▲根岸Sに出走予定のエンペラーワケアを管理する杉山晴紀調教師(C)netkeiba.com
ダートに転向するやいなや、いきなり10馬身差の圧勝を見せたエンペラーワケア。ダート5戦4勝で瞬く間にオープン入りを果たし、唯一の敗戦はハイペースで逃げての2着のみと、大きな可能性を感じさせます。
厩舎内では「怪物くん」と呼ばれる同馬が、いよいよ根岸Sで重賞に初出走。デビュー前から抱いていた期待、そして重賞タイトルへの意気込みを杉山晴紀調教師に伺いました。
(取材・構成:大恵陽子)
唯一の敗戦さえも「能力がないとできない踏ん張り」
──ダートで底知れない走りを見せ続けるエンペラーワケアですが、デビュー前はどんな印象を抱いていましたか?
杉山 いい馬でした。セレクトセール1歳でオーナーに買っていただいた時はまだ少しこじんまりしていましたけど、下河辺牧場で育成を進めるにつれてものすごく成長して、ビックリするぐらい立派になりました。その時に「もしかして走るかも」と感じました。同じオーナーの半兄アレグリッシモも管理していて、兄は新馬戦2着の後に故障で引退したんですけど、仔出しのいい血統なのでデビュー前から非常に期待が高かった馬です。
──エンペラーワケアのデビュー戦が芝だったというのも、そうした期待ゆえでしょうか。
杉山 はい、期待の表れですね。
──しかしながら芝の新馬戦5着の後、すぐにダートに矛先を切り替えました。
杉山 元々、少し脚元が弱いこともあって、すぐに切り替えることができました。
──そのダート初戦が10馬身差での圧勝。休養を挟んで連勝もしましたが、ダート3戦目はハイペースで直線は脚が上がり2着でした。
杉山 前半3ハロンが良馬場のダートで33秒台で、さすがに最後は厳しくなりましたが、並みの馬だったらバッタリ止まりそうなところ、2着に踏ん張りました。能力がないとできないことで、負けてなお強しという内容でした。
──そのレースや、1つ前のレースでは少し出遅れていました。ゲートが少し苦手なのでしょうか?
杉山 ゲートの中で少し力が入りすぎるとこがあります。課題と言えば課題かもしれないですけど、最近はジョッキーが上手く出してくれています。
──レース運びはこれまで逃げるか番手外。それが、前走は先頭集団を見る4番手でした。意識的に控えようという作戦だったんですか?
杉山 レースはジョッキーにお任せしました。騎乗した川田将雅騎手は直近の2戦で別の馬に乗ってエンペラーワケアに勝ったりその2着だったりで目の前でずっとこの馬の走りを見ていました。「エンペラーワケアのことはよく分かっています」と話していたので、お任せしました。
▲ダート転向後、5戦でOP入り(C)netkeiba.com
坂路で50秒を切る猛時計も「このくらいは動くだろう」
──厩舎内では「怪物くん」と呼ばれているとか。
杉山 デビュー前の育成の時から「すごい馬かも」とは聞いていました。ただ、3歳の頃に比べればマシになっているものの、まだちょっと弱い面が色々とあって、あまり詰めてレースに使いたくないという気持ちも残っています。
──周囲の期待感は高まっていますが、杉山調教師としては地に足を着けて進めているんですね。とはいえ、2勝クラスの頃に重賞馬ガイアフォースと調教で互角に走ったり、根岸Sに向けた1週前追い切りは坂路で4F49秒7の猛時計を出しました。
杉山 1週前追い切りは時計を、というよりは、しっかり負荷をかけることに重点を置きました。自己ベストが出ましたが、体重の軽いジョッキーが乗りましたし、馬場も良さそうだったので、「やればこのくらいは動くだろう」という思いで見ていました。
──レースではこれまで砂をしっかり被った経験はありませんが、その辺りはどうでしょうか?
▲先行して押し切る競馬が勝ちパターン(C)netkeiba.com
杉山 いまはだいぶ競馬を覚えて行きっぷりもかなり良くなっています。少々砂を被る分にはそんなに影響はないんじゃないかなと思います。
──根岸Sに向けて意気込みをお願いします。
杉山 元々期待していた馬で、重賞にチャレンジするところまでこられました。今の充実ぶりであれば、重賞に入ってもそんなに差はないと思いますので、何とかエンペラーワケアに重賞タイトルを獲らせてあげることができるように、スタッフ一同頑張っていきます。応援よろしくお願いいたします。
(文中敬称略)