大きな変更点は?
24日にサウジアラビアの首都リヤドにあるキングアブドゥルアジーズ競馬場で行われたG3・サウジダービー(d1600m)は、前評判の高かった日本調教馬フォーエバーヤング(牡3、父リアルスティール)が、アメリカ調教馬ブックンダンノ(セン3、父ブカロ)との大接戦を制して優勝を飾った。
同馬は、レース2日後の26日にサウジからドバイに移動。アメリカのザブラッドホース電子版はこの模様を、「セニョールバスカドール、フォーエバーヤングらがドバイに到着」という見出しとともに報じた。サウジC勝ち馬と並び称されているあたりに、現在の同馬がアメリカ競馬界でいかに大きな関心を呼ぶ存在となっているかを、如実に表している。フォーエバーヤングは、3月30日にメイダン競馬場で行われるG2・UAEダービー(d1900m)に出走予定で、「ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー」に組み込まれたこの1戦で、G1・ケンタッキーダービー(d10F)の出走枠に入るためのポイント獲得を目指すことになる。
日本からは、18日に東京競馬場で行われたLRヒヤシンスS(d1600m)を3馬身差で制したラムジェット(牡3、父マジェスティックウォリアー)の陣営も、ケンタッキーダービー挑戦に強い意欲を示している。5月4日にチャーチルダウンズ競馬場で行われるケンタッキーダービーを起点としたアメリカ3歳三冠路線は、日本でも例年以上に大きな注目を集めることになりそうだ。
実は、今年のアメリカ3歳三冠には、例年と大きく異なる点がある。
三冠最終戦となるG1・ベルモントSは、その名称の通り、ニューヨーク州のベルモントパーク競馬場を舞台とした一戦なのだが、そのベルモントパーク競馬場が、老朽化したスタンドを新築するため、2026年春までを工期として、現在は閉鎖されている。このため今年のベルモントSは、同じニューヨーク州にあるサラトガ競馬場に移設して開催されることが決まっているのだ。
ベルモントパーク競馬場の旧スタンドは1968年に完成したものだが、これが建設されていた1963年から1967年まで、ベルモントSはアケダクト競馬場で開催されていた。今回の建て替え中も、ベルモント開催の多くがアケダクトに振り替えられているのだが、ニューヨークの競馬を司るNYRAは昨年12月、夏のリゾート地として知られるサラトガを、2024年のベルモントSの施行競馬場とすることを決定した。同時にNYRAは、ベルモントSの総賞金を、2023年の150万ドルから、2024年は200万ドルに増額することを決定。さらに、例年ならダート12ハロンで争われる三冠最終戦を、2024年はダート10ハロンとすることもあわせて発表したのである。
ベルモントSの距離は、4年前の2020年にも変更されている。コロナウイルスのパンデミックが発生したこの年、競馬開催は世界中で中止になるか、そうでなければ、日程や開催地の変更が相次いだ。
アメリカでは、通常ならば5月第1土曜日が施行日となるケンタッキーダービーが、9月5日に順延されての開催となった。その一方で、ベルモントSは当初の予定より2週間遅れの6月20日に開催。二冠目のプリークネスSは10月3日の施行となったため、ベルモントSが3歳三冠緒戦として施行されたのだ。
三冠前哨戦も、消滅したり条件変更が相次いだ中、12ハロンでの施行は馬への負担が大きすぎるとして、2020年のベルモントSは、いつものベルモントパーク競馬場を開催地としながらも、距離を9ハロンに短縮しての開催となった。
今年の距離変更の理由は、サラトガのダートコースには12ハロン戦の設定がないためである。距離が12ハロンであるからこそ、ベルモントSは「ザ・テスト・オブ・ザ・チャンピオン」と称されるのだとの声がある一方、アメリカにおいてはダート12ハロンという条件の競走は極めて珍しく、ベルモントSに関しても距離や開催時期を変えた方が良いという議論が、毎年のように起こっている。
156回目の開催にして、史上初めてサラトガを舞台とする今年のベルモントS。日本調教馬が参戦する可能性もある同競走が、春のリゾート地でどのような盛り上がりを見せるか。10ハロンで争われる3歳最終戦が、どのような評価を受けることになるのか。気の早い話ではあるが、その動向が気になるところである。