▲ジャスティンミラノと日本ダービーに挑む戸崎圭太騎手にインタビュー(撮影:下野雄規)
26日に東京競馬場で行われる日本ダービー。最有力候補として参戦するのは皐月賞馬ジャスティンミラノと戸崎圭太騎手です。
前半のテーマは2度の2着を経験した過去の日本ダービーと最近の騎乗について。後半はレースの振り返りを中心にお話しいただきました。「正直、夢は広がってますね(笑)」と語るジャスティンミラノの可能性や、後押しを感じた皐月賞など...。運命の日を前に赤裸々な心境に迫ります!
(取材・構成=ハツミ☆オカ)
戸崎圭太騎手が明かす“日本ダービー”への想い
──まずは戸崎騎手にとって、日本ダービーがどのようなレースなのかをお聞かせください。
戸崎 現在、最も勝ちたいレースでしょうね。以前はそこまで思っていませんでしたが、JRAに移籍して以降、誰もが日本ダービーに目標を置いていると感じていますし、僕自身も日本ダービーで2着が2回。勝ったあとの景色を見てみたいと強く思っています。
──大井の東京ダービーとは違う感覚ですか?
戸崎 いえ、そこはどちらも同じと思いますよ。僕はどちらも経験していますが、地方でもダービーを目指し、強い思いでやっていますから。一生に一度しか出走できないレースであることが大きいのではないでしょうか。
──二度の2着を振り返ってください。2018年は皐月賞を勝ったエポカドーロでの参戦でした。
戸崎 それまでにクラシックを勝っていませんでしたし、早く勝ちたいという思いのなかで、乗せてもらったのがエポカドーロでした。藤原先生とも綿密に作戦を考えたりとか、とても記憶に残っている馬ですね。
──あの馬の力は出し切ったと思える一方で、結果は惜しい半馬身差の2着。
戸崎 頑張ってくれたとは思いますが、負けてしまいましたから。欲が出ちゃうというか、僕が何かをしていたら、勝てたのかもしれないと思ったりはしましたよ。悔しかったですね。
──翌年の2019年にも日本ダービー制覇のチャンスがきました。騎乗馬はダノンキングリー。
戸崎 チャンスは十分と思って臨みました。いい位置で進めることができましたし、僕としてもイメージ以上にスムーズな流れでした。
──サートゥルナーリア、ヴェロックスの人気馬2頭が後ろに控えていました。
戸崎 途中で切り替えることはできたのですが、それでも結局は見誤ったのか、それとも勝ったロジャーバローズが強かったのか…。着差が着差(クビ)でしたし、悔しかったですね。キングリーには距離が心配ではありましたし、それも含めて考えれば、頑張ってくれたのかなとは思います。
▲「悔しかった」と振り返る19年日本ダービー(撮影:下野雄規)
──今年の日本ダービーは自身にとって、初めて1番人気での出走となりそうです。これについては?
戸崎 これまでの自分であれば、相当にプレッシャーを感じ、普通に過ごせていなかったのかなと思いますが、最近はいい意味で余裕が出てきているんです。ダービーを迎えるまでの時間を楽しんで過ごしていますよ。充実していますね。
──余裕が出てきた理由として、思い当たる契機があるのですか?
戸崎 これまでの経験もありますが、一番は肘の怪我ですね。大きな怪我をしたからの変化というか…。気持ちもそうですが、技術の面でも変わってきていると感じます。
──肘に負担をかけないような騎乗に変えているということですか?
戸崎 怪我から復帰して以降、自分の中での感覚が前と違うな…と感じるものがありました。そのように感じている状況で馬に対する乗り方というか、接し方ですね。これを考えながら乗っていったからこその気付きだったりとか、成長みたいなもの。これが大きかったと思います。それが現在の余裕を生んでいる理由ではないでしょうか。
──今年は友道康夫厩舎との相性が良く、11回の騎乗で4-4-1-2。勝率が36.4%、連対率は72.7%、複勝率は81.8%というハイアベレージです。
戸崎 そうみたいですね。取材を受けていて、よく言われていますよ。相性がいいと勝手に思っています。
──とはいえ、この11走で1番人気での出走が一度もありません。先ほどのお話を聞いて、戸崎騎手の現在の騎乗スタイルが、友道厩舎の馬の作り方にマッチしているのではないか…と感じたのですが。
戸崎 友道厩舎の馬には以前から乗せていただいてますが、怪我で自分が変わった部分が、ちょうどよくハマッているのかな、と。実は僕もそれを感じていました。勝つだけでなく、2着もすごく多いですから。
2走で感じたジャスティンミラノの強み
──戸崎騎手が騎乗した2走を振り返ってください。まずは共同通信杯から。
戸崎 またがった瞬間にいい馬だな、と思いました。最初に感じたのはパワー。返し馬でキャンターにおろしたときに柔らかみというか、軽さも感じましたね。走るんだろうな…と思いました。
──共同通信杯はスローペースで位置を取った競馬になりました。仮にハイペースに流れていたとしたら、キャリア2戦目のジャスティンミラノで対応できたのでしょうか?
戸崎 ジャンタルマンタルを筆頭にメンバーも強かったので、勝てたかどうかはわかりませんが、いい競馬はしてくれていたと思います。ペースが速ければ、速いなりの位置で競馬をしていたでしょうね。レースは生き物ですし、そのたびにペースも変わってくるものですが、どのような流れにも対応できる馬が強い馬と僕は考えています。この馬がまさにそうですね。
──操縦性の高い馬とも言われています。
戸崎 僕も操縦性は高い馬と認識しています。でも、共同通信杯の返し馬は行きっぷりがすごく良くて(苦笑)。乗りやすいと聞いていましたし、変な先入観を持たずにいったのですが、あまりに行きっぷりが良かったので、果たして本当に乗りやすいのだろうかと。ちょっと不安になりました(笑)。
▲ジャンタルマンタルなどを相手に共同通信杯を勝利(撮影:下野雄規)
──その共同通信杯と前走の皐月賞では馬の作り方を変えていたと陣営に話を聞きました。意識的に前進気勢の強い状態にしていたとのことですが、それは騎乗した戸崎騎手も感じたことなのでしょうか?
戸崎 それは感じましたね。皐月賞のほうが返し馬でも行きっぷりが強くなっていました。成長する時期ですし、自然と行きっぷりが出てきたのかなと思っていたのですけど、作り方を変えていたという話であれば、そのあたりもちゃんと出ていたんだなと。そのように思いますね。
──皐月賞前の心境について、改めて教えてもらえますか?
戸崎 ああいうことがありましたからね。康太の思いも一緒に乗せて。共に戦う。恥ずかしいレースはできないし、強い気持ちで臨みました。
──4コーナーの手応えは少し鈍いようにも感じました。あの直線はどのような気持ちで乗っていたのでしょうか?
戸崎 確かに勝負どころで手応えが怪しくなったのですが、僕はハイペースが理由でなく、4つのコーナーが初めてだったことによる戸惑いと思っています。4コーナーでジャンタルマンタルにスッと離されたので、そこでアレッとは思いはしましたが、直線に入ったら伸びてくれると思っていましたし、その通りに反応して伸びてくれましたから。そこからの伸び脚もすごかった。僕も必死でしたけれど、届くか届かないかの最後の後押し。康太の力というものを感じましたね。
▲レコードタイムで無敗の皐月賞制覇を達成(撮影:下野雄規)
──皐月賞を見事に制したジャスティンミラノですが、同馬は早い段階からダービー向きと評価されていました。
戸崎 僕もダービーが最も条件が合うと思っています。すごくゆったりしたフットワークなので、器用さを求めるよりも広いコースで伸び伸びと走らせたほうが力は出しやすい。そこが一番です。
──様々なトップホースに乗ってきた戸崎騎手にとって、どれくらいの可能性を感じる馬でしょうか?
戸崎 正直、夢は広がってますね(笑)。これまでに乗ってきたいい馬の延長線上にいる存在と思っています。現段階では欠点らしい欠点がないですし、バランスが取れてレベルの高い馬です。
──ジャスティンミラノに不安らしい不安材料がないことも、余裕をもってダービーを迎えられる一因なのでしょうか?
戸崎 操縦性が高く、距離も大丈夫と思って乗れるわけですから、それは大きいと思いますよ。ただ、現在は余裕を持って過ごしていますが、ダービーの週になったらわかりませんね。実はオークスの週から日本ダービーの取材がとても多かったんです。近付くにつれて、自分がどのように変化していくのか。それも楽しみなところかなと思っています。
──馬に乗ってしまえば、緊張も解けるというジョッキーもいますが。
戸崎 いや、そこは人それぞれではないかと思います。僕は元々が緊張するタイプですし、上がり症。周りに流されるというか、飲み込まれるタイプではあるので(苦笑)。でも、そこを楽しみつつ、クリアしたいと思っています。
──最後に今年のダービーに向けての抱負、決意を聞かせてください。
戸崎 こういう馬に巡り合えたこと。とても感謝していますし、幸せに感じています。周りの方の応援も多いですし、それが大きな力になっていますし、勝手ながらですが、康太と一緒に戦っている自分がいて、それも心強いと感じています。そういった力を借りて、皆さんと一緒に戦って、いい結果を出したいなと思っていますので、応援してください。
▲悲願の日本ダービー初制覇へ「応援してください」(撮影:下野雄規)
(文中敬称略)