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【七夕賞 AI予想】評価が割れる一頭! AIの注目馬はレースの傾向を覆すことができるか

  • 2023年07月03日(月) 18時00分

単勝オッズ8.3倍(3番人気)のエルトンバローズが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

イメージ通りの高額配当決着が目立つハンデキャップ重賞


AIマスターM(以下、M) 先週はラジオNIKKEI賞が行われ、単勝オッズ8.3倍(3番人気)のエルトンバローズが優勝を果たしました。

伊吹 着差以上の完勝と言って良いのではないでしょうか。まずまずのスタートから無理なく先団につけ、道中は3〜4番手のインコースを追走。4コーナーをまわったところで逃げたグラニット(6着)や2番手だったシルトホルン(2着)の直後に取り付き、ゴール前の直線半ばでシルトホルンとの一騎打ちに持ち込んでいます。

 この争いに決勝線手前で決着をつけ、最後の最後に迫ってきたレーベンスティール(3着)らの追撃も凌ぎ、そのまま押し切っての勝利。陣営はもちろん、鞍上の西村淳也騎手にとっても会心のレースだったはずです。

M エルトンバローズはこれで3連勝。デビュー4戦目までは勝ち切れなかったものの、西村淳也騎手が騎乗するようになってからはまだ一度も敗れていません。

伊吹 オープン入りを果たした前走が8頭立ての少頭数だったこともあって、さすがに期待され過ぎではないかと思っていたのですが、まったくの杞憂でしたね。単純に西村淳也騎手と相性が良いだけでなく、陣営や前任の各ジョッキーによる将来を見据えた教育が、ここへきて実を結んだのでしょう。

 もちろん、このラジオNIKKEI賞はハンデキャップ競走で、今年は実績馬も少なめでしたから、今秋以降の大舞台でどれくらいやれるかは未知数。ただ、少なくとも挑戦権は獲得したわけですし、まだまだ伸びしろはありそうなので、引き続き動向をしっかりチェックしておくべきだと思います。

M ちなみに、今後は1マイル戦のビッグレースを狙っていくようです。

伊吹 個人的には中距離も難なくこなせるタイプではないかと見ているのですが、中京芝2200mのレースで大きく崩れてしまったこともありますし、妥当な選択かもしれませんね。また、ゴール前の直線に急坂があるコースよりは、ないコースの方が向いていそう。京都芝1600m外で施行されるマイルCSも、東京芝1600mで施行される安田記念も、コース適性自体は心配しなくて良いでしょう。

M 今週の日曜福島メインレースは、サマー2000シリーズの開幕戦となる七夕賞。昨年は単勝オッズ16.2倍(6番人気)のエヒトが優勝を果たしました。波乱含みという印象の強いハンデキャップ競走で、伏兵を狙おうと考えている方も少なくないはずですが、単勝人気順別成績にはどんな傾向がありますか?


伊吹 パブリックイメージ通りの、荒れやすいレースと見て良さそうですね。過去10年の3着以内馬30頭中、半数近い13頭は単勝7番人気以下。一方、上位人気に推された馬の好走率はそれほど高くありません。


M 単勝1番人気馬も単勝2〜3番人気馬も、他の一般的な重賞に比べると3着内率が物足りない水準。基本的に過信禁物と言えるのではないでしょうか。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝4〜7番人気の馬は2013年以降[2-6-2-30](3着内率25.0%)、単勝8〜12番人気の馬は2013年以降[1-2-4-43](3着内率14.0%)、単勝13番人気以下の馬は2013年以降[0-0-2-30](3着内率6.3%)となっていました。もちろん人気薄の馬ほど好走確率は低くなりますが、2015年には単勝オッズ213.4倍(16番人気)のマデイラが3着となっていますし、魅力的な伏兵がいたら積極的に狙っていって良いと思います。

M そんな七夕賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、サンレイポケットです。

伊吹 興味深いところを挙げてきましたね。少なくとも、人気はあまりなさそう。

M サンレイポケットは2021年の新潟大賞典などを勝っている馬。同年の天皇賞(秋)とジャパンCでもそれぞれ4着に食い込んでいますから、実績上位の一頭と言って良いでしょう。ただし、3着以内に好走したのは現在のところ2022年の鳴尾記念(3着)が最後。丸一年以上も馬券に絡めていないわけで、懐疑的に見ている方の方が多いかもしれません。

伊吹 2022年のチャレンジCで4着に健闘していますし、その後の3戦はいずれもGI・GIIのレースでしたから、極端に競走能力が衰えているわけではなさそう。Aiエスケープが有力視していることを踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。

M まず気になるのは8歳馬である点。やはり高齢馬は疑ってかかるべきなのでしょうか?

伊吹 残念ながら、おっしゃる通りですね。2019年以降の3着以内馬12頭中10頭は、出走数が21戦以内でした。


M キャリア22戦以上の馬はあまり上位に食い込めていませんね。

伊吹 ちなみに、馬齢が6歳以上の馬も2019年以降[1-0-1-29](3着内率6.5%)。若ければ若いほど良いとまでは言えない印象だったものの、キャリアが豊富過ぎる馬はしっかり評価を下げるべきだと思います。

M サンレイポケットはキャリア32戦。近年の傾向を見る限りだと強調しづらいところです。

伊吹 あとは血統も見逃せないポイント。2020年以降の3着以内馬9頭中、2020年1着のクレッシェンドラヴを除く8頭は、ミスタープロスペクター系種牡馬の産駒でした。


M これはわかりやすい。ここまではっきり明暗が分かれることはそうそうありませんよね。

伊吹 単勝オッズ138.1倍(12番人気)の低評価を覆した2018年3着のパワーポケットも、ミスタープロスペクター系種牡馬のエンパイアメーカー産駒。これだけ健闘が続いているわけですし、今年も同様の決着を警戒しておくべきでしょう。

M ジャングルポケット産駒のサンレイポケットにとっては、こちらも気掛かりな傾向です。

伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬9頭中7頭は“同年の、JRAの、2200m未満のレース”において3着以内となった経験があった馬。年明け以降の勢いも重視するべきファクターのひとつと言えます。


M なるほど。サンレイポケットはこの条件もクリアしていません。

伊吹 なお“同年の、JRAの、2200m未満のレース”において3着以内となった経験がない、かつ前走との間隔が中19週以内の馬は2020年以降[0-0-0-23](3着内率0.0%)でした。休養を挟んでサマー2000シリーズに照準を合わせてきた馬でない限り、年明け以降、かつ2000m以下のレースで馬券に絡んでいない馬は、扱いに注意するべきでしょう。

M サンレイポケットは、Aiエスケープの評価がもっとも高い一方で、レースの傾向からはあまり強調できない一頭ということになります。

伊吹 ただ、一応補足しておくと、今年は本稿で挙げた条件を綺麗にクリアしている馬がほとんどいないんですよね。「Aiエスケープではなく伊吹の見解に乗ろう」と思っても、どこかに目を瞑らなければ連軸が選べません。サンレイポケットも当面は候補から排除せず、オッズなども加味したうえでフラットに判断してみてください。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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