“夏は牝馬”の格言通りの好走
関屋記念を制したアヴェラーレ(撮影:下野雄規)
1975年にこの時期に定着して以降、8度目の「牝馬=牝馬」のワン、ツー決着となった真夏のマイル重賞。牝馬が8頭も出走したが、今年を含めて牝馬が史上最多タイの8頭出走したのはこれで3度目。3回ともに牝馬の「1着、2着」独占となった。
また、今年のレースの中身は前後半「46秒5-45秒6」=1分32秒1。高速決着ながら、向こう正面も、最後の直線も長く続くため、前半の800mの方が落ち着いたペースになる形が最近10回のうち7回を占めたことになった。
一般にペース判断に用いられることの多い前半1000m通過は、最近10年平均「58秒21」なので、高速決着なのにあまりハイペースになることはない。今年も「中位差し=先行抜け出し」の1着、2着。追い込み一手型には苦しい流れになった。
初重賞制覇となったのは、5歳牝馬アヴェラーレ(父ドゥラメンテ)。課題のスタートを決めると、一旦中位近くまで下げて流れに乗り、上がり3ハロンは最速タイの32秒8。
先に抜け出していたディヴィーナ(父モーリス)を差し切った。戸崎圭太騎手は3度目の関屋記念制覇。直線の長いこのコースが騎乗スタイルに合うように思える。賞金加算に成功したので、ひと息入れ、秋にはマイル戦を中心に使いたいレースを選べる。
2着に惜敗したディヴィーナは好位で巧みに流れに乗って抜け出したが、「先頭に立ったら物見をしてしまった(M.デムーロ騎手)」。強敵相手に4着に快走したヴィクトリアマイル、2着に押し上げた中京記念時に比べると、小柄な馬だけに今年6戦目になった日程がきびしかったのか、多少とも気配落ちの印象もあった。それでこの内容だから本物になったのは間違いない。こちらも秋にはビッグレースに挑戦する。
好位の外で流れに乗ったラインベック(父ディープインパクト)は、最後まで力強く伸びて、2着馬に並びかける勢いだった。勝ったアヴェラーレには鋭さ負けしたが、5歳時に去勢されたことが落ち着きにつながり、オープンで勝ち負けできるようになった。1600mに1分31秒9の持ち時計があるのでこの距離も大丈夫だが、平均スピードの生きる1800m、2000mならさらにしぶとさが発揮できるだろう。
人気薄の伏兵フィアスプライド、メイショウシンタケ、サクラトゥジュール、さらにタフなミッキーブリランテが追い込む形で「4着-7着」に突っ込んできたが、このペースなのでレース上がりが「33秒8」。追い込み馬向きではなかった。
1番人気の5歳牝馬ララクリスティーヌ(父ミッキーアイル)は、追い切りの動きも良く、落ち着き十分の好気配と映ったが、ゲートで潜り込もうとするなど、レース直前は気負い気味。レースでは不満のない位置を追走できたが、いざ追い出しての反応一歩。休み明けは苦にしないはずだが、ヴィクトリアマイル(14着)で思うような結果が出なかった内面の影響があったのかもしれない。
3番人気で12着のロータスランド(父ポイントオブエントリー)はこれで通算【6-4-1-11】。先行策も、京都牝馬Sのように追い込むレースもできるが、スムーズに勝ち負けできる展開にならないと意外な凡走が多いタイプ。そういう一面が出てしまった。
5番人気のアナザーリリック(父リオンディーズ)は、直前の快調教が評価されて支持を集めたが、デキの良さが裏目に出たか、気負いが前面に出てゲート内で暴れてしまった。外枠発走となり出負けして置かれ、完全にリズムが狂ってしまった。