障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、一昨年の夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。
今回は、退院後の新たなリハビリの話題です。4か月の入院を経て自宅に戻ったものの、新たな治療のため1か月間通院することになった雄造騎手。週に5回、家や病院で様々なトレーニングが待ち受けます。
やきもきする場面はありながらも、日常生活を送れるようになった様子にはトレセンの皆さんも驚くほど。そんな雄造騎手に対して、鬼嫁はさらにスパルタな“課題”を与えます。厳しいようにもみえるリハビリの方針ですが、その裏には回復を願う妻としての強い“想い”がありました──。
退院後すぐに1か月の病院通いがスタート
卒園式の翌日は、娘の誕生日。退院直後で遠出をする余裕がなかったので、朝から近所の公園に遊びに行きました。
夫は入院中、「これからは子供とたくさん遊びたい」とよく言っていましたが、公園ではこれまでと何ひとつ変わらず、ベンチに座って地蔵のように動きません。
私は「あれだけ退院したら子供と遊びたい! と言っていたのに???」と最初はビックリしたのですが、「きっと退院したばかりで疲れているのだろう。これまでは公園に来ることもほとんどなかったので、来てくれただけで良しとしよう」と思い直しました。
午後からは誕生日パーティーの準備。夫はというと「疲れたから寝る」と言い、本当に寝てしまいました。翌日、子供たちを園に送って自宅に戻ると、夫はソファーに座り、テレビを見ていました。退院したら自宅で自主リハに真剣に取り組むと約束したのに、退院から数日、一向に動き出す気配はありません。
私はそろそろ一声掛けたほうがいいかなと思い、自主リハをするよう伝えたら……。「はぁ、わかってるから…」ため息を吐きながら、鬱陶しそうにそう返してきました。「あれだけ家に帰ったら頑張れると言っていたのは何やってん! 勝手にしろや!」と思い、めちゃくちゃ腹が立ちましたが、喉まで出掛かった怒りの言葉をグッと飲み込みました。
この日は淡海医療センターで高気圧酸素療法という新たな治療がスタートする日でした。この治療は、大気圧よりも高い気圧の中に入り、高濃度の酸素を身体に取り込むもので、脳を含む体中に酸素が行きわたり、脳損傷や骨折といった怪我の回復を早めるための治療とのことでした。