例年以上にタフな芝で珍しく牝馬が2頭も馬券に絡む
波乱の七夕賞を勝利したセイウンハーデス(撮影:下野雄規)
波乱を歓迎する七夕賞は、今年もまた難しい結果だった。これで最近12年間、100万、250万馬券を含み3連単10万円以上が8回となった。
波乱になった要因は、例年以上にタフな芝コンディションだったこと。レース全体のバランスは前後半「60秒7-59秒1」=1分59秒8。スローにも近いペースで、平凡な時計なのに伸びきれない馬が多かった。暑さが関係したのか、本質的にタフとされる牝馬が珍しく2頭も馬券に絡んだこと。勝ったセイウンハーデス(父シルバーステート)以外の人気の4歳馬は不振で、よくあるパターン通り、ここに活路を求めた人気薄のベテラン6歳馬が馬券に絡んだことだった。
人気に応えたのは勝ち馬セイウンハーデスだけ。2走前に2000mを1分58秒9で快勝し、前回は自身2分03秒9も要した不良馬場でも崩れていない。充実は本物だった。少しタイムのかかる芝で、揉まれない外枠も有利だったのだろう。このペースなので、苦もなく好位の外の3-4番手。「思った通りの位置が取れた(幸騎手)」。直線、危なげなく抜け出した。上昇カーブに乗って、もうひと回り成長するだろう。
9番人気で2着した5歳牝馬ククナは、近年のこのレースで断然の良績を誇るKingmamboキングマンボ系種牡馬の産駒。母クルミナル(父ディープインパクト)は、早期に引退したが、桜花賞2着、オークス3着馬。本来はアルゼンチン牝系のタフなタイプでもあり、デキの良さをフルに生かす積極策も大正解だった。
3着したのは13番人気の6歳牝馬ホウオウエミーズ(父ロードカナロア)。派手なタイプではなく人気薄だったが、好調子を生かし1分58秒9で3着したマーメイドSと同じハンデ54キロ。少し時計のかかる馬場向きなので、内枠をプラスにすることができた。
1番人気のバトルボーンは、勝ったセイウンハーデスと同じ種牡馬シルバーステート産駒で、4連勝中。上昇の魅力を評価されたが、今回が格上がり初戦。軽い馬場ならスピード能力をフルに生かせただろうが、強敵相手との対戦の少なさと、シルバーステート産駒に見られがちな、軽快ゆえに感じさせる線の細さが、今回の芝コンディションに合わなかった印象がある。前半1000m通過60秒7で行って鈍る馬ではないだろう。
ハンデ頭58.5キロのヒンドゥタイムズ(父ハービンジャー)は、古馬になって以降は馬体重の変動が小さい馬なので、輸送減りだろうがいきなりのマイナス14キロは痛かった。大きく負けているわけではないが、前半の位置取りがいつも以上に悪く、外を回って差を詰めたが勝負強さを生かす形に持ち込めなかった。
8着のエヒト(父ルーラーシップ)は、決してデキは悪くなかったが、最内枠で出足一歩。レースの流れに乗れなかったうえ、終始内でもまれる展開。勝負どころで外に回ることができなかった。
復活に期待した6歳ガロアクリーク(父キンシャサノキセキ)は、輸送直後の滞在競馬だとイラついてしまうとされたが、ゲート入りを嫌がったあたり、その影響大だったか。置かれずに追走できたが、直線はスパートできる余力がなかった。
14着に沈んだフェーングロッテン(父ブラックタイド)は、なぜかパドックでも目立たなかったが、本来の出足がなく、最初から後手後手の展開。内に潜り込んでしぶとさを発揮できる形にならなかった。58キロで自身のリズムを欠いては苦しい。