単勝オッズ3.8倍(1番人気)のレモンポップが優勝(c)netkeiba.com
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
昨年のような決着となった年は少ない点に注意
AIマスターM(以下、M) 先週はチャンピオンズCが行われ、単勝オッズ3.8倍(1番人気)のレモンポップが優勝を果たしました。
伊吹 最終的には単勝1番人気の支持を集めたものの、締め切りの5分前くらいまではセラフィックコール(10着)に次ぐ単勝2番人気だったんですよね。連勝式の最終オッズを見ても、3連単1着付けの合成オッズはクラウンプライド(11着)に次ぐ2番人気、3連複1頭軸ながしの合成オッズはクラウンプライドとテーオーケインズ(4着)に次ぐ3番人気。3連単や3連複は単勝よりもはるかに発売金額が多いわけですから、実質的には2〜3番人気くらいの立場だったと言えるでしょう。
中京ダ1800mで施行されるようになった2014年から2022年までのチャンピオンズCは圧倒的に外枠不利で、枠番が8枠の馬は[0-0-0-17](3着内率0.0%)、馬番が14〜16番の馬も[0-0-0-24](3着内率0.0%)。この傾向はさまざまなメディアで紹介されていましたし、大外の8枠15番に入ったのを見て、急遽評価を下げた方が多かったのだと思います。まぁ、私もそのひとりなので、あまり偉そうなことは言えませんが……。
M 終わってみれば2着のウィルソンテソーロに1馬身1/4差をつけての逃げ切り勝ち。今年のフェブラリーS、南部杯に続く3つ目のGIタイトルを獲得しました。
伊吹 陣営はもちろん、鞍上の坂井瑠星騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。スタート直後に少々外へヨレたものの、すぐにダッシュがついたこともあってか、迷うことなくハナへ。無理なく単独先頭のポジションを確保したことで、1コーナー以降はずっと内ラチ沿いを走ることになり、早くも枠順の不利を克服してしまったわけです。道中では2番手のドゥラエレーデ(3着)らにプレッシャーをかけられる展開となりましたが、残り400m地点を過ぎたところで後続を引き離し、ゴール前ではセーフティリードを確保。最後の最後に追い込んできたウィルソンテソーロ(2着)の追撃も難なく凌ぎ切っています。上がり3ハロンタイム(37秒3)はそのウィルソンテソーロ(36秒6)に次ぐ2位タイ。着差以上の完勝だったと言って良いかもしれません。
M この距離を克服したことで、今後がより楽しみになりましたね。
伊吹 馬主であるゴドルフィンのサイトによれば、サウジCへの参戦を検討しているとのこと。1800mがベストかどうかはともかく、控える競馬もできる馬ですし、対応できる可能性は高いと見て良いのではないでしょうか。今春のドバイゴールデンシャヒーンで10着に敗れてしまったとはいえ、遠征自体が苦手というタイプではなさそう。来年もダート路線を盛り上げてくれそうです。
M 今週の日曜阪神メインレースは、2歳牝馬のチャンピオン決定戦と位置付けられている阪神JF。昨年は単勝オッズ2.6倍(1番人気)のリバティアイランドが優勝を果たしました。ちなみに、その2022年は単勝オッズ53.9倍(12番人気)のシンリョクカが2着に、単勝オッズ44.5倍(10番人気)のドゥアイズが3着に食い込み、3連単17万8460円の好配当決着。引き続き伏兵の台頭を警戒しておきたくなるところですが、単勝人気順別成績はどうなっていますか?
伊吹 基本的には堅く収まりがちなレースと見ておいた方が良さそう。過去10年の3着以内馬30頭中、単勝7番人気以下だった馬は5頭だけです。
M 単勝7番人気以下の馬は3着内率も4.2%どまり。思いのほか上位に食い込めていませんね。
伊吹 ちなみに、単勝7〜10番人気の馬は2013年以降[0-2-2-36](3着内率10.0%)、単勝11番人気以下の馬は2013年以降[0-1-0-77](3着内率1.3%)でした。昨年のような決着は珍しいので、今年もまずは上位人気グループの馬に注目するべきでしょう。
M そんな阪神JFでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、カルチャーデイです。
伊吹 面白いところを狙ってきましたね。実績上位ではありますが、人気はあまりなさそう。
M カルチャーデイは前哨戦のファンタジーSを快勝した馬。通算成績は2戦2勝で、まだ大きく崩れたことがありません。ただし、デビュー戦が小倉芝1200m、前走のファンタジーSも京都芝1400m外のレースだったので、コース適性を不安視する向きもあります。積極的に狙おうと考えている方はそれほど多くないでしょう。
伊吹 前走が単勝オッズ70.8倍(15番人気)の低評価を覆しての勝利でしたし、今回も手頃なオッズがつきそうですね。Aiエスケープが狙っているという事実を踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の取捨を検討していこうと思います。
M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?
伊吹 まずは戦績の安定感を素直に評価したいところ。2014年以降の3着以内馬27頭中25頭は、JRAのレースにおいて4着以下となった経験のない馬でした。
M 馬券圏内から外れてしまったことのある馬は、疑ってかかった方が良さそうですね。
伊吹 たとえデビュー戦や強敵相手のレースだったとしても、大敗を喫してしまったことのある馬は強調できません。
M 先程も触れた通り、カルチャーデイはこれまでのところ2戦2勝。高く評価して良いのではないでしょうか。
伊吹 もうひとつ意識しておきたいのは、関東圏のレースを主戦場としてきた馬が強い点。同じく2014年以降の3着以内馬27頭中24頭は、“東京・中山のレース”において“着順が3着以内、かつ4コーナー通過順が2番手以下”となった経験のある馬でした。
M これは少々意外な傾向。ローカル場のレースはともかく、関西圏のレースで活躍してきた馬もあまり信頼できないとは……。
伊吹 近年の2歳牝馬路線、特に阪神JFへのステップとなるようなレースは、関東圏の方がハイレベルなメンバー構成になりがち。今年もこの条件に引っ掛かっている馬は評価を下げるべきだと思います。
M 残念ながら、カルチャーデイの過去2戦は小倉芝1200mと京都芝1400m外のレース。関東圏のレースに出走したことはありません。
伊吹 あとは距離適性や脚質も重視した方が良さそう。同じく2014年以降の3着以内馬27頭中23頭は、“JRAの、1500m超のレース”において“着順が1着、かつ上がり3ハロンタイム順位が2位以内”となった経験がある馬でした。
M 1600m以上のレースを勝ったことがある差し馬に注目したいところですね。
伊吹 なお、この経験がなかった馬のうち、“JRAの、牝馬限定以外の、出走頭数が14頭以上の、重賞のレース”において3着以内となった経験もなかった馬は2014年以降[1-0-0-77](3着内率1.3%)。牡馬相手の重賞で上位に食い込んだことがあるくらいの馬でない限り、距離適性や脚質に不安の残る馬は過信禁物と見るべきでしょう。
M カルチャーデイは、1500m超のレースに出走したことも、出走メンバー中2位以内の上がり3ハロンタイムをマークしたこともない馬。これらの傾向からは強調しづらい一頭ということになります。
伊吹 正直なところ、私はまったくのノーマークでした。ただ、Aiエスケープは十分にチャンスがあると見ているわけですし、配当的な妙味も申し分なし。無理に嫌う必要はないのかもしれません。実際のオッズを確認し、この馬まで手を広げても問題なさそうと判断できたら、もう一度改めて検討するつもりです。