スマートフォン版へ

【AJCC AI予想】不安要素は比較的少ない!? AIの注目馬はどこまで信頼できるか

  • 2024年01月15日(月) 18時00分

日経新春杯はブローザホーンが優勝(C)netkeiba.com


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

1番人気馬の好走率があまり高くない点に注意


AIマスターM(以下、M) 先週は日経新春杯が行われ、単勝オッズ4.1倍(1番人気)のブローザホーンが優勝を果たしました。

伊吹 単勝に関しては前日から1番人気の座をキープしていたものの、3連単1着付けや3連複1頭軸ながしなどの合成オッズを見る限りだと、連勝式における実質的な支持率は2〜3番手どまりだったんですよね。管理する中野栄治調教師が今年2月末に定年を迎えることもあり、勝負馬券とは別に単勝だけ押さえた方が多かったのかもしれません。この時期はどうしてもこういった状況が発生しがちなので、オッズの予測や式別の選択を行う際は注意しましょう。

M ただ、結果的には単勝1番人気馬らしい堂々たる勝ちっぷりだったように思います。

伊吹 まずまずのスタートを決めた後、気合をつけるような素振りも見せながらポジションを探り、結局道中は中団の外めを追走。3〜4コーナーで先行勢との差を詰め、ゴール前の直線に入ったところではハーツコンチェルト(4着)、サヴォーナ(2着)、サトノグランツ(3着)といった他の上位人気馬を射程圏内に捉えていました。この3頭が熾烈な追い比べを繰り広げる中、ブローザホーンは併せに行かずやや外めのコースを進み、最後は完全にかわし切って入線。この競馬を選択した鞍上の菅原明良騎手も、その期待に応えてしっかり伸びたブローザホーンも、お見事というほかありません。

M ブローザホーンは重賞初制覇。デビュー当初はなかなか勝ち切れず、最初の勝利を収めたのは通算9戦目でしたが、その後は9戦5勝ですし、今後が本当に楽しみですね。

伊吹 デビュー1〜3戦目は1600mのレースを、4〜10戦目は2000mのレースを使われていたものの、2000m超えのレースはこれで通算[5-0-0-2](3着内率71.4%)。長距離適性の高いステイヤーと見て良いでしょう。転厩の影響を考慮する必要があるとはいえ、順当に天皇賞(春)やその前哨戦を使ってくるようなら、やはり相応に高く評価したいところ。ただ、人気の盲点になるようなシチュエーションはしばらくなさそうなので、好走確率に見合ったオッズがついているか否かをしっかり見極めるべく、今回や前走以前のパフォーマンスをじっくり復習しておこうと思います。

M 今週の日曜中山メインレースは、大舞台を目指す精鋭が一堂に会する注目の一戦、アメリカジョッキークラブカップ。昨年は単勝オッズ8.6倍(4番人気)のノースブリッジが優勝を果たしました。先週の日経新春杯がハンデキャップ競走だったのに対し、こちらは別定戦。堅く収まりやすそうな条件のレースですが…。


伊吹 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝1番人気馬の3着内率は5割どまり。2023年は単勝オッズ1.8倍(1番人気)のガイアフォースが5着に、2022年は単勝オッズ2.0倍(1番人気)のオーソクレースが6着に敗れていますし、見方によっては波乱含みの一戦と言えるのではないでしょうか。


M ただ、単勝2〜3番人気馬や単勝4〜6番人気馬は悪くない好走率をマークしていますね。

伊吹 よりわかりやすい区切り方をすると、単勝2〜4番人気の馬は2014年以降[6-2-5-17](3着内率43.3%)、単勝5〜7番人気の馬は2014年以降[2-3-4-21](3着内率30.0%)、単勝8〜11番人気の馬は2014年以降[0-2-1-37](3着内率7.5%)、単勝12番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-35](3着内率0.0%)となっていました。

 今年は特別登録を行った馬が13頭しかおらず、極端な高額配当が飛び出す可能性は高くありません。それでも、妙味ある実績馬を的確に見抜くことができれば、それなりの利益は出せるはず。的中した場合の払戻金額をイメージしつつ、買い目を絞り込んでいきましょう。

M そんなAJCCでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ボッケリーニです。

伊吹 ちょっと意外なところを挙げてきましたね。おそらく上位人気グループの一角を占めることになるでしょうし、単勝1番人気となる可能性もありそう。

M ボッケリーニは明け8歳。2020年の中日新聞杯、2022年の目黒記念、2023年の鳴尾記念を勝っている実績馬ですし、2走前の京都大賞典や前走のチャレンジCでも2着に食い込んでいます。加齢の影響を気にする向きはあるかもしれませんが、多くの方は有力馬の一頭と見ているのではないでしょうか。

伊吹 どちらかと言えば穴党であるAiエスケープがこの馬に注目しているということは、積極的に狙うべき伏兵が見当たらなかったということなのかもしれませんね。その判断も踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を推測していきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりですか?

伊吹 重賞ウイナーが強いレースである点は大前提として押さえておきたいところ。2018年以降の3着以内馬18頭中15頭は“JRAの、出走頭数が12頭以上の、重賞のレース”において1着となった経験がある馬でした。


M これはわかりやすい。重賞未勝利馬や、少頭数の重賞しか勝ったことのない馬は強調できませんね。

伊吹 ちなみに、“JRAの、出走頭数が12頭以上の、重賞のレース”において1着となった経験がない、かつ“前年以降の、JRAの、GIのレース”において3着以内となった経験がない馬は2018年以降[0-0-0-32](3着内率0.0%)。重賞勝利に匹敵するくらいの実績がある馬でない限り、まだ重賞を勝ち切ったことのない馬は評価を下げるべきでしょう。

M 先程も触れた通り、ボッケリーニはすでに重賞を3勝している馬。強調材料のひとつと言えそうです。

伊吹 さらに、同じく2018年以降の3着以内馬18頭中14頭は、前走のコースが国内、かつ前走の4コーナー通過順が3〜10番手。極端な競馬をした直後の馬は、期待を裏切りがちでした。


M こちらもはっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 今年は少頭数になりそうなので、例年よりも影響は小さいかもしれませんが、先行力の高さを活かしたいタイプや思い切り脚をためた方が良いタイプは、疑ってかかった方が良いかもしれません。

M ボッケリーニは前走の4コーナー通過順が9番手。それ以前のレースぶりからも、AJCC向きの脚質と言えるのではないでしょうか。

伊吹 あとは年齢も気にしておいた方が良さそう。同じく2018年以降の3着以内馬18頭中16頭は、馬齢が6歳以下でした。


M 高齢馬は過信禁物、と。

伊吹 ただ、馬齢が7歳以上だったにもかかわらず3着以内となったのは、単勝オッズ77.7倍(8番人気)だった2018年3着のマイネルミラノと、単勝オッズ87.9倍(11番人気)だった2022年2着のマイネルファンロン。基本的に過小評価されがちな存在ですし、オッズ次第では目を瞑って良い気もします。

M どちらにしろ、8歳ながらも人気の中心となりそうなボッケリーニは少々悩ましい存在です。

伊吹 おっしゃる通り。もっとも、今年は今回紹介した条件を綺麗にクリアしている馬がほとんどいません。ボッケリーニは不安要素が比較的少ない方ですし、私もある程度は重いシルシを打つつもりでした。Aiエスケープも有力と見ているわけですから、少なくとも無理に嫌う必要はなさそう。あとは、手を出しづらくなるレベルまで人気が集中してしまわないことを祈りましょう。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング