エキサイティングな競馬開催を提供することを目標に
英国における競馬統轄団体のブリティッシュ・ホースレーシング・オーソリティー(BHA)は10日、2024年の開催日程を発表したが、近年ではもっとも多くの改革が施されており、内外から大きな反響を呼んでいる。
まず、年間の開催日数は、2023年の1488開催から、2024年は1468開催へと、20開催減少することになった。少頭数のレースが多いと馬券が売れないことから、レース数の減少を図ることになったものだ。
イギリスの開催日数は、例えば1986年には年間989日と、千の大台を切っていた。急速な増大の背景にあったのは、オールウェザー開催の普及だったが、近年は「開催が多すぎる」というのが業界内の一般的な見解で、ここ5〜6年は開催数を抑える方向に舵を切っている。それでも、2024年の開催数は、1986年に比べれば48%増しで、ファンが競馬を楽しめる機会はふんだんに設けられている。
そして、より多くの競馬ファンを獲得するために、より水準が高く、よりエキサイティングな競馬開催を提供することを最大の目標とした今回の改革の、目玉政策の1つが、「プレミア・レースデー」の設定だ。
単刀直入に言えば、ここに高額賞金のレースを集め、観客動員と馬券売り上げの増進を図るだけでなく、英国こそ馬を持つべき国であると馬主層にアピールすることを企図している。BHAはここに、380万ポンドの予算を貼り付ける予定だ。「プレミア・レースデー」の開催は、ニューマーケット競馬場に16日、アスコット競馬場に15日、チェルトナム競馬場に13日、ヨーク競馬場に12日、ヘイドック競馬場とニューベリー競馬場に11日づつ、サンダウン競馬場とグッドウッド競馬場に10日ずつなど、主要競馬場に割り振られることが決まっている。
また、「プレミア・レースデー」の半数以上にあたる89開催が、土曜日に集められることになった。
そして、プレミア・レースデーにおいては、午後2時から4時までの時間帯に関して、同時開催を3場までに限定することになった。メディアの注目をプレミア・レースデーに集中投下してもらい、プレミア・レースデーにおける馬券売り上げの増進を図ることが、その目的であるとしている。
同時開催の数が限定される土曜午後帯から、はみ出ることになった開催は、拡大される土曜の夜開催や日曜開催、さらには、土曜日の「モーニング開催」に振り向けられることになった。
JRAでは、午前10時前後にその日の第1競走が組まれるのが定番だが、イギリスでは、第1競走のスタートは午後の1時過ぎから2時頃に設定されるというのがお決まりだ。「モーニング開催」というのが、果たして何時スタートを予定しているのか、詳細は明らかになっていないが、最終競走は午後2時前後に設定されることになっている。英国の関係者やファンにすれば、かなり斬新なアイディアとなる「モーニング開催」は、1月20日のリングフィールドを皮切りに、年に6回予定されている。
また、日曜日の「夜開催」というのも、1月から3月の間に、6開催が予定されている。こちらは多分に試験的施行の意味合いが大きいようで、まずは行ってみて、集客や売り上げがどのように推移するか、動向を探ろうとする意図があるようだ。
夜開催というのは、厩舎関係者にとってなかなかにタフなもので、例えばロンドン近郊の競馬場で夜開催があった場合、ここに出走した馬と厩舎関係者がニューマーケットの拠点に戻るのは、真夜中になるケースも珍しくない。日曜の夜開催に組まれるレースは、総賞金の最低を14万5千ポンドとし、厩舎スタッフには150ポンドの超過勤務手当が支払われるとの取り決めがなされた。そういう条件で、厩舎従業員協会も、日曜夜開催の試験的施行に、ゴーサインを出している。
土曜日午後という、いわば「ドル箱」の時間帯から外された競馬場からは、当然のことながら不満の声もあがっている。ましてや、プレミア・レースデーは賞金増額が予定されている一方で、それ以外の開催の賞金水準は変わらないのである。そこに、いかにして上質な馬を集め、興味深い番組を提供できるかは、1つのカギとなりそうだ。
また、創設以来リングフィールドパーク競馬場を舞台としてきたG3ウインターダービーが、2024年はサウスウェル競馬場に移設されることになった。サウスウェルで重賞競走が行われるのは、初めてのことだ。
英国の主催者による改革が、どのような結果をもたらすか。注意深く見守っていきたいと思う。