▲CBC賞に出走予定のエイシンスポッターに騎乗する角田大河騎手(C)netkeIba.com
まだ一度も掲示板に載ったことがなかった3歳の春、芝1200mに距離短縮すると、鋭い末脚で初勝利を挙げたエイシンスポッター。その後もスプリント戦で差し脚を武器に活躍を続け、GIII・オーシャンSでは3着。CBC賞で重賞初制覇を狙います。
大きな転機となった芝1200mでの初勝利からここまで9戦すべてでコンビを組むのは角田大河騎手。エイシンスポッターとのレースで見た景色は大きな経験になり、「いろんなことを教えてくれた」という同馬への感謝を胸に、CBC賞で重賞制覇を目指します。
(取材・構成:大恵陽子)
乗り続けたからこその嬉しさと自信
──角田大河騎手がエイシンスポッターとコンビを組んだのは同馬のデビュー5戦目の未勝利戦からでした。その頃のイメージから教えてください。
角田 返し馬でまず感じたのは、乗りやすさとバランスがしっかりしていたことです。距離短縮の一戦で、「しまいの脚を見てみたい」と聞いていたので、序盤は馬なりで行って直線でどれだけやれるか、というレースをしたところ、すごくキレる脚を使ってくれました。
▲初コンビとなった3歳未勝利戦で初勝利を挙げたエイシンスポッター(C)netkeIba.com
──後方から上がり3ハロン最速で鋭く差してきた脚は見ていても衝撃的でした。
角田 「本当に未勝利馬なのかな?」と思うくらい、いい馬だなと感じました。僕はまだデビューして3カ月ほどで、走る馬がどういう馬かというのが分からない時期でしたけど、このレース後に吉村(圭司)先生に限らず色んな先生から「この馬、走るぞ」と声を掛けられて「やっぱりそうなんだ!」と思いました。それからは「これが走る馬の背中なのかな」と返し馬でしっかり感じるように心がけました。
──その後も勝利を挙げていくわけですが、2勝目は直線で進路がなく内に切り替え、3勝目は大外枠ながら序盤でインコースを取るなど、進路取りに冷静さを感じました。
角田 エイシンスポッターは操縦性が高くて乗りやすい馬なので、信じて乗りました。2勝目は7月の小倉だったんですけど、馬群をあれだけ捌いたことなんてまだなくて、この馬に教えてもらいました。3勝目の時は外々を回りたくなかったことと、みんな2〜3頭目を空けていたので、自然とあの位置になりました。
▲3勝目となった宗像特別は大外枠から馬場の内を突いての勝利(C)netkeIba.com
──その3勝目は小倉最終週でしたから、外に進路を取る馬も多かったですね。馬場はどうでしたか?
角田 普段の調教から道悪は大丈夫だなと感じていたので、内は少し悪かったですけど、力を信じて思い切って行けました。
──後方から差すタイプのエイシンスポッターにとって、直線での進路取りというのはすごく重要なポイントになるかと思います。
角田 どれだけ頑張っても序盤から前に行けるタイプではなくて、馬もそういう風に分かっています。でも、4コーナーからは自分でハミを取って「さあ、行くぞ!」という感じになるんです。僕もそこでグッと気合いが入ります。いつも序盤は最後方に近い位置にいるので、他馬がどの位置にいるかが分かるのはメリットかなと思います。
──その視点は新鮮です。後方にいるからこそ、有力馬たちの位置関係を把握できるんですね。
角田 コーナーを回る時にどういう隊列で人気馬がどこにいるかを確認した上で、進路を探すことができます。エイシンスポッターの「行くぞ」という走りに応えて、僕は道を教えてあげる、という感じで、上手くいかなかった時もありますが、12月のファイナルステークスは上手くいきました。
▲「“行くぞ”という走りに応えて、道を教えてあげる」(C)netkeIba.com
──継続騎乗だからこそ信じられたんでしょうね。
角田 ファイナルSを勝った後、馬主さんから「これからもぜひ乗ってほしい」と言っていただけてすごく嬉しかったですし、自信にもなりました。その2走前は上手く乗れなくて6着、前のレースも勝ったマッドクールも強かったですけど僕も完璧には乗れず2着でしたが、そう言っていただけて「もっと馬を信じて、思い切った競馬ができる」と感じました。
──その信じ切った騎乗が前走の鞍馬Sだったように感じます。直線で「ここしかない」というような場所から抜け出して勝利。
▲不良馬場の中、馬群を捌いて差し切った前走の鞍馬S(C)netkeIba.com
角田 スタートから出していったんですけど、やっぱり後方からになりました。しまいは堅実な脚を使ってくれるので、馬を信じていい意味で割り切れました。直線でスノーテーラーが進路を探していて、そこがポッカリ空くだろうことは予想していたので、「ここだ」と行きました。
当日のトラックバイアス的にも内の方が勝ちやすい傾向だったので、内にこだわってエイシンスポッターの操縦性の高さなら捌ききれると信じていきました。このレースも、また自信につながりました。
「最後にひと踏ん張りできる」直線の坂は好材料
──さて、次走はCBC賞です。2走前のオーシャンSは3着でしたし、重賞でも期待が寄せられます。
角田 オーシャンSはペースが少し速くて、一瞬戸惑っていましたけど、すぐに対応してくれました。中山の直線の坂もこの馬には合っていたと思います。上がってきて吉村先生と「頑張ってこの子に大きなところを獲らせてあげたいです」と話しました。
──思い入れの深さが伝わってきます。角田騎手にとってエイシンスポッターはどんな馬ですか?
▲角田騎手にとってエイシンスポッターとは?(C)netkeIba.com
角田 未勝利戦から本当に色んなことを教えてもらった馬です。エイシンスポッターのおかげで短距離も少し得意になりました。一度後ろからの景色を見ていると、競馬を組み立てたり流れを読むことがしやすくなって、他のレースにも生かせています。個人的にはこの子との初勝利が誕生日の翌日だったり、特別初勝利をさせてもらったり、本当にいい出会いです。
── 一緒に重賞を勝ちたい思いはより強くなりますね。
角田 重賞で強い馬もいますし、馬場も良くて前がもしかしたら止まらないかもしれないですけど、この子とやることは変わらず、ポテンシャルを信じて一生懸命頑張るだけです。
最後にひと踏ん張りできる馬なので、直線に坂がある舞台の方が合っていると思います。ずっと乗せ続けてくださった関係者の皆さんに感謝しています。なんとかこの子で大きなところを勝ちたいです。
(文中敬称略)