源の乏しかった遠い時代には、大差勝ち、10馬身差の記録も残っているが、現在とほぼ同じような形態になって以降は、1975年に桜花賞を大差で勝った伝説のテスコガビー(父テスコボーイ)が、オークスを8馬身差で勝った。
ほかにこの半世紀のあいだに1980年のケイキロク(父ラディガ)と、2012年の3冠牝馬ジェンティルドンナ(父ディープインパクト)がともに5馬身差で勝っているが、全体のレベルが高くなっている現代のオークスで「6馬身差独走」は、長く語り継がれることになりそうである。
2019年にラヴズオンリーユー(父ディープインパクト)の記録した2分22秒8のレースレコードにはわずかに及ばず、史上2位のタイムだが、今年のレース全体の前後半は「1分12秒0−1分11秒1」=2分23秒1。中間地点で先頭のライトクオンタム(父ディープインパクト)から約10馬身は離れた6番手にいたリバティアイランドの前半1200m通過は推定1分13秒7前後。するとあくまで推測だが後半の1200mは1分09秒4前後。
この後半に見せたスピードとスタミナを結集した「1分09秒台前半」の記録は、レコードのラヴズオンリーユーはもちろん、史上3位となった2分23秒6のジェンティルドンナ、4位アーモンドアイの2分23秒8の後半1200mの数字を確実に上回る。
陣営は、まず秋の秋華賞で牝馬3冠達成を目標にすると同時に、「来年は海外遠征も考えることになるでしょう」。未来の展望を掲げている。
過去にオークス2400mを「2分22秒台−2分23秒台」で制し、タイム上位だったラヴズオンリーユー、ジェンティルドンナ、アーモンドアイの3頭は、みんな海外のビッグレースを勝っている。リバティアイランドも当然のように、さらに強い相手を求めて海外遠征に踏み出すだろう。パドックを歩くと、466キロの馬体重よりひと回りも、ふた回りも大きく見せる身体は、迫力にあふれていた。
そのリバティアイランドをマークする位置にいた2番人気のハーパー(父ハーツクライ)が必死に伸びて2着。4コーナーでは手応えもう一歩。勝ち馬には離されてしまったが、2分24秒1(上がり34秒8)は例年の勝ち馬に相当する記録であり、順調に成長するなら、4歳、5歳になるとき、例年のオークス馬と同じようなランクになって不思議ない。
3着に、勝ち馬と互角の上がり34秒1で突っ込んだのはドゥーラ(父ドゥラメンテ)。成長が止まったかのような成績が続いたが、前3戦のマイル戦は距離不足だった。1番人気で札幌2歳S1800mを制した牝馬らしい底力再現は見事だった。
3番人気のコナコースト(父キタサンブラック)は、スタートで両脇の馬にぶつかる不利があまりにも痛かった。前半に本来のリズムを欠いたので、能力全開とならなかったのは残念だった。
4番人気のゴールデンハインド(父ゴールドシップ)は前の4頭から離れた5番手で、ハナを切っているのと同じような展開になったが、「前に馬がいるとふわふわしていた」と菅原明良騎手が振り返ったように、終始スムーズな追走ではなかった。