先月30日のドバイターフで落馬負傷し、戦列を離れていたクリストフ・ルメール騎手が、今週末、5月5日の東京競馬からレースに復帰することを自身のX(旧ツイッター)で発表した。
鎖骨と肋骨を骨折し、肺に穴があく気胸も判明していた。並の人間なら回復までもっと時間がかかっていただろうが、さすが、スーパーマンである。
やはり、ルメール騎手がいないと、レースの核がなくなったように感じられる。武豊騎手にも同じことが言えるのだが、例えば、彼が前のほうにつけているのだからそんなに流れは速くないのだろうと、時計とは別の尺度が得られるなど、レースを見るうえでの重要なポイントになっている。彼がいるのといないのとでは、レースの締まり方が違う。
NHKマイルカップでは2歳女王のアスコリピチェーノに騎乗するというから、楽しみだ。
今春もスポーツ誌「Number」の競馬特集号が発売される。いつも、ゴールデンウィーク前かゴールデンウィーク中に取材し、数日で原稿を書き、ゴールデンウィーク明けに校了というスケジュールになる。若いころの私はひどい雨男だったのだが、晴れ男のディープインパクトの取材をしているうちに病気が治るように改善され、今回の取材も全日好天に恵まれた。
好天ということに関して、「五月晴れ(さつきばれ)」というのは、もともとは太陰暦の5月、現在の太陽暦の6月の梅雨時に見られる晴れ間のことだ。が、「太陽暦5月の晴天にも使う」と手元の国語辞典に記されているし、天気予報などでもその意味で使われることがある。それに対して「五月雨(さみだれ)」は梅雨のことで、太陽暦5月の雨にあてられることはない。「五月雨」単体より、だらだらとつづく「五月雨式」のほうがよく使われているのではないか。
文字どおり連休に水をさす窓外の雨を見て、こういう雨はどう表現すべきなのかと考えているうちに、だからなんなんだ、という話になってしまった。
さて、5月の個人的なスケジュールというと、「Number」の競馬特集号のほかに、今年はもうひとつ、重要なことがある。
これまで毎年7月最後の土曜日から月曜日まで行われていた世界最大級の馬の祭「相馬野馬追」が、人馬の熱中症対策などのため、今年から5月最後の土曜日から日曜日までに変更されたのだ。
それはつまり、「競馬の祭典」日本ダービーのスケジュールと重なることを意味する。
私は東日本大震災が発生した2011年から、コロナ禍のため神事のみとなった2020年以外は毎年、震災と原発事故の被災馬取材のひとつとして足を運んできた。しかし、これからは、ダービーと重なる日曜日の本祭の取材は難しくなりそうだ。今のところ、今年は金曜日に小高の同慶寺で行われる歴代相馬藩候墓前祭と、土曜日の宵祭に行き、日曜日は日本ダービーを取材するつもりでいる。
同様のスケジュールで開催されるアメリカのインディ500をずっとカバーしながら野馬追の撮影をつづけてきた写真家の斉藤和記さんはどうするのか訊いてみると、昨年でインディ500の取材が30回の節目を迎えたこともあり、これが運命だと受け入れ、インディではなく野馬追に行くとのことだった。
斉藤さんは、昨年7月、初の相馬野馬追専門誌である「相馬野馬追ファンガイド」を創刊した。現在、今年の野馬追に向けて「相馬野馬追ファンガイド第2号」を制作中で、協力者の名前や社名(店名や屋号、ブランド名などもOK)を誌面に掲載する
クラウドファンディングを実施している。
私も協力したそのクラファンの期限は5月8日で、本稿が世に出る5月2日で「残り7日」ということになる。「相馬野馬追ファンガイド」で検索するだけでもクラファンのページが出てくるので、興味のある方は、ぜひアクセスしてほしい。
私がこういうクラファンに協力するのは、写真家の内藤律子さんが数年前、「サラブレッドカレンダー」の制作をつづけるために実施したもの以来、2回目だ。根がセコい私が協力するくらいだから、こうした作品をつくること、世に問うことの意味がいかに大きいか、理解していただけると嬉しく思う。
最近、落馬事故が多い。先月20日の福島牝馬ステークスで落馬した吉田隼人騎手はくも膜下出血で入院中だという。彼の一日も早い回復と、今週末も週中も、そしてこれからも、人馬が無事にレースを終えてくれることを祈りたい。