西村淳也騎手の手腕が光った会心の勝利

毎日王冠を制したエルトンバローズ(撮影:下野雄規)
ゴール寸前、横に4頭が並ぶ大接戦を制したのは、挑戦者らしく早めにスパートした3歳馬エルトンバローズ(父ディープブリランテ)だった。
人気の中心ソングライン(父キズナ)と、シュネルマイスター(父キングマン)は最後に「さすがGI馬」の底力を見せたが、ともに4カ月ぶりの秋初戦。必ずしもここが必勝の一戦ではなかった。
そろって前走比プラス10キロ。決して数字が示すような太め残りの体つきではないが、大目標のビッグレース前に余裕を感じさせる、少しばかり立派に映る仕上がりだった。そこに、前後半「47秒9-(11秒6)-45秒8」= 1分45秒3(前半1000m通過59秒5)という予想外に落ち着いた流れが加わっていた。
エルトンバローズは4月の未勝利戦からなんと4連勝。ただ一度だけ凡走した左回りに課題があったが、直線で先頭のウインカーネリアンの外に出しただけで、スタートしてすぐ内ラチ沿いを確保して好位のイン。スローの流れに乗って古馬のGI馬2頭に「ハナ、ハナ」差のGII勝利。西村淳也騎手、会心の騎乗だった。
レースの流れが味方したのは確かだが、まだキャリアの浅い3歳馬。「伸びしろしかない(西村騎手)」。これでコンビを組んで以降4戦4勝。ビッグレースに出走できる位置に立った。
3代母はアンティックヴァリュー(父ノーザンダンサー)。祖母ニュースヴァリューは、名牝ベガの半姉。父はディープインパクトの送った7頭の日本ダービー馬の、初代勝ち馬。これからまだ大きくパワーアップできる可能性に満ちている。
1番人気のソングラインは、春のGI連勝時とほぼ同じように中団よりやや後方。かなり慎重なレース運びだった。直線は前がカベになり、決してスムーズではなかったが坂上からこじ開けるように伸びてハナ差2着。
必勝態勢のGIなら取りこぼしだが、大目標のブリーダーズCマイル(米11月4日)に向けての視点に立つなら、馬群を割って力強く伸びたのだから、十分に収穫ありの結果といえる。
そのソングラインの直後で直線に向いたシュネルマイスターは、もたついたわけでもないが残り2ハロン地点では最後方になってしまった。
こちらもソングラインと同じでゴールの瞬間は取りこぼしにも近い微差の敗戦だが、「すごくいい反応をしてくれた。次走が楽しみです(C.ルメール騎手)」。単勝馬券を購入していたファンには得心のいかない3着だが、あの絶望的な体勢から猛然と勝ち負けに持ち込み、次走の結果を予感させた能力に納得するしかない。
レースの最終1ハロンは11秒4。シュネルマイスターのそれは見た目の推定だが、10秒4前後だろう。
一瞬は勝ったかと思わせた4着アドマイヤハダル(父ロードカナロア)は、ようやく(やっと)皐月賞で3番人気に支持された当時の鋭さを取り戻してきた。位置取りの差もあって最後の詰めを欠いた印象はあるが、上がり33秒1はメンバー中の最速だった。
春の東京新聞杯1600mでは前半1000m通過57秒1のスピード能力全開で押し切ったウインカーネリアン(父スクリーンヒーロー)は、1ハロン延長の1800mとはいえ先導して前半59秒5はスロー。人気馬2頭と同じ安田記念以来の同馬も本調子にはもう一歩の気配だった。
これで新馬戦は別に、2カ月半以上間隔が空いたレースは【1-0-0-5】。使って2戦目は【3-1-0-2】。ウインカーネリアンの狙いは次走か。
上がり2位の33秒2だったジャスティンカフェ(父エピファネイア)は、0秒5差の7着止まり。勢いよく伸びかかったところで鈍ってしまった。確かに出遅れのロスはあったが、直線だけの勝負に集約された今回のレースでは、力負け。昨年1分44秒2で惜敗したレース「46秒2-(11秒7)-46秒2」のような流れが望みだった。