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【エプソムC AI予想】今年のメンバー構成ならチャンス!? AIの注目馬は波乱を演出できるか

  • 2024年06月03日(月) 18時00分

単勝オッズ3.6倍(1番人気)のロマンチックウォリアーが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

超人気薄の馬が馬券に絡んだ例はほとんどない


AIマスターM(以下、M) 先週は安田記念が行われ、単勝オッズ3.6倍(1番人気)のロマンチックウォリアーが優勝を果たしました。

伊吹 着差以上の完勝と言って良いのではないでしょうか。好スタートを決めたうえで行きたい馬を先に行かせ、向正面から4コーナーにかけては先行勢のすぐ後ろ、5番手前後のポジションを追走。ゴール前の直線に入ったところで前を行くフィアスプライド(7着)、すぐ外のステラヴェローチェ(9着)らにつつまれる形となりましたが、残り400m地点のあたりでフィアスプライドが内に進路をとると、鞍上のJ.マクドナルド騎手がすぐに追い始めて先行勢を捕らえにかかっています。

 その後、残り200m地点を過ぎたところで早くも抜け出し、単独先頭に。最後は外を突いたナミュール(2着)とソウルラッシュ(3着)が併せ馬の形で伸びてきたものの、半馬身ほどのリードを保ったまま入線しました。netkeibaのXアカウントによれば、地元の香港だとロマンチックウォリアーは日本時間14:54時点で単勝オッズ2.0倍(1番人気)の支持を集めていたとのこと。JRAでも最終的に単勝1番人気の座を確保したとはいえ、単勝支持率の21.8%はソウルラッシュ(19.7%)とあまり変わらない水準でしたから、いま思えば過小評価だったかもしれません。

M ロマンチックウォリアーはG1・4連勝中でしたが、日本への遠征は今回が初めてですし、1600mのレースを使うのも2023年1月のスチュワーズC(2着)以来。コース適性を不安視していた方が多かったのではないでしょうか。

伊吹 正直なところ、私もそのひとり。前回の当コラムで指摘した通り、近年の安田記念で好走した馬の大半は東京の重賞に十分な実績のある馬でしたから、東京のレースを走ったことがない香港勢2騎は、大きく崩れてしまう可能性も十分にあると考えていました。もっとも、ロマンチックウォリアーは4走前に豪G1のコックスプレートを制していて、国外遠征や左回りのレースがまったく問題ないタイプであることを証明済み。

「東京初挑戦という理由だけで軽視して良い馬ではないな」とも考えていて、実際にプライベートのWIN5は、このロマンチックウォリアーと最終的に◎を打った馬の2頭しか買っていなかったんです。結果的に当てることができたかどうかはともかく、ロマンチックウォリアーにはもう少し重いシルシを打っておくべきだったと反省しています。

M ロマンチックウォリアーは再来週の宝塚記念にも予備登録を行っていましたが、残念ながら回避するとのこと。もし出走してきたら、かなりの注目を集めていたのではないでしょうか。

伊吹 もともと2000m前後のレースを主戦場としてきた馬ですしね。ただ、今後もこの馬自身が無事に競走生活を続けていければ、おそらくまた日本調教馬と対戦する機会があるはず。今回のパフォーマンスをしっかり復習して、ロマンチックウォリアーの馬券を買うことができるレースに備えておきたいと思います。

M 今週の日曜東京メインレースは、さまざまな路線から精鋭が集まる古馬GIII、エプソムC。昨年は単勝オッズ3.2倍(1番人気)のジャスティンカフェが優勝を果たしました。なお、その2023年は単勝オッズ15.3倍(7番人気)のルージュエヴァイユが2着に、単勝オッズ6.2倍(4番人気)のマテンロウスカイが3着に食い込んだこともあり、3連単2万2680円と安めの配当で決着。堅く収まる可能性がそれなりに高いと見ておくべきでしょうか?


伊吹 そうした方が良さそうですね。2020年に3連単421万9320円の高額配当が飛び出しているものの、基本的には波乱が起きづらいレース。過去10年の単勝人気順別成績を見てもわかる通り、人気薄の馬はあまり上位に食い込めていません。


M 単勝1番人気の支持に応えて勝ち切った馬はそれほど多くありませんが、上位人気グループの各馬、特に単勝4番人気から6番人気の馬はそれなりに健闘していますね。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2014年以降[5-2-3-10](3着内率50.0%)、単勝3番人気から単勝5番人気の馬は2014年以降[4-4-3-19](3着内率36.7%)、単勝6番人気から単勝9番人気の馬は2014年以降[1-4-3-32](3着内率20.0%)、単勝10番人気以下の馬は2014年以降[0-0-1-69](3着内率1.4%)となっていました。買い目を作る際は、手を広げ過ぎてしまわないよう心掛けましょう。

M そんなエプソムCでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ニシノスーベニアです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。超人気薄ということはないはずですが、人気の中心となる可能性もそれほど高くなさそう。

M ニシノスーベニアは2走前の幕張Sを勝ってオープン入りを果たしたばかり。前走のダービー卿CTでも勝ち馬と0.4秒差の4着に健闘しています。もっとも、1マイル超のレースを使うのは今回が初めて。コース適性を不安視する向きもある分、それなりに妙味あるオッズがつくのではないでしょうか。

伊吹 コース適性に関してはやってみなければわからない部分もありますし、上位人気でなければ狙い目かもしれませんね。Aiエスケープが有力視しているという事実を踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 臨戦過程はしっかりチェックしておきたいところ。2019年以降の3着以内馬15頭中8頭は、前走との間隔が中8週以上でした。


M これはなかなか興味深い傾向。順調に使われてきた馬よりも、休養を挟んで臨んだ馬の方が堅実なんですね。

伊吹 ちなみに、前走との間隔が中7週以内だったにもかかわらず3着以内となった7頭のうち5頭は、前走のコースが“中央場所、かつ今回と同じ距離のコース”。今年も、前走との間隔に余裕がある馬や、メイS・都大路Sあたりを経由してきた馬に注目するべきだと思います。

M ニシノスーベニアは前走との間隔が中9週。強調材料のひとつと見て良いのではないでしょうか。

伊吹 あとは脚質も重要。同じく2019年以降の3着以内馬15頭中14頭は、前走の4コーナー通過順が8番手以内でした。


M 先行力が高くない馬は、あまり上位に食い込めていませんね。

伊吹 差して好走を果たした馬もいますが、末脚を活かすような競馬しかできないタイプは、割り引きが必要です。

M ニシノスーベニアは前走の4コーナー通過順が7番手。もともと自在性のある馬ですし、こちらも心強い傾向と言えます。

伊吹 さらに“前年以降の、JRAの、2400m未満の、GI・GIIのレース”において5着以内となった経験がない馬は2019年以降[1-1-3-47](3着内率9.6%)といまひとつ。なお、3着以内となった5頭のうち3頭は、馬齢が4歳でした。


M 実績馬や4歳馬が優勢、と。

伊吹 GIIIの別定競走ですし、より格の高いレースで善戦したことのある馬は、相応に高く評価したいところ。キャリアが浅い4歳馬でない限り、GIやGIIのレースを積極的に使ってこなかった馬は、過信禁物と見るべきでしょう。

M ニシノスーベニアは馬齢が5歳で、まだGIやGIIには出走した経験すらない馬。残念ながらこの条件はクリアしていません。

伊吹 これらの傾向を重視するなら、ほどほどの評価にとどめておいた方が良いかも。ただ、今年はすべての条件を綺麗にクリアしている馬があまりいないんですよね。Aiエスケープは有力と見ているわけですし、どちらかと言うと不安要素が少ない一頭なので、積極的に狙ってみるのもひとつの手だと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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