牝馬の快走や波乱決着も“ありがち”だった
イクイノックスが支持通りの快勝(c)netkeiba.com
断然人気のイクイノックス(父キタサンブラック)が道中はハラハラさせたが、結果は圧倒的な支持通りの快勝だった。これで【6-2-0-0】。まだ強さをきわめるだろう。
近年の宝塚記念は、しばしば難しい結果があるが、今年は過去の歴史が伝えるパターン通りの決着だった。長い歴史の中、控除率の変遷はあるが、イクイノックスのように単勝オッズ130円以下の人気馬はこれで【7-2-0-0】。崩れたことはない。
宝塚記念が現在とほぼ同じ立ち位置になって過去30年間の断然人気馬は、単勝110円の2006年ディープインパクトで、2着馬は10番人気の伏兵。続く単勝120円は1994年のビワハヤヒデ。その2着馬も8番人気の伏兵。単勝150円の1993年メジロマックイーンの2着も8番人気。2021年、単勝180円のクロノジェネシスの2着馬は7番人気。2000年、単勝190円のテイエムオペラオーの2着馬も6番人気馬だった。
そして今年、単勝130円のイクイノックスの2着は、10番人気の牝馬スルーセブンシーズ。単勝100円台の勝ち馬はめったに出現しないが、2着馬はすべて伏兵ばかり。断然の人気馬が勝ったこのビッグレースは、なぜか順当な組み合わせにならない。
暑くなり、心身ともにタフな牝馬が快走するのがパターンだったが、スルーセブンシーズが2着して、最近10年、牝馬は【4-2-5-17】。馬券圏内率は抜群に高い。
良くありがちなパターンを先刻承知のファンはきわめて鋭かった。馬連も、3連複、3連単も、支持率は関係するが10番人気の伏兵が台頭したわりに、高額配当ではない。この牝馬は凱旋門賞への登録がある。
レース全体の流れは「前半58秒9-(12秒4)-後半59秒9」=2分11秒2。良馬場の内回りを意識した馬が多く、差し=追い込み策をとった馬が上位を独占する形になった。スパートのタイミングは微妙に異なるが、上位を占めた4頭の2コーナー(向正面入り口)の通過順は「16、17、13、14」番手であり、完全な追い込み競馬だった。
この支持率で途中まで後方15番手を追走していたイクイノックスのC.ルメール騎手は、イクイノックスの秘める能力と4歳になっての充実ぶりに、全幅の信頼があったに違いない。ドバイシーマクラシック2410mでは、スローになることを読んで自身で先手を取ってレースを先導しレコード勝ちした馬である。まだ強くなる。秋のスケジュールは明確にされていないが、雨馬場の危険が大きい凱旋門賞ではないと思える。チャンピオンホースへの道は必ずしもフランスや、イギリスに続く道ではない。予定通りならジャパンカップだろう。
2着スルーセブンシーズ(父ドリームジャーニー)は、3歳時にオークス(9着)、秋華賞(11着)に挑戦した記録はあるものの、前回の中山牝馬Sが初重賞制覇。シャープな身体をゆったり見せるほど落ち着いた気配で、まったく格下感を思わせなかった。イクイノックスをマークして進んだ池添騎手の鋭い勝負感がフルに発揮されたのは確かだが、最後の直線は狭くなる不利もあって勝ち馬とクビ差同タイム。上がり34秒6はイクイノックスを上回って最速。グランプリレースに抜群の良績を誇るステイゴールド系産駒の真価爆発ではすまない、すばらしい上昇力だった。まだ上昇が期待できる。
3着ジャスティンパレス(父ディープインパクト)はスパートのタイミングが非常に難しいタイプ。一気に加速して失速したわけではなく、ゴール寸前まだバテてはいない。もう一度伸びている。若い鮫島克駿騎手の思い切りのいい最高の騎乗だったが、2200mで勝っているものの(神戸新聞杯)、本当はもっと長い距離の方が合うのだろう。
一旦は先頭に立ちかけて4着にとどまったジェラルディーナ(父モーリス)は、勝ちに出たのだから仕方がない。予測されたより前傾ペースになった展開のアヤに近い。阪神内回り2200mは、有馬記念の中山の2500mと同じで、内回りだけに計算できない小さなスパートのタイミングが明暗を分けることが多い。
4番人気で11着に沈んだアスクビクターモア(父ディープインパクト)は、まだ4歳なので変わってくるだろうが、多くの馬が早め早めに動いて出るような流れのレースは現時点では合わないのだろう。
8着ヴェラアズール(父エイシンフラッシュ)は、思われた以上に不器用だった。上がり35秒2は上位馬と差がないが、動きたいところで動けなかった。