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【矢作調教師が明かす舞台裏】騎手の『期間限定トレード』 古川奈穂騎手に大井で学んでほしい2つのこと

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  • 2023年05月23日(火) 18時03分
kisyuikusei

▲本プロジェクトを立ち上げた(右)矢作調教師と(左)松浦調教師(C)netkeiba.com


矢作芳人調教師といえば、数々の技術調教師の面倒をみてこられたり、初弟子の坂井瑠星騎手を国内外で活躍する若手を代表する騎手へと押し上げられたり、競馬人の育成にも尽力されています。

そんな矢作調教師と、大井の盟友・松浦裕之調教師との共同プロジェクト、騎手の『期間限定トレード』が、先週15日からスタートしました。

JRAの古川奈穂騎手が大井に、大井の吉井章騎手が栗東に行き、違う環境で一定期間学ぶという史上初のプロジェクトは、どのように誕生したのでしょうか。そして、矢作調教師が両騎手に伝えたいメッセージとは?

(取材・構成=不破由妃子)

今の環境では、奈穂騎手の調教騎乗数が圧倒的に足りない


──今月中旬、所属の古川奈穂騎手と大井の吉井章騎手のトレードが話題になりました。画期的な試みはすでにスタートしているわけですが、まずは、この計画が持ち上がったきっかけを教えてください。

矢作 奈穂がデビューした前後に、もう少しスキルアップしなければ厳しいなと思ったのが始まりです。

──あ、そんなに前から計画されていたんですね。

矢作 そうです。でも、さすがにコロナ禍では実現することができなかった。すべての規制が撤廃されてからじゃないと、大井競馬場、NAR、JRAを説得できませんからね。

 で、5月8日に規制が撤廃されることを見越して、3月頃に再び計画が動き出したと(5月8日に新型コロナウイルスが2類相当から5類に変更されることに伴い、現在行っている感染拡大防止のための各種運用・制限などについて、原則としてコロナ前に戻すことがJRAより発表された)。

 だからね、この件を報じる記事には、枕詞のように「スマホ不正使用で騎乗停止中の…」と書かれているけど、実はまったく関係ない。とはいえ、この機会に大井で修行しながら反省してこい! という気持ちがゼロだと言ったら嘘になるけどね。

──目的は、あくまで奈穂騎手のスキルアップ。決して禊ではないことをしっかり書かせていただきます。

矢作 お願いします。奈穂は、競馬とは無縁の世界から入ってきたので、馬に乗ってきた絶対数が圧倒的に少ない。運動神経というか、身体能力の高さで取ってもらったようなものなんですよ。どんなに身体能力に優れていても、馬に乗るスキルというのは、やはり馬に乗ることでしか鍛えられない。

 でも、レースの騎乗数が多いわけでもないし、中央で毎日調教に乗ったとしても、せいぜい1日に4、5頭ですからね。これではもう圧倒的に足りない。その点、地方の調教は1日10頭以上乗るのが当たり前なので、それだけでも確実に絶対数が増える。これが、この計画を実現させたかった一番の理由です。

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▲「地方の調教は1日10頭以上」大井初日から調教に騎乗する古川騎手(C)netkeiba.com


──同じ日本の競馬であっても、中央と地方ではそこまで違うんですね。

矢作 全然違います。俺は大井からスタートしているから地方の事情もわかっているけど(JRA競馬学校厩務員課程に入学する前に、当時大井競馬場で調教師をしていた父・矢作和人氏の厩舎で調教や厩舎作業に従事)、中央競馬しか経験していない子は、当然ながら地方のそういう状況を知らない。

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矢作芳人
1961年3月20日、東京都生まれ。父は大井競馬の元調教師矢作和人。オーストラリアでの修行後、厩務員、調教助手を経て2005年に厩舎を開業。2010年に朝日杯FSをグランプリボスで制しGI初制覇。2020年にコントレイルで牡馬三冠、2021年にはブリーダーズカップで管理馬2頭(ラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌ)が勝利するという快挙を成し遂げた。

松浦裕之
1971年10月22日、東京都生まれ。父は大井競馬の元調教師松浦備。1993年に騎手としてデビュー後、2006年に調教師へ転身。2007年に東京記念をウエノマルクンで制し、重賞初制覇。2022年にはキャリアハイタイとなる年間36勝を記録した。

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