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【#9】「とても感動的だった」騎手仲間からの応援メッセージと、看護師さんの優しい嘘…

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  • 2023年06月18日(日) 18時01分
shirahama

▲由紀子さんご自身もメッセージ動画を自撮りした(撮影:桂伸也)


障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。

落馬から約一週間、ひとつの転機が訪れました。目は瞑ったままですが、事故後、初めて簡単なコミュニケーションが取れたのです。

可愛い子供たち、鬼嫁、そして騎手仲間、それぞれの声に白浜騎手が見せたリアルすぎる反応とは…!?

武英智調教師や高田潤騎手が中心となって広がった輪


 9月2日のお昼過ぎ、今度は主治医から連絡がありました。

・「おはよう」という問いかけに応えてくれた。
・左上腕が少し曲がるようになった。
・リハビリをしっかり受けて回復を促しましょう。
・ご本人のスマホを使い、ビデオ通話でお子さんと話をできるようにします。
・ご本人のスマホで日々の様子を撮影して送ります。お子さんに見せてあげてください。

 主治医や看護師さんが中心となり、父親と突然離れて暮らすことになった子供たちのために病院側ができることを考えてくださったのです。おかげで子供たちは落ち込んだり問題行動を起こすことなどもなく、元気に過ごすことができました。

 さっそくスマホでビデオ通話をしようと看護師さんがスマホを確認したところ、ロックがかかっていました。病院では、個人情報の関係でロックを解除することはできないそうで、そこはJRAの職員さんに一任することに。これに限らず、細々した用事や手続きで何度も何度も病院に足を運んでくださって、JRAの職員さんには本当にたくさん助けていただきました。

 落馬当日、小倉に駆け付けてくれた夫の親友・清誠さんにも協力してもらい、暗証番号を推測。数個に絞り、JRAの職員さんに託しました。「難航するだろうなぁ。最悪、タブレットを買って送ればいいのか…」などといろいろ考えていたのですが、「2個目で解除できましたよ!」とJRAの職員さん。めちゃくちゃ簡単に、あっさりと解除できました(笑)。

 世の浮気を疑われている男性は、こうやって妻が簡単に思いつく暗証番号を設定し、スマホを見られ、浮気が発覚したりしているんでしょうねぇ。読者のみなさま、スマホの暗証番号設定は、くれぐれもよく考えてくださいね(笑)。

 15時頃、さっそく夫のスマホからビデオ電話がかかってきました。子供たちはまだ園にいたので、家には私ひとり。一生懸命話しかけたのですが、一向に反応がありません。

 看護師さんたちはめちゃくちゃ気を遣って、「奥さまですよ!」「ほら! 白浜さん! 奥さま!!」「ねぇ! 白浜さん!!」と、夫にリアクションを取るよう促してくれましたが…。

 やはり夫にとって私の声は騒音なのです。このとき、確信しました(笑)。

「できれば子供たちが帰ってくるころに、もう一度電話がほしい」と看護師さんにお願いすると、夕方に二度目の着信がありました。息子には「パパは大怪我をしている」と伝えてあったので、アニメに出てくるいわゆる“怪我人”のように、全身血だらけ、包帯でグルグル巻きになっているパパを想像していたようで、「怖い!」と言って電話に近づきませんでした。

 いっぽう、娘はすぐにスマホをのぞき込み、パパの様子を確認すると「パパー!! パパー!! ねぇー! パパ!! 寝てるの? 起きて! 早く起きてよー!」と、私にそっくりな押しの強さで話しかけます。

 パパもさすがに愛する娘の声は無視できなかったようで、わずかに右手を上げて反応。その後、息子もスマホをのぞき込み、一生懸命話しかけていました。

 看護師さんに「お子さんたちにもう一度手を上げるところを見せてあげて」と言われ、夫は右手でピースを作ってくれました。少し動くだけでもすごく疲れるのでしょう。その後は何を言っても大きな反応はなく、眠ったような状態に。その日はそこで電話を終えました。

 目はずっと瞑ったままではありましたが、事故後、初めて簡単なコミュニケーションが取れて、とてもうれしかったのを覚えています。回復に向け、大きな一歩を踏み出した瞬間でした。

 週が明けた月曜日、看護師さんから「ご家族やご友人、職場の同僚の皆さまにメッセージをスマホで撮影して送ってもらい、ご本人に聞かせませんか?」とご提案がありました。脳に刺激を与えることがとても大切で、たとえ目は瞑ったままでも、耳からメッセージを聞くことが大きな刺激になるとのことでした。

 そして、英さん(武調教師)と潤さん(高田騎手)が中心となって、騎手の皆さんからメッセージを集めてくださることに。

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1981年9月9日生まれ。2015年に障害騎手の白浜雄造と結婚。1男1女をもうける。結婚前は四位洋文調教師や福永祐一調教師(両名、当時騎手)らが所属していたマネージメント会社にてマネージャーを務め、TV番組収録やイベント等、様々な現場で騎手をサポート。福永調教師の引退までの16年間はバレット業務も兼任。福永厩舎開業後は経理兼秘書業務を担当予定。現在はオンラインサロン「福永祐一 競走馬研究所」の運営スタッフを務める傍らフリーランスとして活動中。新たな目標のアイシングクッキー講師としても活動すべく準備中。(旧姓は坪田、また戸籍上の表記は幸子)

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