雪が解けたパドックで草を食むドトウと水桶の水を飲むメト(提供:ノーザンレイク)
メイショウドトウが入院、開腹手術を行った2月23日前後は、2月にしては暖かく雪解けが進み日高方面は積雪がほぼゼロだった。だがドトウが退院した翌日には雪が降り、気温も低くなった。放牧地より面積が狭いパドックに1時間ほど放牧してから引き運動をすることもあったが、冬に逆戻りしたような状況では生えている草を食べることもできないし、硬い繊維質が結腸付近に詰まったのが疝痛の原因だったので、他の馬たちのように乾草を放牧地に置くわけにもいかない。雪が積もっているせいか、パドックで所在なさげに佇んでいる姿をよく目にした。腸の動きを良くするために、草が伸び出してくるまでは引き運動を長めに行った。
3月12日には、獣医に歯を診てもらい整歯した。奥歯がすり減っていて、口に入れた食べ物をうまくすり潰せない状態だった。これが今回の疝痛の大きな原因の1つとなったようだ。少しでも噛みやすいように尖っている箇所を擦ってもらったが、年齢的に歯はこれ以上伸びては来ないので、歯の改善は大きくは望めない。あとは消化が良く、かつ必要な栄養が摂取できる食事にし、水分不足や運動不足にならないよう気をつける。再発を防ぐためにも、そうするしかない。
かかりつけ獣医師による術後の往診は、3月14日で終了した。術後しばらく腸の動きがあまり良くないと言われていたが、十分お湯に浸した飼い葉を与え、引き運動を長めにしたこともあり、往診終盤には「腸の動きが良くなった」と嬉しい言葉を頂戴した。また年齢のわりに順調に回復し食欲も旺盛なドトウの姿に「凄いですね」とも話し、川越(当牧場代表)も「さすがGI馬の底力だな」と感心していた。
ただ食欲旺盛なのは良いのだが、馬房に敷いている麦稈を食べてしまう可能性が否めないので、ドトウだけウッドシェービング(ウッドチップのようなもの)に替えた。それでも口に入れそうな時もあるので、口籠がなかなか外せないのが悩みの種だ。(普通はいつでも食べられるように乾草を馬房に入れておくが、乾草は硬い部分があるのでそれができない)今後様子を見ながら、口籠を外している時間を長くできるようにしていくつもりだ。
■プレゼントの青草を食べるドトウ 馬房に敷いてあるのがウッドシェービング
そして3月25日。ドトウは満28歳の誕生日を無事に迎えることができた。引退馬協会のドトウを支援する会員向けのお誕生日見学会を初めて開催したのだが、入院した時には果たして無事にできるだろうか?と、正直不安がよぎった。だがドトウは持ち前の心身の強さで危機を乗り切り、彼を愛する会員の方々と和やかで温かな時間を過ごすことができた。会員の方々の嬉しそうな顔と、いつものドトウの愛嬌ある表情を目にして、心底ホッとした。
3月25日、無事に誕生日見学会を開催できた(提供:ノーザンレイク)
雪が解けて4月に入り、新芽がだいぶ出てきた。5日からはパドック放牧を再開し、15日には元々ドトウが使用していた広い放牧地に放した。馬房の中で口籠をつけて窮屈な思いをしている鬱憤を晴らすかのように、ドトウは一心不乱に青草を食べている。放牧時間も最初は5時間ほどだったが、今では8時間近くまで延びた。手術と術後の食事制限で細くなった体も、少しふっくらしてきた。牧柵修繕のためドトウの隣の放牧地にしばらく不在だったネコパンチが、久々に隣にやって来た時には走り回ったり跳ねたりして喜びを表すほど肉体的にも戻ってきているようだ。
■ネコパンチが久々に隣の放牧地に来てはしゃぐドトウ
元気になってきたとはいえ、高齢ゆえ、これからも気の抜けない日々は続いていくが、ドトウが健やかに毎日を過ごせるように心を砕いていければと思う。
(了)
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