▲キャロットF秋田代表を直撃(C)netkeiba.com
10月1日(日本時間)に行われる今年の凱旋門賞。日本からは5歳牝馬スルーセブンシーズが出走を予定しています。
当レースにはこれまでに、稀代の名馬と称されるディープインパクトやオルフェーヴルを含む延べ33頭の日本馬が挑戦するも、その高い壁に跳ね返されてきました。そんな中、スルーセブンシーズの現在の主な勝ち鞍は中山牝馬S(GIII)。決して頭抜けた実績の持ち主というわけではありません──。
しかし、本馬を所有するキャロットファームはこれまでに海外G1を8勝。今回の決断の背景にも、確かなノウハウと勝算が見込める裏付けがありました。
キャロットF秋田博章代表に、本馬の血統や馬名に込められた期待、挑戦を決めた経緯などをじっくりとお聞きしました。
(取材・文:松山崇)
当時まだGIIIを勝ったばかりの5歳牝馬──現場から「凱旋門賞の第1回登録だけでも」
──スルーセブンシーズは、宝塚記念でイクイノックスに迫ったとはいえ、重賞タイトルは今春に勝った中山牝馬Sのみ。それだけに、凱旋門賞挑戦が発表になった時は驚きました。
秋田 現場サイドで実際に携わっていた人間は、ずいぶん前から本馬のことを「のちのちは大きいところを狙える馬」と評していたんですよ。それでもさすがに、今年3月の中山牝馬Sを勝った時点で、「凱旋門賞の第1回登録だけでも行いたい」と打診があった時は、正直驚きましたね。
▲3月の中山牝馬Sで重賞初制覇を挙げたスルーセブンシーズ(撮影:下野雄規)
──追加登録になると12万ユーロの登録料がかかってしまうとはいえ、重賞1勝の5歳牝馬であることを思うと、かなり思い切った挑戦のように思えます。
秋田 そう思われるのも理解できます。ですから、「現役屈指のメンバーが揃う宝塚記念で勝ち負けできるか、まずはそれを見てから判断する」という条件付きで、登録だけは済ませておくことになったのです。
──この挑戦に関しては、現場の熱意に突き動かされて、という側面が大きかったですか。
秋田 もちろんですが、最終的にはクラブで「挑戦すること」を決めました。ただ、普段から馬に接して、馬のことを把握している現場サイドの声というのはやはり重要なもので、それが遠征を考えるきっかけになる場合もあります。
▲BCディスタフがG1初勝利となったマルシュロレーヌ(C)netkeiba.com
一例を挙げるとBCディスタフを勝ったマルシュロレーヌ。あの馬のブリーダーズカップ参戦は、矢作さんが様々なファクターを鑑みたうえで提案してくださったわけですが、それが遠征敢行の発端でした。北米ダートだけに厳しいところも多々あるかと感じていたものの、結果はあの大金星ですからね。改めて、何事も挑戦してみないことには始まらないと感じました。
──遠征への“テスト”ともいえる宝塚記念ではイクイノックスにクビ差の2着まで迫りました。このレースをご覧になった印象は?
秋田 “世界の”イクイノックスに迫った走りに、今年に入ってからの充実ぶりがはっきりと見て取れました。「これは挑戦するに十分値する存在だな」と感じました。ただ、帯同馬の問題がありました。