▲親友の清誠さんから驚きの報告が(撮影:桂伸也)
障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。
前回に続き、子供たちと一緒に面会に向かった由紀子さん。歩く姿のぎこちなさや記憶が続かないことなど、多少の気になる点はあったものの、子供たちも大きな違和感を抱くことなくパパを受け入れた様子。
そしてその3日後、雄造騎手の親友である清誠さんが面会に行くと「車椅子に乗らず歩いて病室から出てきた」という驚きの報告が…?
無邪気に笑う子供たち──医療従者の皆様と夫の頑張りに感謝
面会2日目。ホテルをチェックアウトした私たちは、すぐに病院へ向かいました。
前日の面会で「泣いても誰も気にしてくれない」ということを悟ったのか(笑)、この日の夫は涙を見せることなく面会がスタート。前日、私たちと会ったことは忘れていなかったので、感情失禁の症状は少しよくなっているようでした。
子供たちから「毎日病院で何をしているの?」と聞かれた夫は、「歩く練習をしてるよ」と答え、手すりを持ちながらではありますが、実際に歩く姿を見せてくれました。
車椅子から立ち上がる際、立ち会ってくださった療法士の先生に助けを求めるような視線を向けましたが、「あ!これ(手すり)があればいけるか」と手すりにつかまり、自らの力で立ち上がった夫。手すりがないと危ないことは理解できているようで、病識がついてきているということなのだろうと思いました。
子供たちは小さなリハビリの先生となってパパを誘導。腰椎と頸椎の損傷、眠り続けたことによる筋力の低下、脳を損傷したことによる麻痺や痺れなどがあり、まだまだぎこちなさはありましたが、私の想像以上にスムーズに歩くことができていました。
■子供たちは小さなリハビリの先生となってパパを誘導(提供:白浜由紀子)
子供たちもそんなパパの様子を見て、どこか安心したような雰囲気でした。前日に続き、パパに会えたことがとてもうれしそうで、落馬前の日常にほんの少しだけ近づいた気がして、楽しい時間を過ごすことができました。
この日の面会時間は15分間だったのですが、10分程経った頃、「療法士の先生がずっと横で立って待ってくれているから、そろそろ終わりにしよう」と言い、面会を終えようとした夫。人に気遣える性格は変わっていないことがわかり、私はうれしくなりました。
最後に「こんな身体じゃ帰れないから…。子供たちをお願いね」と言い、この日の面会はあっさりと終了。今のままの自分では家に帰ることができないくらいの病識はついているようでした。