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競馬とは縁のない生活から…(3)「彼女は本当に孝行娘」スターリーソングが見せてくれる新しい世界

  • 2023年08月01日(火) 18時00分
第二のストーリー

姫路競馬場にて、スターリーソング初勝利時(提供:今井多満美さん)


愛馬、保護猫たちの命の輝きがパワーに


 JRAでは勝ち星には手が届かなかったスターリーソングだが、今井さんがオーナーになり地方競馬に転籍後は、15戦4勝、2着3回、3着4回、4着2回、5着1回、着外1回(6着)と、1戦をのぞいてすべて掲示板を外さない堅実な走りを見せている。

「中央ではスピードについていけませんでしたが、園田や姫路の力のいる馬場に適性があったのだろうと主人とは話をしています」

 掲示板を外したのは直近のレースだったが、競りこまれてハイペースでの逃げになってしまったのが敗因だった。

「夏に弱いので現在は休養中」というスターリーソング。涼しい季節になって復帰したら、持ち前の先行力でまだまだ活躍が期待できそうだ。

「スターリーは地方競馬というセカンドステージでキラキラ輝いて走っています。出走するたびに人気の1頭になり、勝つか負けるかと毎回ヤキモキしたり、ハラハラドキドキさせてくれる彼女は本当に孝行娘です。口取りを4回もさせてもらいましたし、放牧後の調整先(外厩)のフォレストヒルや浅井牧場にスターリーに会いに行くこともできました」

第二のストーリー

フォレストヒルにて、スターリーソングと(提供:今井多満美さん)


 スターリーソングで地方競馬の馬主デビューを果たした今井さんは、それまで味わったことのない数多くの新しいことを経験できたことにも感謝していた。

 また今井家では、あくまで馬本位で考えて無理にレースは使わず、必要なら牧場で休養させる。そしてスターリーが走る気力を失くした時には競馬から引退させると決めているという。

「スターリーの真面目な性格が乗馬用の馬のお母さんに合っているのではないか、乗用馬の繁殖の道があると、先日調教師に教えていただきました。スターリーの子が乗馬や競走馬になった姿を正直見たい気がしますが、今の我が家の経済力では夢のまた夢のお話ですし、今のところはもう1頭のメジャーアスリート同様、馬事学院に預けて乗馬というサードステージに、と考えています」

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スターリーソングの口取りにて(提供:今井多満美さん)


 今井さん夫妻は、どうしたらスターリーがレースに勝つことができるかの話題でよく夫と盛り上がっているそうだ。「夫婦の会話はもっぱら馬と猫」と笑う今井さんだが、実は保護猫11匹とも暮らしている。たくさんの保護猫やメジャーアスリート、スターリーソングと向き合ってきて、それらの問題を深く知った今井さんは、長年勤めてきた製薬会社を退職。保護猫、保護犬、引退馬を支援するための会社『かなう』を起こした。

「昔から大好きだった傘を自分でデザインして、作成して販売を始めました」

 東京都や兵庫県の保護猫などの譲渡会で傘を販売して、その売上を協賛する企画もスタートした。

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今井さんがデザインして販売している傘(提供:今井多満美さん)


「扱ってくださる保護団体が増えて、この傘が動物に寄り添う人のエンブレムになってほしいと願っています」

 他にもインターネットラジオのパーソナリティとして、引退馬や保護猫について伝える活動もするなど、充実した日々を送っている。

 電話口から伝わる今井さんの声は明るく、力強かった。馬事学院で生徒たちの先生として愛されているメジャーアスリートや、地方競馬のステージで活躍するスターリーソング、そして保護猫たちの命の輝きが、今井さんに力を与えている。そう思えてならない。

(了、次回は9月の更新を予定しております)



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北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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