先手を取るには枠順もカギになってくる
「夏は格より調子」を地で行ったようなシーンがよく見られる七夕賞だが、昨年6番人気で勝ったエヒトもそんな1頭だった。前年の12月阪神2000米に勝ってオープン入りし、年明けAJC杯、京都記念と戦って9着、7着のあと5ヶ月の休養に入っていた。復帰戦の七夕賞は格下評価でハンデは54キロだったが、好調教を連発、デキの良さはそっくりレースにあらわれていた。好スタートから6番手につけ、前半5ハロン58秒5の速いペースでも自分からハミを取って気分良く追走し、直線追ってからの鋭い反応につながっていた。小倉での勝利もあり、GIIIの54キロを生かし初重賞制覇につなげていたが、2馬身半の完勝は伸び盛りの5歳馬を象徴していた。
この10年を振り返ると、先行グループからは7頭が勝っていて一番多く、好位差しは2勝で、逃げは1勝だけで少数派、これは少し予想外だ。小回りコースの2000米は、先行するか、ある程度好位置を取った方が、緩みないペースに乗っていける。だが、七夕賞と言えば、「韋駄天伝説」がよみがえってくるのも事実だ。1993年、1000米を57秒4のハイペースで逃げ、4馬身差をつけて勝ったテン乗りの中舘騎手とツインターボ。これを再現したのが9年前のメイショウナルトだった。前年の小倉記念を勝っていて、テン乗りの田辺騎手は影をも踏ませぬ逃げを打ち、1分58秒7のレコード勝ち。「気を抜いてしまうのでノビノビと走らせてあげたかった」と1000米58秒9で逃げ、「よみがえるツインターボ」と書き立てられていた。
逃げで連対を果たした馬と言えば、2年前の5歳牝馬ロザムールがいた。これもテン乗りのM.デムーロ騎手で、外から勝ち馬トーラスジェミニにマークされ、クビ差で2着になっていた。メイショウナルトもロザムールも1枠2番だったことを思うと、先手を取るには枠順も意識しないといけない。
今年は、4連勝中のバトルボーンと3連勝中のテーオーソラネルが出走してくるが、この10年でこのケースは一頭もおらず、条件級から2連勝してオープン入りした2頭だけがいた。7年前の55キロで2番人気のルミナスウォリアーは8着、6年前の55キロ3番人気ヴォージュは9着といずれもカベにぶつかっていたが、どちらも「流れが速くて展開がきつかった」と言っていた。連勝した後、一度でも重賞を経験した方がいいと言うことになるのではないか。
福島でのコース実績、小倉でのキャリア、クラシックを戦った経験はここでは評価できるので、その点を注視すると、まず目に止まるのがフェーングロッテン。今年に入っての重賞3、2、2着は評価できる。これにクラシック経験のあるセイウンハーデスの両4歳馬に、田辺騎手のテン乗りのレッドランメルトを。昨年後半3連勝した後、重賞を3戦していてソロソロという感じがする。
「秋めざす 成長見せた この走り」