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【アスクワンタイム×前原玲奈調教助手】全兄ファンタジストと「一緒やん!」快速兄弟のかわいすぎる共通点

  • 2023年08月27日(日) 18時02分
今週のFace

▲小倉2歳Sに出走予定のアスクワンタイムと前原玲奈調教助手(提供:前原玲奈調教助手)


小倉芝1200mで重賞を勝つ血統──そう表現しても過言ではないのがアスクワンタイム。全兄ファンタジストは小倉2歳Sを、全姉ボンボヤージは昨年の北九州記念を16番人気の低評価を覆して勝ちました。

その血統のもう一つの素顔は「マッサージ大好き兄弟」。今回netkeibaでは、鼻を伸ばして気持ちよさそうにするアスクワンタイムの動画を入手しました。オン・オフの切り替えがハッキリしているというアスクワンタイムが小倉2歳Sに向けてどんな日々を過ごしているのか、前原玲奈調教助手に伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

「普通に乗れば勝てる」2戦目での激変


──アスクワンタイムは兄姉のほとんどが梅田智之厩舎という厩舎ゆかりの血統。最初の頃はどんな印象でしたか?

前原 お兄ちゃんのファンタジストと似ています。すごく表現が難しいんですけど、子供っぽいけど、頭がいい印象の血統です。やんちゃでビビリだったり、好奇心が強かったりと子供っぽいところもあるんですけど、人も馬も好きで、乗っていてとても楽しいです。性格的にも体的にもすごく成長をしてくれる子なので、変わっていく過程を楽しめる点もファンタジストと共通しています。

──デビュー戦に向けてはどのような感触を掴んでいましたか?

前原 うちの厩舎では、ゲート試験を受けた後にしばらく行かない期間があると、レース1週間前にしっかりゲートを出して「競馬だよ。ゲートをしっかり出なきゃいけないよ」ということを教えるんですけど、すごく遅くて(苦笑)。ファンタジストも直前のゲート練習が遅くて追試をしたんですけど、ワンタ(アスクワンタイム)も同じでした。

──それでも芝1200mでのデビューを選んだのは?

前原 のんびりしているところがあるので、短い距離でスイッチを入れて、馬に競馬を教えよう、という感じです。ファンタジスト以上にちょっと体が細かったり、まだ中身ができていなかったので、デビュー戦は2着で勝てませんでしたけど、デビュー戦を使った後にグンと良くなりました。

 2戦目の前に調教で乗った時、「これは普通に乗れば勝てると思います」と先生に言ったくらいです。「ただ、早く抜け出しすぎて遊んじゃって、差されることだけが怖いですけど、それさえなければ」と。それくらい、1回使ってグッと良くなった感じがありました。

──そうして2戦目の未勝利戦で初勝利を挙げるわけですが、偶然にもファンタジストの初勝利と同日・同コースでした。

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▲7月15日の中京1Rで2着に5馬身差をつけて勝利(C)netkeiba.com


前原 本当に偶然で、同じ日だったというのは勝った後に気づきました。この血統は中京や小倉で走る印象です。

──ファンタジストは小倉2歳Sを、全姉ボンボヤージは北九州記念と、ともに小倉芝1200mで重賞制覇を果たしています。相性の良さはどの点にあるのでしょうか。

前原 スピードや器用さじゃないかな、と思います。

「もう1回生まれ変わって戻っておいで」兄に似たワンタ


──アスクワンタイムの馬房での様子は?


前原 マッサージしてもらうのがものすごく好きで、さっきも担当の硎屋さんにマッサージされて悶えていました(笑)。鼻を伸ばして「そこ〜」みたいな。他の馬以上にそういう表現をします。

■マッサージをされると…鼻を伸ばして「そこ〜」(提供:前原玲奈調教助手)

──感情豊かですね。ファンタジストもそんな感じだったんですか?

前原 ファンタジストは私が寄っていくと、「ここやって」みたいな感じでお尻を向けてきていました。

──え! 可愛すぎます。

前原 そんな風にされたのは初めてでした。馬は走ることに対してストレスがかかるので、マッサージでちょっとでもリラックスしてくれたらいいな、と思ってやっていて、私自身のリラックスにもなっています。趣味ですね。私が寄っていくと「やって」と鳴く子はいるんですけど、お尻を向けてくる子はファンタジストが初めてでした。ワンタはまだお尻は向けないですけど、ちゃんと鳴きます。

──どの馬もみんな厩舎ですごく大切にされているのが伝わってきます。桜花賞馬レッツゴードンキなど梅田厩舎は一族を多く手掛けることもありますね。

前原 馬主さんとの縁があってのことで、こちらで決められることではないですけど、ゆかりの血統というのは何となく思い入れが強くなります。特に、アスクワンタイムの血統はファンタジストのことがあったので……。

──ファンタジストは2019年京阪杯のレース中に急性心不全で倒れてしまい、関係者の方々の悲しみは計り知れません。

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▲全兄は重賞2勝のファンタジスト(C)netkeiba.com


前原 担当の硎屋さんはファンタジストを相棒のように感じていて、仕事だから割り切らなきゃいけない部分もあるんですけど、割り切れない感情がやっぱりあって……。

 私もファンタジストへの思い入れが強すぎて、亡くなった後、馬に思い入れを持ちすぎるのが怖くなるぐらい辛かったです。マッサージもこれまでのように毎日はできなくて、自分にブレーキをかけていました。でも、時間が経ったのもありますし、入厩してきたワンタはお兄ちゃんの面影がすごくあって、「もう1回(思い入れを持っても)いいんじゃないか」と思えました。亡くなった時に、「もう1回生まれ変わって戻っておいで」と話をしていて、ファンタジストにしてあげられなかったことをワンタにはしてあげたいし、なんだか嬉しいです。

──ファンタジストに会えるものなら、また会いたいですよね。

前原 ずっとそう思っていたので、ワンタが似ている部分を見せると、「一緒やん。兄ちゃんと同じことしとるな〜」と、めちゃくちゃ嬉しくなるんです。この血統を入れてくださった馬主さんにとても感謝していますし、だからこそ結果を出さなきゃ、と思います。

──小倉2歳S、そしてその先もファンタジストに続く活躍をしてほしいです。

前原 乗っている感じは、まだお兄ちゃんほどしっかりしきれていないので、ちょっとゆっくりかなという感じはするんですけど、この状態である程度やれたら今後も楽しみですし、まだまだ伸びしろがたっぷりある子だと思います。お兄ちゃんよりはちょっとゆっくりめに見守ってもらえたらな、と思います。

──兄弟でもそれぞれに成長スピードの差はありますものね。小倉2歳Sへ向けて調教での様子を教えてください。(取材日:8月23日)

前原 明日が1週前追い切りで、今朝はそんなにやっていないんですけど、内ラチ沿いを走らせたらワンタは「今日は軽いところだ」と分かって全然ハミを取りませんでした。

「本当に1つ勝っているの?」というくらいモサーッとしているんですけど、他馬に抜かされるとガツンと行ったりして、オンとオフがしっかりしています。オンがあることは分かっているので、「今日はオフにしようか。明日は真面目に走ろうね」と思っています。ハミを噛んだら、いい走りをします。応援よろしくお願いします。

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▲たてがみの付け根をマッサージ中(提供:前原玲奈調教助手)


(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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