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道中も4コーナーも直線も! 一瞬たりともライバルに隙を与えず──巧緻を極めたNHKマイルCを振り返る【月刊 川田将雅】

  • 2024年05月09日(木) 18時01分
“VOICE”

▲ジャンタルマンタルと制したNHKマイルCを回顧!(撮影:下野雄規)


5日に東京競馬場で行われたNHKマイルC。ジャンタルマンタルと川田騎手が、23年朝日杯FSに続く2つめのGIタイトルを掴みました。好スタートを決め、道中はアスコリピチェーノの外を追走。直線で後続を突き放し、2馬身半差の完勝でした。

中2週のしんどさを感じた返し馬での様子や、「これはもう負けないな」と確信した瞬間など、レースの回顧をたっぷりお届け。ルメール騎手との緻密な駆け引きについても、詳しく語っていただきました。川田騎手の技術と、ジャンタルマンタルの強さが存分に発揮されたGIの裏側に迫ります──。

(取材・構成=不破由妃子)

長い直線での思惑「クリストフがあきらめるまで、ジッと待っていました」


──NHKマイルC優勝、おめでとうございます。皐月賞(3着)のレースぶりから、次は確勝級だなと思っていたので、非常に冷静に見ていました。

川田 心配だったのは、疲れだけでしたからね。あれだけ一生懸命に走ってくれた皐月賞から中2週。しかも、短期間で二度の関東遠征ですから、その点だけが気掛かりでした。

──当日跨った際、そのあたりの影響はどう感じましたか?

川田 中間は疲れを抜くことだけに重きを置いて調整してもらって、精神的にはいい状態でしたね。でも、返し馬で動いてみると、身体からは少ししんどさを感じて。でもね、しょうがないですよ。皐月賞では本当に頑張ってくれましたから。

“VOICE”

▲高い能力を見せ3着に入った皐月賞(撮影:下野雄規)



──まさに負けて強しという競馬だったと思います。

川田 本当に一生懸命走ってくれましたけど、やはりどうしても今のジャンタルに2000mは長い。1800mの共同通信杯(2着)でも2000mは長いなと感じましたから。それでもあそこまで頑張って力を見せてくれたので、適した舞台であるNHKマイルCこそ勝たせなければ…という強い思いで臨んだ一戦でしたね。

──それがあの競馬だったわけですね。このレースに限ったことではないですが、今回も川田さんの冷静さは鳥肌モノでしたよ。まずは、スタート後の並びについて、どこまでイメージされていたんですか?

川田 レース前は、さほど考えていません。それ以上に、先ほども話しましたが、今日のこの具合でどれだけの走りができるんだろうということに思いを巡らせていた感じです。精神的にとても穏やかに作ってもらったので、パドックではとてもいい精神状態で歩けていて、その精神状態のまま返し馬、ポケットと終えることができたのですが、ゲート裏まできたら、やっぱりちょっと苦しさがあるなというのを感じて。どうしても取り切れていない中2週の疲れから、走ることに対して前向きになれないような苦しさが伝わってきたんですよね。

 そのあたりが、レースに行ってどうなるか。今のこの状態でゲートの中をどう過ごせるのか、この精神状態と身体で、どういうスタートを切れるのか。ゲート裏では、どういう競馬をするかというよりも、それらを中心に考えていました。それ以前に、レースの中身や組み立てに関しては、前の晩とかも含め、今回はさほど考えてなかったです。

──なるほど。すべてはスタートを切ってから。結果、どの馬よりも好スタートを切ったわけですが、ああなったら行かせるも抑えるも自由自在ですよね。

川田 ゲートの中でしっかりと準備ができて、望んでいた素晴らしいスタートを切ってくれたので、その後の組み立ては、ポジティブにいろんな選択肢が出てきます。

──ふと見たら、内にアスコリピチェーノがいて。レース後、ルメールさんは「いい位置を取れた」とおっしゃっていて、確かにコースや流れを思うといい位置だったのかもしれませんが、なにしろ隣にいるのは川田さん。思わず、「飛んで火にいる夏の虫」なんていう言葉が浮かんでしまったのですが。

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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