▲“今までできていたこと”が1人でできる?(撮影:白浜由紀子)
障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。
関西の病院へ転院するため、最初に救急車で運ばれた九州労災病院へ診察に向かうふたり。
「脳の後遺症の影響で、今まで難なくできていたことができないかもしれません」と病院からは報告を受けつつも、「ここで甘やかしてしまうとそれが当たり前になる」と、鬼嫁は雄造騎手に敢えて試練を与えます──。
診察券と予約表を渡し、私は遠くの椅子へ
2022年11月15日、火曜日。
関西の病院に転院するには、落馬当日に救急車で運び込まれた九州労災病院の主治医の許諾が必要とのことで、私は夫の受診に立ち会うため、早朝から新幹線で小倉へ。
転院先が決まらない状況での受診です。夫から転院日について問われたらどう答えるかを考えると憂鬱な気持ちになりました。
ただ、こちらの事情は小倉リハビリテーション病院や九州労災病院の方々には関係のない話です。憂鬱な気持ちを悟られないよう気持ちを立て直し、小倉リハビリテーション病院のロビーで夫が降りてくるのを待ちました。
エレベーターから降りてきた夫は、最後に会った10日前と比べて回復が進んでいるようでした。
■11月2日の歩く様子(撮影:白浜由紀子)
■九州労災病院受診の前日、リハビリ中の様子(撮影:白浜由紀子)
前回は少し足を引きずっているようにも感じましたが、この日は比較的スムーズな足運びができているようで、歩くスピードも速くなっていました。
その後、他院受診のための注意事項などをソーシャルワーカーさんから伺ったのですが、夫はどこか上の空。あまり話を聞いていない様子でした。看護される入院生活に慣れて、他人にいろいろとやってもらうことに慣れてしまっているのかな? と感じました。
小倉リハビリテーション病院を出発してすぐに、夫から「俺が落馬したのは坂口厩舎のマイネルプロンプトやんね?」と質問が。以下、こんなやり取りがありました。