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【#7】「落馬で大怪我を負うことは不運。しかし不幸ではない」福永祐一元騎手の家族から学んだ思考

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  • 2023年06月04日(日) 18時01分
shirahama

▲マネージャー兼バレットとして長年コンビを組んできた福永元騎手と由紀子さん(提供:白浜由紀子)


障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。

滋賀の自宅に帰った由紀子さんへ、主治医から夫の容体に関する電話がありました。ついに「命の危機は完全に脱した」という診断を受け、今後の「仕事のこと」「家族のこと」について考えます。

そこには、落馬事故で大きく人生が変わった「福永祐一騎手の家族」を、マネージャー兼バレットとして長年間近で見てきた由紀子さんだからこそのポジティブな思考がありました。

家族の落馬事故があっても、幸せな人生を歩むことができる


 8月29日、月曜日。落馬から2日目。主治医から電話がありました。

・認識はしていないと思うが、目を少し開けた。
・夜中に10秒ほど脈が遅くなることがあり、非常に怖かった。だが、すぐに安定したので一過性のものだと思われる。
・右肺に肺炎をおこしている。口腔内出血をしていたので誤飲したことが原因だと考えられる。抗生剤を投与して治療する。
・若いので、肺炎自体は大きな問題には発展しないと思われる。
・左上腕に麻痺が出ている。
・左脚にも違和感あり。しかしこちらは、多分だが…問題ないと思われる。

 先生の話を聞いていると、「先生はいつ寝ているのだろう?」と疑問に思うほど、長い時間、夫の治療に時間を割いてくださっていました。勤務医は激務だと聞いてはいましたが、想像を超える勤務体系に驚きです。

 あとから聞いた話ですが、落馬後に運ばれた競馬場内の救護所にいらっしゃった医師は脳の権威といわれている有名な医師で、夫の姿を一目見て早急に救急搬送するように指示を出してくださったとのこと。搬送先が見つからない間も懸命に対処してくださっていたそうです。

 そして、救急搬送され、一番初めに診察にあたってくださった救命医の先生は、なんと馬券を嗜まれる先生! 夫のことも知ってくださっていたそうで、どうにか助けようと初期治療をしてくださり、脳外科医に引き継いだ後も、ずっと様子を気にしてくださっていたと聞きました。

 運ばれた九州労災病院は脳に強い病院だそうで、あの日はたまたまベッドに空きがあり、のちに主治医になってくださる脳神経外科の医師が当直だったという偶然も。こうしていい先生方に診ていただくことができたのは、不幸中の幸いだったと思います。

 8月31日、水曜日。落馬から4日目。この日も主治医から連絡をいただきました。

・目は瞑ったままだが、大きな声で「手を握って、手を開いて」と指示を出すと応えようとしてくれる。
・「お名前を教えてください」の指示には口を動かし言葉を発しようとしていた。
・左上腕に麻痺が出ていてほとんど動かない。リハビリ次第ではあるが、回復しない可能性もある。馬に乗ることは厳しいかもしれない。
・命の危機は完全に脱したと思ってもらって構わない。

 との内容でした。命の危機を完全に脱したということで、まずはここで一区切りがつき、今度は自分の仕事について考え始めました。

 私の仕事は、(福永)祐一さんのバレット。このまま続けるのか、あるいはしばらくお休みをするのか──。

 まず考えたのは、子供たちへの影響です。パパは大怪我をしてしまい、長期入院でしばらく不在。そしてママも毎週末、早朝から空が暗くなるまで帰らない…。この状況は、精神状態に影響するのでは? と考えた結果、子供たちが今の状況に慣れるまではお仕事をお休みすることに決め、祐一さんにお願いの電話を入れました。

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1981年9月9日生まれ。2015年に障害騎手の白浜雄造と結婚。1男1女をもうける。結婚前は四位洋文調教師や福永祐一調教師(両名、当時騎手)らが所属していたマネージメント会社にてマネージャーを務め、TV番組収録やイベント等、様々な現場で騎手をサポート。福永調教師の引退までの16年間はバレット業務も兼任。福永厩舎開業後は経理兼秘書業務を担当予定。現在はオンラインサロン「福永祐一 競走馬研究所」の運営スタッフを務める傍らフリーランスとして活動中。新たな目標のアイシングクッキー講師としても活動すべく準備中。(旧姓は坪田、また戸籍上の表記は幸子)

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