スマートフォン版へ

今年のケンタッキーダービーは勢力分布が定まらぬ大混戦状態が続いている

  • 2024年02月07日(水) 12時00分

ダービー戦線が本格化


 先週の土曜日(2月3日)、アメリカでは、「ロード・トゥ・ケンタッキーダービー」に組み込まれた、ケンタッキーダービーの出走権を巡るポイントが設定された3歳戦が、ニューヨーク州、フロリダ州、アーカンソー州、カリフォルニア州の4か所で開催された。5月4日にチャーチルダウンズ競馬場で行われる本番まで3カ月余りとなり、ダービー戦線がいよいよ本格化してきたわけである。

 結果は、4競走のうち3競走において、1番人気に推された馬が3着以下に敗退。その3競走を制したのはいずれも、オッズが二桁台だった伏兵だった。今年のケンタッキーダービー戦線は依然として、勢力分布が定まらぬ大混戦状態が続いていると言ってよさそうである。

 4競走のうち最も注目が高かったのは、フロリダ州のガルフストリームパーク競馬場で行われたG3ホーリーブルS(d8.5F)だった。昨年の全米2歳牡馬チャンピオン・フィアースネス(牡3、父シティオブライト)が、ここを今季の始動戦に選択したのだ。2歳最終戦となったG1・BCジュべナイル(d8.5F)を、2着馬ムースに6.1/4馬身という決定的な差をつけて制した同馬。そのレースで2着のムース(牡3、父グッドマジック)が、今季初戦のG2サンヴィセンテS(d7F)を2.3/4馬身差で快勝。BCジュべナイルのレースレベルが高かったことを実証していた。フィアースネスにとってホーリーブルSは、3カ月の休み明けではあったものの、ファンは同馬をオッズ1.2倍の1番人気に支持した。

 前半は3番手を追走したフィアースネスは、3コーナー過ぎで早くも先頭に立つ、自身満々のレース運びを見せた。ところが、直線入口で3番人気(10.2倍)のハデス(セン3、父オウサムスルー)が馬体を併せてくると、ほとんど抵抗することなく先頭を譲り、残り100mで明らかに失速すると、勝ち馬から3馬身半差の3着に敗れてしまったのである。

 G3ホーリーブルSを2馬身差で制したハデスは、フロリダ産馬で、昨年12月にデビュー。ガルフストリームパーク競馬場のメイデン(d5.5F)を制し緒戦勝ちを飾ると、前走同じくガルフストリームパーク競馬場で行われたフロリダ産馬限定の一般戦(d7F)を8馬身差で制し、デビュー2連勝を飾っていた。無傷の3連勝で重賞初制覇を果したことで、ケンタッキーダービー戦線に急浮上することになったハデスだが、戦線の核となれる馬かどうかは、もう一戦見てみたいところである。

 ニューヨーク州のアケダクト競馬場で行われたG3ウィザースS(d9F)も、オッズ2.15倍の1番人気に推されたライトライン(牡3、父シティオブライト)が3着に敗退。勝ったのは、オッズ9.3倍の5番人気だったアンクルヘヴィー(牡3、父ソーシャルインクルーション)だった。同馬はペンシルヴェニア産馬で、前走12月27日にパークスレーシング競馬場で行われたペンシルヴェニア産限定特別ウェイトフォーイットS(d8F70y)を制し、2勝目を挙げての参戦だった。

 アーカンソー州のオークローンパーク競馬場で行われたG3サウスウエストS(d8.5F)でも、ここまで2戦2勝の成績で来ていた1番人気(2.8倍)のカーボーン(牡3、父ミトレ)が、7着に敗退。勝ったのはオッズ12.4倍で7番人気だったミスティックダン(牡3、父ゴールデンセンツ)だった。昨年11月にチャーチルダウンズ競馬場のメイデン(d5.5F)を制しデビュー2戦目で初勝利をあげた同馬。しかしその後は、同じチャーチルダウンズ競馬場の条件戦(d8F)が5着敗退。前々走オークローンパーク競馬場のLRスマーティジョーンズS(d8.5F)でも5着に敗れており、ファンの評価が低かったのも致し方ない馬だった。

 3日に行なわれた4つのダービーポイント指定競走の中で唯一、本命馬が期待に応えたのが、カリフォルニア州で行われたG3ロバート・B・ルイスS(d8F)だった。オッズ1.1倍という被った1番人気に推されたナイソス(牡3、父ナイキスト)が、2着以下に7.1/2馬身という圧倒的な差をつけて快勝したのである。昨年10月21日にサンタアニタパーク競馬場で行われたメイデン(d6F)を10.1/2馬身差で、続いて11月19日にデルマー競馬場で行われたG3ボブホープS(d7F)を8.3/4馬身差で制していたのに続き、またも楽勝で無敗の3連勝を飾ったナイソスは、現時点で、カリフォルニア地区の3歳牡馬では「最強」と、自他ともに認める存在となっている。

 普通ならば同馬は、ケンタッキーダービーの最有力候補となってしかるべき馬だが、現実は、前売りマーケットに同馬の名前はない。ナイソスを管理するのは、ケンタッキーダービー歴代最多勝利タイ記録となる6勝をマークしているボブ・バファートなのだが、21年のケンタッキーダービーで1着入線したバファート厩舎のメディーナスピリットから禁止薬物が検出され失格処分になって以来、チャーチルダウンズ競馬場はバファート厩舎所属馬を「出禁」にしており、ナイソスはケンタッキーダービーに出走することが出来ないのである。

 出走するためには、転厩という手立てが必要なのだが、ナイソスの馬主である台湾出身のチャーリーとスーザンのチュー夫妻(馬主名義はバオマ・コーポレーション)は、ケンタッキーダービーだけのためにナイソスを転厩させるわけにはいかないと、バファート厩舎残留を決断。しかして、ナイソスは3冠2冠目のG1プリークネスS(d9.5F)を、春最大の目標とする模様だ。

 主役不在のケンタッキーダービー戦線が、今後どのように動いていくか。日本調教馬参戦の可能性もあるだけに、動向を注視したいところである。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング