▲アスコリピチェーノとともに無敗での桜花賞制覇を狙う北村宏司騎手(c)netkeiba
いよいよやってくる2024年のクラシック戦線。その開幕戦・桜花賞に、2歳女王の称号を獲得したアスコリピチェーノと北村宏司騎手が臨みます。ここまで無敗で駆け抜けてきているコンビに今後の意気込みを伺いました。
一方で、前走阪神JFでの勝利が8年ぶりのGI制覇となった北村騎手。その間、度重なるケガに悩まされながらも、何度もその壁を乗り越えてきました。その復活の原動力となったものとは──“不屈の男”の秘密に迫ります。
(取材・文=デイリースポーツ:井上達也)
2回目の栗東調整も「メリハリがあって落ち着いた感じで良かった」
──栗東トレセンで1週前追い切りに騎乗しました。感触はいかがでしたか。
北村宏 厩舎周りでのウォーミングアップが終わって、調教スタンドに向かうところから乗せてもらいましたが、落ち着いた様子で調教場まで行けました。角馬場でも気持ちをはみ出すところなく、淡々とこなしてくれた。追い切りはスタンド前から大阪杯に使うルージュエヴァイユを追いかける形で行きました。しっかりとくっついてタイトな並びでしたが、リズムも良かったし、直線も慌てないで並びかける感じ。こちらのタイミングを馬が待ってくれていて、良かったかなと思う。雨が降った馬場も上手に走れていました。
──前走の阪神JFも栗東トレセンに滞在しました。2度目の栗東で変化のようなものはありましたか。
北村宏 前走に使う時も栗東で乗せてもらいましたが、スタッフに聞いた通り、初めての前回よりも慣れが早いし、覚えて勘づくかなと思ったけど、メリハリがあって落ち着いた感じで良かったと思いました。
──変化を感じる部分は。
北村宏 体も、前走の時からいい体を維持している感じ。すごく大きくガラッと変わるわけではないけど、順調に成長している感じがする。色んなところが順序よく大きくなるというか、成長している気がします。
──ファーストコンタクトが新潟2歳S。当時と比較してください。
北村宏 夏の新潟なので、それ(成長)はもちろんですけど。気持ちの面でも振り幅を大きく乱すことが少なくなってきたかな。体は当時からいいボリュームのある馬で、順調に育ってきてくれている感じがします。
▲初コンビで勝利をつかんだ新潟2歳S(撮影:小金井邦祥)
──アスコリピチェーノの強調点。良さを聞かせて下さい。
北村宏 よく食べてくれていることと、みんなに手をかけてもらって、体もいいコンディションを維持してくれているから、しっかり調教もできる。その分、健康でいい精神状態でレースに向かえるので、頼もしいというか、レースに集中できる。
──前走の阪神JFは鮮やかでした。レースを振り返って。
北村宏 馬場も比較的良かったですし、そのなかでスムーズな走りをしてくれた。競る形になったり、抜け出したり、また迫られたり、最後まで気を抜けなかったけど、馬は最後まで一生懸命に走ってくれて。いい走りだったと思います。
▲「最後まで気を抜けなかった」前走の阪神JF(c)netkeiba
──跳びの大きな印象があります。
北村宏 いいストライドがありますよね。規格外というわけではないけど、ちゃんと軸があって、いいバランスで走ります。
「待ってくれている人たちのためにも元のステージに戻れるように…」
──8年ぶりのGI勝利でした。
北村宏 レースが終わって、そう言われて、“あ、そうか、8年開いていたんだ”と思いました。8年ぶりだ、って思って乗ったわけじゃないので(笑)。
──15年12月に左膝関節捻挫を発症。その後も、19年3月の落馬で頭部外傷。そして21年には落馬で右足骨折の重傷を負いました。
北村宏 ちょっと続いちゃって、本望じゃないですけど、骨折したのが急に治るわけではないし、またケガしないように気を付けながら乗っていかなきゃとは思うし。そういうなかで応援してくれる人たちがずっといたので、それを励みにして元のステージに戻れるように頑張ろう、と思っていました。
──どうやってモチベーションを維持していたのでしょう?
北村宏 声をかけてもらって、待ってくれている人たちの存在が大きいですね。
──アスコリピチェーノの黒岩調教師との関係性について聞かせて下さい。
北村宏 鹿戸先生のもとで調教助手をやっている頃から話をしていて、コミュニケーションを取りやすいというか、気さくに色々と話してくれて、細かいことも相談に乗ってもらったりで。年齢も一緒なんです。
▲黒岩師が助手だった頃から話をする関係性で、同い年のふたり(c)netkeiba
──北村宏騎手で思い出すのがキタサンブラック。15年には菊花賞を勝ちました。
北村宏 デビュー2戦目の競馬を覚える段階から関わらせてもらって、調教師さん、スタッフ、オーナーと相談しながらレースを進めて行ったので。すごく貴重な経験になったかなと思います。それは今も自分の引き出しになっていますし、子供も走ってくれて嬉しいですね。
▲キタサンブラックとの出会いは「貴重な経験になった」(c)netkeiba
──3連勝で2歳女王に輝き、無敗で大一番を迎えます。プレッシャーは。
北村宏 プレッシャーを感じられる、いい仕事だと思って臨めますね。
──ジョッキーにとって桜花賞とは。
北村宏 いろいろとカテゴリーを分けて使う時代。その適性を狙っていくなかで、難しい時期でもありますよね。3歳の牝馬で、そこに照準を合わせてというのは。みんな難しさのあるなかで、このタイミングで牝馬がマイルを走るのは価値として残る。馬にとっても大事なレースだと思っています。
(文中敬称略)