▲2018年フェブラリーSをノンコノユメで制し、表彰台に立つ内田騎手(撮影:下野雄規)
第2回の対談では「追い比べになったら負ける気がしない」とおっしゃっていた内田騎手ですが、50歳を超えても身体を動かせるその体力はどのように維持しているのでしょうか。もともと体操選手を目指していたという内田騎手ならではのトレーニング法に迫ります。
そして内田騎手といえば、バク宙が有名。佑介騎手からの「また見たいです」というリクエストに、今回のNHKマイルCでは行わなかった理由や2018年フェブラリーS(ノンコノユメ)勝利時に披露した際、尻餅をついてしまった裏側についても明かしてくれました。
(取材・構成=不破由妃子)
20代前半の頃、トレーニングをやりすぎて折り合いがつかなくなった
──「追い比べになったら負ける気がしない」とおっしゃっていましたが、その源となる体力はどうやって維持されているんですか?
内田 今は、土日に一番動ける身体を作ることを最優先しています。平日にトレーニングをやり過ぎると、その疲れが土日まで尾を引いて酸素が入ってこない。
身体に酸素が入ってこないと、体力がすぐになくなってしまうから。だから、いかに酸素が身体に入ってくる状態を作るか。それを意識してトレーニングしてますね。
佑介 ちょっと意外です。内田さんは、週末に疲れを残さないように…というタイプではないと思っていました。平日もめちゃめちゃハードにトレーニングしているタイプかと(笑)。
▲内田騎手はこれまでにゴールドシップなど数多くの難しい馬を御してきた(撮影:下野雄規)
内田 いやいや(苦笑)。確かに、若い頃はガンガンやってた。でもね、それがよくなかったみたいで、どんな馬に乗っても折り合いが付きづらくなっちゃった。どうしてもやり過ぎてしまって。
──トレーニングをやり過ぎたせいで折り合いが付きづらくなった…というのは、どういった理由ですか?
内田 いわゆるトレーニングって、関節をいじめるというか、手首、肘、肩、腰、膝、足首などをある程度固めてやりますよね。それをやっていたら、レース中、馬のリズムを取るなかで、どうしても硬さがダイレクトに馬に伝わってしまうようになった。
手綱、鐙、背中と、人が触れているところにクッションがない状態だったと思います。だから、前半掛かり気味で、後半バテる…ということが多くなってしまった。
佑介 それは何歳くらいの頃ですか?
内田 20代前半の頃ですね。だから、そういうトレーニングをやめて、いろいろとやり方を変えてみたら、成績がよくなってきた。
──佑介さんも、そのあたりは気にされていますか?
佑介 僕はもともと体が柔らかいほうではないし、強くもないので、若い頃からずっと疲労を残さないようにというのが主眼でしたね。平日の5日間で競馬の疲労を抜くのが大変だった。
内田 人それぞれのやり方があるし、体質も違うもんね。あ、でもそうか…。僕の場合、週末に疲労を残さないようにとか考えていること自体、年を取ったっていうことかも(笑)。
トレーニングのやり方を変えたりはしたけど、昔はそんなこと考えなかった。うん、そうだ、もっと気楽だったもん(笑)。今は本当に、いかに週末に疲労を残さないかがテーマだからね。
佑介 具体的にはどんなトレーニングをされているんですか?
内田 ダンベルではなく、おもにゴムを使っています。肩と肘を動かさずに、しっかりゆっくりダンベルを上げる…という動きを何回も繰り返すと、どうしても関節を固めてしまうというか、負荷を掛けてしまうから。
そういうトレーニングが合う人もいると思うけど、さっきも言ったように、僕には合わなかったので。だから、今はゴム。ギューッと力を入れて、最後にフッと抜ける、みたいな動きが中心です。
佑介 トレーナーさんを付けているんですか?
内田 いや、僕は自分でやってる。昔からずっと独自でやってます。
──内田さんは昔、体操選手を目指していたんですものね。もともと身体に関する基本的な知識がある。
内田 そうですね。ある程度、身体の仕組みを知っていますから、自分で組み立てられる。だから、ジムに行って、自分で考えながらやってます。
内田博幸名物の“バク宙”「前の週に控室で練習してたんだけど…」
佑介 そうだ、内田さんは体操をされていたんだ。だからこその、あのバク宙。内田さんには、50代になってもバク宙をしてもらわないと