2018年の牝馬三冠など、史上最多の芝GI9勝を挙げたアーモンドアイが、先日、顕彰馬に選定された。投票したのは報道関係者207人。そのうち200票を獲得し、全体の4分の3以上という基準を満たした。選定対象となった去年は8票及ばず選ばれなかったのだが、そもそも、なぜ去年選ばれなかったのか、今年に入ってアーモンドアイの何が変わってこういう結果になったのか、不思議である。
それ以上に驚かされたのは、今年から選定対象となった史上3頭目の「無敗の三冠馬」コントレイルが選ばれなかったことだ。156票入れば通っていたのだが、僅かに1票足りない155票だった。ひとりの記者が4頭まで投票できるというのに、どうしてこういう結果になるのだろう。「無敗の三冠獲得」にはたいして価値がない、とみなしたのか。
JRAのサイトに、選考委員となった記者の名前と所属が載っている。年度代表馬をはじめとするJRA賞のように、誰がどの馬に投票したのかわかるようにしてはどうか。これは個人情報云々ではなく、ファンや関係者の代表として票を投じているのだから、問題ないだろう。
顕彰馬が発表された日の夕刻、日本文藝家協会の定時総会にリモート(ズーム)で参加した。会場には100人以上いたと思うのだが、リモートで参加したのは40人ほどだった。
総会の初めのほうで、去年と今年亡くなった会員が紹介された。そのなかに、井口民樹さんと吉川英明(えいめい)さんがいた。井口さんは30冊以上の著書があるノンフィクション作家で、「優駿」にもたびたび名馬のノンフィクションなどを寄稿していた。生意気に批評をするようだが、文章が綺麗で、言い回しなどにも古臭さがまったくないので、私とそう変わらない年齢かと思っていたら、1934年生まれだった。私の親より上である。編集者から「井口さんは、よく『島田さんの文章が……』と言っているので、お付き合いがあるのですか」と訊かれたことがあったが、一度もお会いしたことはない。私の文章がいいと思われていたのか、ダメだと思われていたのかはわからないが、話を聞いてみたかった。昨年10月7日に逝去。87歳だった。
吉川さんは、『三国志』や『宮本武蔵』などの歴史小説で知られる国民的作家・吉川英治の息子である。NHKを退局したのち青梅の吉川英治記念館の館長となり、そのときに、グリーンチャンネル「日本競馬の夜明け」の「文壇と競馬」というテーマのロケでお話しすることができた。吉川英次(吉川英治の本名)は「文壇の大御所」菊池寛に誘われて競走馬を所有するようになり、1955年の皐月賞を勝ったケゴンなどのオーナーだった。吉川は競馬場に行くと必ず厩舎で馬と触れ合い、愛馬が引退するとき記念に手拭いをつくった話などを英明さんから教えてもらった。今年3月1日に亡くなった。84歳だった。
質疑応答では、分厚い『文藝年鑑』を電子化する予定はないのかとか、チャットGPTに代表される生成AIから著作権を守るために何か手を講じるのか、といった質問が出た。生成AIはリリースされてから半年しか経っていないので、今後も動向を見極めていくといった回答があった。
物書きにとって生成AIは脅威と言われているが、本当だろうか。実は私は、何度も「競馬法について教えて」とか「netkeiba.comの連載コラム熱視点の原稿を書いて」などとAIに聞いているのだが、無料版のせいか、驚くほど使えない。この程度のものに取って代わられる心配はないと思うのだが、舐めていたら痛い思いをするのだろうか。
日本文藝家協会の総会は1時間ほどで終わった。ズームをオフにしたころから、寒気と喉の痛みを感じるようになった。翌朝体温を測ったら38度だったので、近所のクリニックで検査したところ、コロナの陽性だと言われた。日曜日に東京競馬場に行ったときにもらってきたのだろうか。ちなみに私はワクチンを4回打ち、今回が初めての感染である。「コロナはただの風邪」と言う人もいて、この症状からすると、そうなのかもしれない。
全身がダルくて節々が痛み、うっすらと頭痛があり、今体温を測ったら38度5分に上がっていた。処方してもらった総合感冒薬が効いているのか、咳も鼻水もほとんど出ず、こうして原稿を書くぶんには支障がない。
知り合いの家では、きちんとワクチンを打っている高齢の母親と中年の娘とその夫が陽性になったのに、基礎疾患と言えるほど太った中年の弟は、ワクチンを1度も打っていないのに陰性だったという。反ワクの人間たちが聞いたら大喜びしそうな事例である。
5類になったので、隔離されることはないが、今週は家でおとなしくしていようと思う。