
▲「病気のため乗り替わり」その真相は?(撮影:桂伸也)
先週は小倉競馬場で元気な姿を見せてくれた小牧騎手ですが、先々週の2鞍は「病気のため」に乗り替わりとなり、当週の『太論』も休載。
ファンのみなさんから、「どうしたの?」「何があったの!?」とたくさんの声が届きました。「あのね…」と真相を語り始めた小牧騎手。はたして、鉄人・小牧騎手に何があったのか?
(取材・文=不破由妃子)
調教のあとはなんともなく、5キロくらい走って帰ったんやけど…
──先々週は、レース当日にジャッドノワール(小牧太騎手→荻野極騎手)とフチサンメルチャン(小牧太騎手→田口貫太騎手)の乗り替わりが発表されました。「病気のため」との発表だったこともあり、この『太論』にもたくさん心配の声が届きまして。
小牧 あのね、コロナに罹ってしまって。
──そうでしたか。もしかしたら…とは思っていましたが。
小牧 先々週、土曜日は騎乗がなかったんやけど、土曜朝のフチサンメルチャンの調教に乗るために、金曜日から小倉駅前のホテルに泊まっててん。調教の段階ではなんともなかったんやけどね。調教のあと、競馬場からホテルまで、5キロくらい走って帰ったくらいやから(笑)。ただ、走っている間にね、ちょっとゾクゾクっときて。さすがに無理し過ぎたかな、風邪でも引いたんかなと思ってたんやけど。
──10年以上、このコラムをやっていますが、小牧さんが風邪を引くこと自体、とても珍しいこと。
小牧 そうやね。夜も食欲がなくてね。とはいえ何も食べないわけにはいかんから、うどんを頼んだんやけど、ほとんど食べられへんかった。寝る頃になると、もうゾクゾクゾクゾクして。何枚も着込んで、布団と毛布まで被って、クーラーも切って寝てるのに、寒くて寒くてひとっつも汗かかんねん。
──その時点で、これはコロナかもしれない…と思いました?
小牧 いや、まったく(笑)。完全に風邪やと思ってた。翌日は3Rに乗る予定やったんやけど、あまりにもしんどいから、医務室で座薬をもらおうと思って早めに競馬場に行ったんですわ。そうしたら、医務室の先生がなかなかこなくて。待っている間、医務室のスタッフさんが「小牧さん、PCR検査受けてみようか」と。「そうやね。やってみようか」ということで検査をしたら、すぐに陽性が出た。
──鼻のなかに綿棒を入れるやつ?
小牧 そうそう! 痛いやつ。初めてやったけど、痛かったぁ(苦笑)。で、すぐに調教師に伝えてもらって、チョロチョロしとったらアカンから、すぐに帰りました。タクシーの運転手さんがいい人でね。あらかじめ「コロナなんだけど…」と伝えたら、「いいですよー」って。ふたりでしっかりマスクをして、窓を全開にして乗せてもらいましたわ。
──座薬をもらいに行ったなんて、よっぽどしんどかったんですね。
小牧 昔、インフルエンザになったことがあるけど、あんなに酷いのはそれ以来やね。苦しかったわ。で、家で寝ていたら、全身に蕁麻疹がバーッと出て。痒くて痒くて寝られへんもんやから、往生したわ。日曜、月曜とクーラーを切っているのに寒くてね。一度だけ座薬を入れて、とにかくたくさん着込んでずっと横になってた。あとは葛根湯を飲んだな。僕、なんでも葛根湯やねん(笑)。よう効くからね。
──どのくらい寝込んでいたんですか?
小牧 火曜日までやね。水曜日には、熱も蕁麻疹も治まった。ただ、金曜日まで外に出たらアカンから、家のなかでちょっと身体を動かしたくらいで、先週はいきなりレースに乗ったようなもんや。土曜日に53キロが入る予定やったから、お酒も飲まんと、食事もあんまり食べんとね。
──土曜日に入る予定だった53キロは、ひまわり賞のキリシマエアヒメ?
小牧 そうそう。結局、熱発で回避になってしまったんやけど。
──数日で回復されて本当によかったです。
小牧 まさかコロナになるとは思ってなかったね。根拠はないけど、僕は罹らんやろうなと思ってた(笑)。みなさんにご心配をお掛けしました。すでに先週、競馬に乗っていたように、もう大丈夫です。
──今週は、いよいよ未勝利馬にとってラストウィークになりますね。
小牧 未勝利馬は、もう厩舎を出て行ってしまったよ。だから今週使うとしたら、キリシマエアヒメか、あとはフチサンメルチャンやね。メルチャン、着順はともかく(16着)、このあいだの芝1200mはいい走りをしてたね。
──ずっと自分が乗っている馬にほかのジョッキーが乗っているのを見るのは新鮮じゃないですか?
小牧 新鮮やね。それで改めて「芝の走りがいいなぁ」と思ったりして。ただ、いい感じで行かせてしまうと距離が持たん。なんせベストは800mの馬やから。今週の日曜日も芝1200mやけど、芝の走りはいいし、疲れさえ残っていなければ、ひと脚あるんちゃうかなと思ってる。ジックリ乗って、一発狙いにいきますわ。
(文中敬称略)