ベテランの好判断が光った鮮やかな勝利

京成杯を制したダノンデサイル(撮影:下野雄規)
あまり速くはなりそうもない展開を読んで、好位の外につけた5番人気のダノンデサイル(父エピファネイア)の鮮やかな重賞初制覇だった。
レース全体のペースは前後半の1000m「60秒7-59秒8(上がり34秒8)」=2分00秒5。京成杯が2000mになった1999年以降、3番目に速いタイムだが、この週も高速に近い芝コンディション。前日の3歳未勝利戦で2分00秒2「61秒7-58秒5」が記録されたほどだから、レースレベルは必ずしも高くなかったという見方は生じた。
ただ、慎重に乗った馬が多く、途中からもピッチは上がらず、後半の3ハロン「11秒9–11秒3-11秒6」の勝負となり、勝ったダノンデサイル、猛然と2着に突っ込んだアーバンシック(父スワーヴリチャード)の最後の1ハロンはそれぞれ「10秒9、10秒7」に達していたと推定される。それで史上3位の2の分00秒5なら十分ともいえる。
まだキャリア2-3戦の馬が上位を争ったレースで、初の遠征で初コースだった馬もいた。今回の走破時計にはあまりこだわらないほうがいいかもしれない。1着、2着の2頭だけが他場とはいえ「1分59秒台」の記録を持つ馬だった。
ダノンデサイルのファミリーは、BCジュヴェナイルF2着の母を筆頭に典型的なアメリカのダート向き一族だが、直線の坂をこなして見事に重賞制覇。道中の脚さばきには弾むようなバネがあり、もっとも軽快なフットワークだった。中山2000m路線の重賞を制したのだから、ランキングはともかく皐月賞の有力候補に台頭した。
鞍上のベテラン横山典弘騎手は、自身の持つ最年長重賞勝利記録を55歳10カ月に更新した。京成杯優勝は4度目。前回2010年に勝ったエイシンフラッシュはのちの日本ダービー馬。2005年に勝ったアドマイヤジャパンは三冠「3、10、2」着。
すごい勢いで2着に突っ込んだアーバンシックは、スタートは互角でもダッシュ一歩。
そこで、少しずつ順位を上げ4コーナーでは10番手前後。内にもたれ気味だったので、前回と違って馬群に突っ込んで伸びたのは大きな進展だった。3コーナーで7番手までにいた馬のうち、6頭が7着以内に入線した先行馬向きの流れを、0秒1差に突っ込んだのはこの馬だけ。上がり最速の33秒9はとくに目立たないが、最後の100mは5秒前後ではないか、と推測したくなるほど強烈だった。皐月賞が今回のように前半スローとは考えにくい。寸詰まりにも映る体型から、中山2000mはむしろ合っているのではないかとも思えた。
先行して小差に粘ったグループはそれぞれ 評価に値するが、3番人気で7着(0秒5差)にとどまったバードウォッチャー(父ブラックタイド)は、今回が2戦目だけに急に評価は下がらないものの、理想の好位のイン追走となっただけに、最後にいっぱいとなったのは案外だった。坂上からはC.ルメール騎手がもう無理に追わなかった。
1番人気で12着(1秒4差)に沈んだジュンゴールド(父エピファネイア)は、隣の同じエピファネイア産駒が快勝したので、ほぼ同じような位置にいただけに失速がきわだってしまった。全体に気負い気味の追走になって、初遠征、初コース、初の2000mが大きく響いたのだろうか。クラシック挑戦を展望したここは絶対に凡走したくないレースだっただけに、どう巻き返してくるのか、この後の動向に注目したい。