▲内田騎手が騎手仲間から慕われる理由とは?(撮影:下野雄規)
当時19歳だった佑介騎手と内田騎手の追い比べになった18年前のとあるレース。当時から追い比べになったら負ける気はしない自信があったと話す内田騎手の気迫に負けたと痛感し、そのレースは佑介騎手が変わるきっかけになったそう。内田騎手のストロングポイントでもある“追い比べ”についてお話しを伺いました。
そして後半は内田騎手の人柄の話に。普段はライバルであるはずの他の騎手たちを「仲間」と呼ぶ内田騎手の仕事への姿勢から、レースを見守る騎手ルームで「内田さんコール」の大合唱が起こる所以を垣間見ることができました。
(取材・構成=不破由妃子)
「内田さんは早く捕まえないと!」にアンサー。「早すぎるんだよ!(笑)」
佑介 実は僕、内田さんがきっかけになって、力を入れ始めたことがあるんですよ。
内田 えっ? なんでしょう(笑)。
佑介 デビューして2年目にハートランカスターという馬で東京の新馬戦(2005年10月16日)に乗りに行って、直線で内田さんと追い比べになったんです。僕は当時19歳ですからね、体力もバリバリにあったはずなんですが、内田さんの気迫に追い負けて…。
──結局、内田さんが騎乗していたクラシックスタイルが勝って、ハートランカスターはクビ差の2着でした。
▲クラシックスタイル(内)とハートランカスター(外)の追い比べ(撮影:下野雄規)
佑介 手応えは僕の馬のほうがよかったので、正直、馬が負けたというより、僕が内田さんに気迫負けしたというレースでした。だからすごく印象に残ったし、「これじゃあダメだな」と思って、そこからさらに体力トレーニングに力を入れるようになったんです。
内田 そのレースは映像を見ないと思い出せないけど、当時は人一倍、数多くのレースに乗っていたからね。体力には自信があった。突き抜けられたら勝てないけど、半馬身差くらいだったら追い負けしないなという自信だけはあったと思います。
「内田騎手騎乗のクラシックスタイルと佑介騎手騎乗のハートランカスターの壮絶な追い比べ!」レース映像を見る佑介 それは一緒に乗っていてすごく感じました。逆に僕は、途中で前に出られたときに「あ、ダメだ」と思っちゃったんですよ。それくらい、内田さんの気迫がすごかった。あんまりないんですけどね、そういうことって。
内田 追い比べになったときは、「負けるわけがないだろ」と念じながら追っているから。その思いと、人一倍、馬に乗ってきたという自負が自分のなかに沁み込んでいる。だから、今でも若い子に言われますよ、「内田さんは早く捕まえないと!」って。
佑介 まだまだ体力もあるし(笑)。
内田 冗談で「早すぎるんだよ!」とか言ったりしているけどね(笑)。
──今でも体力には自信がありますか?
内田 追い比べになったら負ける気はしないです。
「年下も年上も関係ない」内田博幸騎手の“いい人伝説”
──今年の7月で53歳。鉄人ですね。そういえば、武豊さんが50代のジョッキーをまとめて「5爺」って言ってましたけど…(熊沢重文騎手、小牧太騎手、柴田善臣騎手、武豊騎手、横山典弘騎手)。