▲転院日の新幹線で、経験を記録に残そうという気持ちが…(撮影:桂伸也)
障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。
リハビリ専門病院へ転院が近づいたタイミングで「子供の顔は見たくない」と言うようになったという白浜騎手。ですが、それを聞いた由紀子さんは悲しむどころか、回復している証拠だと感じたといいます。
そういった今回の事故を通じた様々な経験をするなかで、由紀子さんに「記録として残したい」という気持ちが湧いてきます。
夫のふさぎ込む姿に回復を感じた
九州労災病院のソーシャルワーカーさんから、小倉リハビリテーション病院への転院は28日になりそうだとお電話がありました。
付き添いは成人1名のみとのことだったのですが、今回の事故で一番心を痛めているであろう義母を立ち会わせてあげたいと思い、病院に交渉。難色を示されましたが、各病院が事情を考慮して尽力してくださった結果、2名での立ち合いの許可が下りました。
欲張りな私はこれだけでは満足できず、窓越しでもいいから、何とか子供たちと会せることができないかを考え始めました。遠目からでも子供たちの声を聞かせたり、窓越しでも子供たちの姿を見せたり…。それが叶えば、夫の回復は進むのではないかと思ったのです。そんな目論見を胸に秘め、転院の際は私の母と子供たちも同行しようと密かに計画を立てていました。
夕方、作業療法士の方から「リハビリの効果を上げるために、お子様の声援がほしい。テレビ電話をしたい」と提案があり、子供たちにも事情を説明して電話を待ちました。が、約束の時間になっても電話が掛かってくることはなく…。
約束の時間から数十分後、担当の作業療法士の方から電話がありました。「お子様との通話を提案したのですが、明確に拒否をされました。『子供の顔は見たくない』と言ってらっしゃいます。『奥様が心配されますよ』と伝えたら顔色が変わり、『任せます』と言われましたが、今日はご本人の意思を尊重しました」とのこと。