秋の中距離路線の主役へ

エプソムCを制したレーベンスティール(撮影:下野雄規)
立て直しに成功し、1番人気に支持された4歳牡馬レーベンスティール(父リアルスティール)の、着差や時計が示す以上の圧勝だった。
パドックでは、今回も失速した新潟大賞典と同じようにイレ込みに近い状態になるシーンもなくはなかったが、レースでは気負う場面はなく、正攻法の好位追走から楽々と抜け出して自己最高の1800m「1分44秒7」。レースレコード1分45秒1を更新した。
最初の1ハロン12秒8以外、残る8ハロンはすべて11秒台(11秒1-11秒8)の高速レースだった。最初の12秒8をカットすると、残りの1600mは「1分31秒9」。これを59キロで楽々と乗り切ったレーベンスティールは、秋の中距離路線(1800-2000m)の主役の1頭になるのではないかと思えた。主に体調面で不本意だった前2戦(香港ヴァーズ、新潟大賞典)を別にすると【4-2-1-0】。底を見せていない。上昇の強みがある。
1981年のエリザベス女王杯2着馬タケノダイヤ(父テスコボーイ)が代表馬になるファミリーは必ずしも著名ではないが、レーベンスティールの強みは、父リアルスティール(その父ディープインパクト)がフォーエバーヤング(ケンタッキーダービー微差3着)を送って、現代の種牡馬として一気に評価を上げていること。同時に、母の父にともすれば忘れ去られそうだったトウカイテイオー(父シンボリルドルフ)が登場することだろう。配合うんぬんではなく、たしかな血の繋がりを示した新星は、ちょっと不振だった現4歳世代の牡馬陣を奮起させることになるかもしれない。
2着に快走したのも、今年になって3勝クラスを突破して上がり馬となった5歳牡馬ニシノスーベニア(父ハービンジャー)。一定の高速ラップが連続し、先行タイプが上位を占める結果だったとはいえ、これまでずっとマイル戦以下に出走していたのに、パワーアップして挑戦した初の1800mを1分45秒0で乗り切ったから立派だった。この馬は好走してもめったに人気の中心になることはない。
Round Tableラウンドテーブル産駒の4代母は、名種牡馬Haloヘイローの半妹というたしかな基盤があり、今回のレース内容から、良績のある1600mよりむしろ1800-2000mの方が合っている可能性を示したのも、陣営には大きな展望につながる。
3着シルトホルン(父スクリーンヒーロー)も、勝ち馬と同じ4歳牡馬。途中からハナを切ったセルバーグ(父エピファネイア)の前半1000m通過は58秒3。1800m戦では心持ちきついかと映るペースだったが、これを坂上で交わして先頭。最後までしぶとく粘って東京の芝コース【2-2-2-3】。最後は詰めの甘い死角が出たが、東京の方がリズム良く先行できる。また、ペースひとつで展開有利になるのも東京コースだ。
5歳アルナシーム(父モーリス)は、鞍上が先行タイプの残りやすい馬場を読んで一転の先行策。粘り込んでもいい展開になったが、最後までバテてはいないものの、今回は力強さとスケールで見劣った。もう少し馬体の成長が欲しい。
再度の復活(2度目の屈腱炎克服)を目指した7歳ヴェルトライゼンデ(父ドリームジャーニー)は、脚元の関係で左回りに出走したかった馬。懸命の仕上げだったが、さすがに今回は返し馬で動きが少し硬い印象があった。それでも3着馬とは0秒1差の1分45秒4。今回は両前屈腱炎明けなのでこのあとが心配だが、シャープな馬体は以前と同じ。不屈の精神力に期待したい。