▲天皇賞(秋)に出走予定のジャスティンパレスとガイアフォースを管理する杉山晴紀調教師(撮影:大恵陽子)
世界ランキング1位のイクイノックス、日本ダービーを制したドウデュースの同世代対決に注目が集まる天皇賞(秋)。その黄金世代の一員にはGI馬・ジャスティンパレスもいます。上半期には天皇賞(春)を快勝し、宝塚記念では3着ながらイクイノックスとの差は1馬身強。イクイノックスとの差を3歳時より詰めており、「確実に力をつけてきている」と杉山晴紀調教師も感じています。
さらに、同厩舎のガイアフォースは新馬戦でドウデュースと接戦を演じた馬。この2頭を送り出す杉山調教師にお話を伺いました。
(取材・構成:大恵陽子)
「単純なステイヤーではない」春の天皇賞馬が秋も戴冠へ
──ジャスティンパレスは天皇賞(春)で3200mを勝ち、2200mの宝塚記念ではイクイノックスからクビ+1馬身差の3着でした。春を振り返っていかがですか?
▲今年の天皇賞(春)を制したジャスティンパレス(C)netkeiba.com
杉山 単純なステイヤーではないと感じていて、2200mでも同じパフォーマンスは出せると思っていました。あとは相手関係で、天皇賞(春)と中距離路線ではメンバーが違うので、宝塚記念ではその差だけかなと思っていました。イクイノックスには昨年の有馬記念では1秒1離されて負けましたが、宝塚記念の着差を見ると確実に力をつけてきているな、と感じました。
──ジャスティンパレスはこれまで2回、大きく成長したタイミングがあったそうですね。
杉山 1回目は3歳の夏です。見た目というよりも体幹がしっかりしました。2回目は有馬記念の後で、そこでは目に見えて馬体重が増えました。体の成長があったと感じます。
──今年初戦の阪神大賞典ではプラス16kgと大きく体が増えていましたね。「単純なステイヤーではない」について詳しく教えてください。
杉山 しっかりとこの馬なりの瞬発力も持っていますし、3歳で勝った神戸新聞杯は2200mで楽勝でした。ああいう競馬ができる馬だと思っていて、東京でも天皇賞(秋)の2000mは面白味があるんじゃないかなと思っています。
──10月19日の1週前追い切りには美浦から横山武史騎手が乗りに来ました。
杉山 1週前なので、しまいにしっかりやってほしいと伝えて、あとは乗った雰囲気に任せました。初めて追い切りに乗ったので「ハミに少しモタれますね」と話していましたけど、いつものことなのでレースでは心配ない部分です。
道中はグーッとハミをやや噛み気味に行ったわりには、4コーナーからの反応がすごかったです。「動きはすごく良かったです」と横山騎手も言っていました。時計的にも十分動いていますし、いつも通りここまでこれています。
▲1週前追い切りでは「4コーナーからの反応がすごかった」と杉山師(撮影:大恵陽子)
──天皇賞(秋)に向けて見通しをお願いします。
杉山 東京2000mは合いそうだなと感じています。ただ、最近はジョッキーが上手く出してくれていますけどゲートが課題なので、しっかりスタートを切って流れに乗ってほしいと思います。今回、瞬発力に長けている馬は他にもいっぱいいるのでそこを考えて、あとはいかにロスのない競馬ができるかだと思います。
世界で一番強い馬もいますし、もう一度胸を借りてチャレンジできるのは非常に楽しみが大きいです。
「時計勝負で持ち味が生きる」ガイアフォースはダービー馬と接戦歴
──天皇賞(秋)にはガイアフォースも出走しますが、新馬戦ではのちのダービー馬・ドウデュースと接戦を演じ、僅差の2着でした。
杉山 着差はなかったですけど、かなり強い競馬をしたガイアフォースを外から簡単にねじ伏せられたので、強いなと当時レースを見て思いました。着差はクビでしたけど、それ以上に衝撃を受けたドウデュースの競馬でした。
杉山調教師も衝撃を受けた「ドウデュースvsガイアフォースの新馬戦」映像を見る──春はマイラーズC2着、安田記念4着と1600mでも走りましたが、秋は再び2000mに戻します。
杉山 春にマイラーズCを使ったのは、1600mがベストだと思ったわけでは決してなくて、一度京都を使いたくて試しにマイルで走らせました。
想像以上にいい内容だったので、「これなら安田記念へ」と。東京コースをこなすことができれば、秋に向けて選択肢も増えるので、試してみたかったことも大きな要因です。安田記念もしっかり走ってくれたことで、「これなら天皇賞(秋)は一番合うんじゃないかな」とジョッキーとも話して決めました。
──ガイアフォースの場合は、とにかく良馬場になってほしいですね。
杉山 この馬は分かりやすくて、時計勝負の方が持ち味が生きてきます。2000mだと1分56〜57秒くらいが出る高速馬場の方が持ち味が生きるんじゃないかなと思います。綺麗な走りをする馬で、少しでも渋ると持ち味が削がれます。前走のオールカマー(前日は稍重)は返し馬から走りが違いましたね。
▲ガイアフォースは高速馬場で持ち味が生きる(撮影:大恵陽子)
──さて、最後に杉山厩舎の話題としては、先日、無敗で牝馬三冠に輝いたデアリングタクトの引退が発表されました。少し寂しい思いもありますが、一方で厩舎は現在リーディングを走っています。
杉山 デアリングタクトはあれだけの馬で、今の厩舎を作ってくれたと言っても過言じゃないので、ありがたい気持ちとともに寂しさもあります。あの馬で得たものをちゃんとこれからも生かさないといけないと思っています。
リーディングはまだ暫定ですけど、一生懸命頑張っています。ただ、一番大事なことは勝ち星に捉われずにいい状態で馬を出走させることなので、そこに集中しています。そうすれば、結果もついてくるんじゃないかなと信じています。
▲「今の厩舎を作ってくれた」デアリングタクト(撮影:下野雄規)
(文中敬称略)