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大井記念、東京ダービー・回顧

  • 2006年06月12日(月) 23時50分
 大井記念(6月6日 大井 サラ4歳上 別定 南関東G2 2600m良)

△(1)エイシンチャンプ 2分47秒3
○(2)ボンネビルレコード クビ
 (3)クールアイバー 4
◎(4)ホクトアサティス 2
▲(5)ウエノマルクン クビ
…………………
△(6)ケージーチカラ
△(9)シャコーオープン
△(11)サンデーバニヤン

単 340円 馬複 710円 馬単 1,370円 3連複 4,360円 3連単 13,970円

 エイシンチャンプが激しい叩き合いを制し南関東初勝利、同時に地方競馬初タイトルを獲得した。長休明けサンデーバニヤンが押して先頭。以下、ホクトアサティス、クールアイバー、ウエノマルクン…長丁場特有のスローで淡々と流れていく。エイシンチャンプは中団のインを終始スムーズ。3〜4コーナー徐々に外めへ進路を変え、直線あと1F、絶妙のタイミングで抜け出した。終わってみれば朝日杯勝ち、皐月賞3着のビッグネーム。本来ダート長距離向きかどうかはさておき、瞬発力、競馬センスがやはりひと味違っている。着差“クビ”以上の完勝だった。

 「58kgが心配だったが力でカバー。GIホースらしい競馬をしてくれました」「(自分が)若いころから目標にしていた堀さん(厩舎)の馬で勝たせてもらってとにかく嬉しい――」(内田博騎手)。このコメントには、プレッシャーを乗りこえた達成感、さらに同騎手の真摯で義理堅い性格がよく出ている。堀千亜樹=内田博幸。直接の兄弟弟子関係はないものの、ラインを通しいつも緊密な関係であったと思う。例えば92年、「東京大賞典」を制したドラールオウカン。当時内田博のお手馬であり、しかし本人は騎乗停止のアクシデント、そして乗り替わった堀千亜樹が栄冠を射止めた。内田博は万感、複雑な想いでそのとき号泣したと聞く。一方、堀調教師の明朗、温厚、愛情深い人柄は、サークル内で誰もが知る。

 とはいえ、エイシンチャンプ。2600m2分47秒3は通年レベル(昨年ケージーチカラ=47秒4)に過ぎず、現実にボンネビルレコードに食い下がられた。次走「帝王賞=6月28日GI」の力勝負は正直ハードルが高いだろう。ほぼベストといえる2000mで、自在性、しぶとさをどう生かすか。むしろ2着ボンネビルレコードはこの日まだ完調と思えず昇り目がイメージできる。気楽な直線勝負、カウンターを狙う戦法で可能性が出てくるか。期待したホクトアサティスは結果的に未完成。2番手から抜け出す作戦は張田騎手の“想定内”だが、いざ先頭に立ってからもうひとつ踏ん張れない。クールアイバー、ウエノマルクンの善戦は能力通り。休み明けの馬では、最後しっかり伸びたケージーチカラを次走注目。

 東京ダービー(6月7日 大井 サラ3歳 定量56kg 南関東G1 2000m良)

 (1)ビービートルネード 2分07秒5
▲(2)トキノシャンハイ クビ
△(3)サンキューウィン 1
◎(4)シャイニールック 1.1/2
 (5)トネノキング 3/4
………………
△(6)キングトルネード
△(8)グッドストーン
 (13)アタゴハヤブサ
○(14)バンクレイド

単 7,190円 馬複 24,570円 馬単 60,990円 3連複 39,450円 3連単 305,620円

 大波乱になった。12番人気・ビービートルネードが、ルーキー町田直希騎手の好リードで優勝。直線あと1F、馬混みを縫うように伸び、ものの見事な逆転だった。同馬は北海道未勝利で川崎転入、しかし以後8戦3勝と着実に力をつけ、重賞初挑戦の今回、一気に頂点へ昇り詰めた。2冠を狙ったサンキューウィンは思惑通りハナを切ったが、羽田盃ほどペースを落とせず(1000m通過62.8秒)、3着が精いっぱい。代わって羽田3着トキノシャンハイが息の長い末脚を繰り出して2着に入った。1番人気シャイニールックは好位のインを進んだものの、いざ追い出されて伸びを欠いた。

 さてこの結果をどうみるか。ポイントは2つ浮かぶ。1つは一連クラシックロードで築かれた力関係が予測以上にモロかったこと。2歳時からの重賞勝ち馬、カネショウマリノス、グッドストーン、アタゴハヤブサ、サワライチバン、ことごとく総決算「ダービー」で圏外に去り、最後に現われたヒーロー・サンキューウィンも、結局頂点へは達せなかった。ビービートルネードはその鮮やかな勝ちっぷりから推してフロックではないだろう。ただし2000m2分07秒5(昨年シーチャリオット=05秒3)。レベルうんぬんとなるとノータイムでは胸が張れない。

 もう1つ、こちらはもう明白明瞭、町田直希騎手の快プレー。道中好位を持ったまま進めたのは馬自身の能力、デキのよさとして、4コーナー、外から勢いよくまくったトキノシャンハイを横目に見つつ、あえて馬混みへ入れ呼吸を置いた。ゴール際のコース取りも完璧でムダがない。すぐ前のシャイニールック、キングトルネードの間隙に滑り込ませ、そこから渾身のムチをふるった。「最高の騎乗。見ていて鳥肌が立つような…」(武井調教師)。エスプリシーズなどを育てた名トレーナーにそこまで言わせる。デビューからわずか1年2か月。スタートを決める、馬を追う、ジョッキーとしての基礎技術はもちろん、天性の“勝負勘”が傑出している。何とも素晴らしい新鋭が現われた。

 ◎シャイニールックの4着。レース後談で恐縮だが、まだ体質に弱い部分(ソエ)が残り、大井コースの“馬場見せ”などを見合わせた経緯もあったらしい。混戦ダービーにおける英雄願望――多分に情緒的な予想だったと反省する。それでも初コース、初ナイターを思えば、素質と地力、さらに競馬センスは十分みせた。7月12日「ジャパンダートダービー=大井2000m」。改めて試金石とイメージしたい。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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