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【中京記念 AI予想】近走成績は度外視可能!? AIが注目している実績馬の信頼度をチェック

  • 2023年07月17日(月) 18時00分

函館記念は単勝オッズ4.1倍(1番人気)のローシャムパークが優勝(撮影:山中博喜)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

単勝5〜6番人気の成績が非常に良い点をどう見るか


AIマスターM(以下、M) 先週は函館記念が行われ、単勝オッズ4.1倍(1番人気)のローシャムパークが優勝を果たしました。

伊吹 完勝と言って良いのではないかと思います。好スタートを決め、ある程度は積極的に出していきましたが、無理には先行勢を追いかけず、1コーナーまでに中団やや外めのポジションを確保。おそらく鞍上のC.ルメール騎手も、最初からこのあたりでレースを進めようと考えていたのでしょう。その後は3〜4コーナーでポジションを押し上げると、ゴール前の直線で大外から先行勢を難なく差し切り、最後はルビーカサブランカ(2着)に2馬身の差をつけて入線。こんな競馬をされてしまったら、他の馬は手の打ちようがありませんよね。

M ローシャムパークは重賞初制覇。菊花賞トライアルのセントライト記念で3着に健闘した実績があるとはいえ、前走のむらさき賞を勝ってオープン入りしたばかりの新興勢力です。

伊吹 ただ、昨年のセントライト記念は異様にハイレベルなメンバー構成。2着だったアスクビクターモアが次走の菊花賞を、5着だったラーグルフが年明けの中山金杯を、4着だったセイウンハーデスが先週の七夕賞を勝っていますし、1着だったガイアフォースも今年4月の読売マイラーズCで勝ち馬とクビ差の2着に食い込みました。さらに言えば、7着のオニャンコポン、9着のショウナンマグマ、13着のマテンロウスカイも、次走以降のオープン特別で連対を果たしています。今週末の中京記念にエントリーしているベジャールなど、他の出走馬にも引き続き注目しておいた方が良いかもしれません。

M ローシャムパークの今後も楽しみですね。

伊吹 サマー2000シリーズのタイトルを獲りに行くのか、それとも秋の大舞台を見据えて休養に入るのかはわかりませんが、どちらにしても今後は相応の注目を集めることになるでしょう。ポテンシャルの高そうな馬ですし、条件さえ揃えばビッグレースでも十分にやれるはず。動向を注視しつつ、今のうちに過去の戦績をもう一度じっくり分析して、狙うべきタイミングを見定めておこうと思います。

M 今週の日曜中京メインレースは、サマーマイルシリーズの第2戦となる中京記念。昨年は単勝オッズ11.6倍(6番人気)のベレヌスが優勝を果たしました。多彩なメンバー構成になりがちで、難解な印象のあるハンデキャップ競走ですが、やはり波乱の決着をイメージしておいた方が良さそうですか?


伊吹 少なくとも、上位人気馬が信頼できるレースとは言えませんね。過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝1番人気馬の連対率は20.0%どまり。単勝2〜3番人気馬の好走率も物足りない水準にとどまっています。



M 他の重賞と比べて好走率が高いのは単勝4〜6番人気のゾーン。人気の中心となっているような馬も、極端な人気薄も強調できるような成績ではなく、その中間くらいの馬が狙い目――といったところでしょうか。

伊吹 より細かく見ていくと、飛び抜けて優秀な成績を収めていたのは単勝5〜6番人気馬だけ。単勝2〜4番人気の馬は2013年以降[1-1-4-24](3着内率20.0%)、単勝5〜6番人気の馬は2013年以降[4-5-2-9](3着内率55.0%)、単勝7〜13番人気の馬は2013年以降[2-4-1-62](3着内率10.1%)、単勝14番人気以下の馬は2013年以降[1-0-0-28](3着内率3.4%)となっていました。ピンポイントで単勝5〜6番人気馬を狙う必要はないと思いますが、上位人気馬が総崩れになるような事態も想定し、妙味あるオッズの伏兵を連軸に据えるべきなのかもしれません。

M そんな中京記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ダノンスコーピオンです。

伊吹 なるほど、そうきますか。断然の実績上位ではあるものの、近走成績を考えると、それなりに妙味あるオッズがつきそう。

M ダノンスコーピオンは3歳時にNHKマイルCを制しているGIウイナー。ただし、2022年のマイルCSで11着に敗れてしまった後は、9頭立ての香港マイルで6着、年明け初戦の京王杯SCで11着、前走の安田記念も13着と、まったく上位に食い込めていません。戦ってきた相手が違うとはいえ、さすがにここまで大敗続きだと、懐疑的な目で見ている方も多いのではないでしょう。

伊吹 綺麗に評価が割れそうですよね。ただ、Aiエスケープが有力と見ているわけですから、少なくとも無理に嫌う必要はないはず。私はレースの傾向から、この馬の好走確率を独自に見積もってみたいと思います。

M ダノンスコーピオンは4歳馬。単純に考えると、高齢馬よりは高く評価して良いと思うのですが、そういう認識で宜しいでしょうか。

伊吹 その点は心配無用。2016年以降の過去7年に限ると、6歳以上の馬は期待を裏切りがちでした。



M 他によほど魅力的な強調材料がある馬ならともかく、そうでない高齢馬は軽視してしまって良いかもしれませんね。

伊吹 ちなみに、馬齢が7歳以上の馬は2016年以降[0-0-0-22](3着内率0.0%)、馬齢が6歳の馬は2016年以降[1-1-0-21](3着内率8.7%)です。厳密に言うと3〜4歳馬より5歳馬の活躍が目立っていたものの、3歳勢や4歳勢の評価を下げる必要はないと思います。

M 大敗が続いてしまっている点はどうでしょう?

伊吹 近走成績が良いに越したことはないレースで、2016年以降の3着以内馬21頭中15頭は“同年3月以降の、JRAのレース”において2着以内となった経験があった馬。ただし、この経験がなかった馬のうち、キャリア15戦以内だった馬の好走率はそれほど悪くありません。



M キャリアが浅い馬なら、近走成績はあまり気にしなくて良さそうですね。

伊吹 適度な休養期間を挟みながら使われてきたこともあり、ダノンスコーピオンはまだキャリア11戦。そもそも3歳時のNHKマイルC(1着)以降はGI・GIIのレースしか使っていない馬ですから、そういった観点からもしばらく馬券に絡めていない点は度外視できます。

M そうなると、やはりある程度は素直に信頼して良いのでしょうか。

伊吹 いや、不安要素がないわけではありません。2016年以降の3着以内馬21頭中16頭は、前走の馬体重が480kg以上。一方、前走の馬体重が480kg未満、かつ前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.2秒以上だった馬は苦戦していました。



M 馬格のない馬は過信禁物、と。

伊吹 中京芝1600mで施行された2016〜2019年はこの傾向がより顕著でしたし、今年も該当馬は扱いに注意するべきだと思います。

M ダノンスコーピオンは前走の馬体重が466kg、前走の1位入線馬とのタイム差が1.0秒です。

伊吹 ある程度の人気を集めそうなうえ、今回挙げた条件を綺麗にクリアしているライバルが存在している以上、私としては低く評価せざるを得ません。もっとも、馬格だけを理由に切って良さそうな馬ではないのも事実。Aiエスケープも中心視しているわけですから、来られても困らないくらいには押さえるべきでしょうね。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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