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【マーメイドS】アリスヴェリテの逃げ切り勝ち 永島まなみ騎手の技術が光る

  • 2024年06月17日(月) 18時00分

ベテラン騎手を彷彿とさせる絶妙なペース判断


重賞レース回顧

マーメイドSを制したアリスヴェリテ(C)netkeiba


 前走の京都内回り2000mを逃げ切ったアリスヴェリテ(父キズナ)の中身は、【前半56秒8-後半61秒0(上がり37秒2)】=1分57秒8。

 一方、今回のマーメイドSの逃げ切りは同じ京都内回りの2000mを、【前半58秒3-後半58秒9(上がり36秒1)】=1分57秒2。

 鞍上は柴田裕一郎騎手から、永島まなみ騎手に乗り替わり、負担重量は53→50キロに変化していた。今回は前走のように前後半の差が「4秒2」にも達する乱ペースの逃げではまったくない。前後半の1000mをわずか「0秒6」差にまとめる教科書のような平均バランスだった。それがなぜか、大逃げと映りかねない展開になった。

 これでアリスヴェリテは4歳の今年【3-2-0-0】。一気に本格化したが、それ以上に主導権を握りペースを作った永島まなみ騎手の、あれは武豊騎手なのか、いや横山典弘騎手か、と思わせる絶妙なペース判断がすごかった。勝負どころで他馬を引きつけない。

 後続の多くのジョッキーは、前回のアリスヴェリテの飛ばした猛ペースを知っているから、前半「ああ、またか」と思ったに違いない。しかし、重賞レースらしい前半1000m通過58秒台の無理のない平均ラップを踏んで先頭を切っている永島騎手のアリスヴェリテから、中間地点で10馬身か、それ以上も離れて追走していた大半の騎手は、レース後さまざまに敗因を語ったが、本当は内心「恥ずかしかった」のではないかと思えた。

 アリスヴェリテの後半3ハロンは「36秒1-12秒5」。同馬以外、10着までに入線した馬の上がりは大半が「34秒台前半」となった。

 前半は後方にいたが、これは決してハイペースではないと察知して、3コーナー手前から早めにスパートを開始したのは2着したエーデルブルーメ(父ハービンジャー)の川田将雅騎手などごく少数だった。内回りの京都2000mの多頭数レースの難しさは知られるが、今回は単騎マイペースに持ち込んだ永島まなみ騎手だけが輝いたレースだった。

 2着エーデルブルーメは、3勝クラスを勝って今回が54キロでの初重賞挑戦。前半は後方追走となったため、途中から早めにスパートして上がり34秒6。不本意な部分もあったはずだが、2着して賞金加算に成功。能力は出し切っている。秋には「どこか一度使って、エリザベス女王杯に行ければ(福永調教師)」。秋の展望につながった。

 3着に突っ込んだ4歳ホールネス(父Lope de Vegaロペデヴェガ)は、ここまで4戦だけだったキャリアを考慮すれば、鞍上の西塚洸二騎手は「申し訳ありません」と悔しがったが、高速レースに対応できた。2000mの自身の最高時計を2秒4も短縮して1分57秒6は上々。上がり3ハロンも自己最高の34秒3。スケールを感じさせる馬体で、展望はさらに広がった。

 4着ファユエン(父ヴァンセンヌ)が最後方から突っ込んで上がり最速の33秒8。切れ味を生かすのに内回りの平担に近い短い直線が絶妙に合っていた。

 2番人気で13着に沈んだミッキーゴージャス(父ミッキーロケット)は、個人的な見解だが、直前の坂路の動きもう一歩。ゲート入りもスムーズではなかったあたり、ハンデの不利だけでなく、気力の充実した気配ではなかった。

 3番人気のコスタボニータ(父イスラボニータ)は、出負けして位置取りが悪くなったのが痛い。慣れない後方追走となったため前半からリズムに乗れなかった。

 ハンデ戦となって今年が19回目。19年連続6番人気以下の馬が馬券に絡んでいる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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