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各地のダービー馬

  • 2023年06月21日(水) 18時00分

ダービー馬の顔ぶれから期待が膨らむ今年のジャパンダートダービー


生産地便り

▲北海優駿を制したベルピット


 去る5月28日(日)に行われた日本ダービー。ダミアン・レーン騎手騎乗のタスティエーラが1番人気ソールオリエンスをクビ差抑えて優勝したことは未だ記憶に新しい。スタート直後のドゥラエレーデ(坂井瑠星騎手)の落馬や、2番人気スキルヴィングの急死など話題に事欠かないレースであった。

 その同日、遠く離れた九州・佐賀競馬場でも、地方競馬のダービーシリーズ(全8レース)がスタートした。「九州ダービー・栄城賞」(2000m)が正式名で、このレースを勝ったのは、テクノゴールド。1番人気ネオシエル(単勝1.4倍)を2馬身4分の3抑えての勝利であった。

 九州ダービー・栄城賞は、1着賞金2000万円で、これは前年の1000万円から一気に2倍に増額されたことになる。日本ダービーの1着3億円とはもちろん比較にはならないものの、地方競馬の8つあるダービーの賞金ランクでは、上から二番目で、兵庫ダービー(園田)と並び、東京ダービー(大井)に次ぐ額である。

 テクノゴールドは父モーリス。母コンフェッシオン(母父ダイワメジャー)。3歳牡馬で生産は新ひだか町・静内ファーム。これで通算10戦4勝2着2回。獲得賞金は2572万円となった。

 地方のダービー第二弾は東海ダービー(名古屋)で、5月31日(水)に行われた。1着賞金1000万円。優勝したのはセブンカラーズ。父コパノリッキー、母ウイニフレッド(母父スペシャルウィーク)の牝馬で、これでデビュー以来負けなしの8連勝となった。

 東海地区では完全に抜けた存在で、8戦全てを1番人気で制しており、このレースでも2着馬ツミキヒトツに3馬身差をつけての快勝で、まだ底を見せていない強さがある。生産は日高町・オリオンファーム。2021年サマーセール取引馬で価格は880万円。

 その翌週、6月7日(水)には、一連のダービーシリーズでも随一の高額賞金を誇る第69回東京ダービー(大井)が行われた。距離2000m。ここで断然の1番人気となったのは、東海地区セブンカラーズ同様にデビュー以来無敗(4戦全勝)のミックファイア。

 父シニスターミニスター、母マリアージュ(母父ブライアンズタイム)の牡馬で、前評判通りに2着ヒーローコールに6馬身差をつけ、圧勝であった。これで5戦5勝。獲得賞金も9250万円となり、1億円に王手をかけるところまで到達した。この馬の生産は、新ひだか町・高橋ファーム。そして、本馬もまた2021年サマーセール取引馬で価格は550万円である。

 6月11日(日)には、東北優駿(水沢)が行われた。距離2000m。このレースを制したのは牝馬のミニアチュールで父ラブリーデイ、母ローマンブリッジ(母父ブライアンズタイム)という血統である。1着賞金は1000万円。本馬は門別にてデビューし、5月〜11月の7か月間で12戦を消化して2勝した後、岩手に転厩。そこで覚醒し目下岩手では東北優駿まで6連勝中である。通算成績は18戦8勝2着4回、獲得賞金3028万円。

 続く6月14日(水)には、兵庫ダービーが行われた。1着賞金は前述のように2000万円。距離1870m。12頭が出走。このレースでは6戦5勝2着1回の実績を持つ牝馬スマイルミーシャが単勝1.8倍の1番人気でベラジオソノダラブに3馬身差をつけ優勝した。

 父カレンブラックヒル、母クリスマドンナ(母父シンボリクリスエス)。セブンカラーズ、ミニアチュールに続いて、3頭目の牝馬のダービー制覇となった。生産は浦河・猿橋義昭氏。そして本馬もまた、2021年サマーセールの取引馬で価格は484万円である。

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▲北海優駿パドック風景


 翌15日(木)には第51回北海優駿(門別)が行われた。出走馬9頭はやや少ないものの、前走の北斗盃(三冠の第1弾)を快勝して、世代随一の力量と評価されているベルピットが断然の1.1倍に支持された。1着賞金1000万円。距離2000m。前評判の高さに違わず、ベルピットが2着ニシケンボブに3馬身差で優勝した。通算成績は9戦7勝2着2回。獲得賞金4190万円。

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▲先行争いを繰り広げたベルピットとキングオブザナイル


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▲独走態勢のベルピット


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▲2着に3馬身差で北海優駿を勝利したベルピット


 ホッカイドウ競馬では現在、完全に頭一つ抜けた存在で、三冠に向けての視界良好といったところである。父パイロ、母ベルライン(母父ダイワメジャー)の牡馬で、この馬もまた2021年サマーセールの取引馬(価格は693万円)だ。生産は日高町・厚賀古川牧場。

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▲レース後の引き上げの様子


 18日(日)には第51回高知優駿(1着賞金1600万円、距離1900m)が行われ、ここでも、圧倒的1番人気のユメノホノオが、出遅れをものともせず、直線だけで後続馬を一気に突き放して大差勝ちを収めた。2着ポリゴンウェイヴ(南関重賞2勝の強豪馬)を全く寄せ付けない圧勝であった。これで通算成績は13戦11勝。獲得賞金6396万円。

 父バトルプラン、母テレフォトグラフ(母父ハーツクライ)という血統の牡馬で、生産は日高町・槇本牧場。本馬も2021年セプテンバーセールにて落札された経歴の馬で、価格は275万円である。

 さて、シリーズ計8戦のうち、これで7レースを消化したことになるが、7頭中3頭が牝馬で、5頭が日高の1歳馬市場での取引馬である。しかも、決して高額とは言い難い馬が、それぞれの競馬場で頂点に立つ。また全て、日高管内の生産馬ばかりである。

 改めて、日高で開催されるサマーセールやセプテンバーセールなどに上場される数多くの1歳馬の中にはこうした逸材が確実にいることを再認識させられる。

 なお来る7月12日にはこれら各地のダービー馬が中央遠征馬ともども大井競馬場のジャパンダートダービーにて顔を揃え、そこでダート3歳日本一が争われることになる。現時点で出走予定馬はまだ発表されていないが、上記7つのダービー優勝馬の顔ぶれを見ると、今年はどんなレースになるものか非常に期待が膨らんでくる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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