▲若手の注目株西塚洸二騎手にインタビュー(撮影:大恵陽子)
夏競馬は若手騎手が活躍する季節。その中で注目を集めるのはデビュー3年目の西塚洸二騎手です。今年は24勝を挙げてキャリアハイを更新中。先日のマーメイドSではホールネスで3着と存在感も示しましたが、自身にとっては「寝られなくて……」というほど悔しさを感じた一戦だったそう。
悔しさをバネに、今週末はラジオNIKKEI賞にミナデオロと挑戦。そこに向けての思い、そして20歳がいま考えていることとは。
(取材・構成:大恵陽子)
「悔しさもすごく大きい」環境を変えた3年目
──今年すでに24勝を挙げ、重賞でも上位争いを演じるなど、最近は活躍が目立ちます。ご自身の中で、どう変化を感じていますか?
西塚 競馬についてより深く考えられるようになりました。これまでは教えていただくこともありましたけど、基本的には自分で考えて自分で何とかしようとしてしまっていました。今は指導を受けている藤原英昭先生に馬乗りとしてだけでなく、スポーツ選手として正しい方向に導いていただいています。
──藤原調教師とは以前から接点があったとか?
西塚 乗馬のつながりで共通の知人がいて、ジョッキーになる前の中学2年生くらいの時に紹介していただきました。競馬を好きになったきっかけが藤原厩舎のエイシンフラッシュが勝った天皇賞(秋)だったので、縁があると感じました。
──西塚騎手は美浦でデビューし、栗東に拠点を移して1年。美浦時代の反省も生かしているのではないかと思います。
西塚 美浦にいた時は、いろんな方にご迷惑をおかけしてしまいました。今は私生活でも意識が変わってきて、毎週、競馬で結果を出すためにはどうすればいいのかを考えて、体のコンディションを整えることや、レースでいいパフォーマンスを発揮するためのトレーニングなどに取り組んでいます。
──毎日をレースに向けて過ごしている分、結果が残ると充実感もあるのでは?
西塚 楽しいです。でも、結果が残せなかった時は「なぜだろう」とすごく考えて、時々、自分自身の不甲斐なさにイライラしてしまいます。せっかくオーナーさんや厩舎からチャンスをいただいたのに、「何でこれができなかったんだろう」と。深く考えるようになって、1頭1頭への熱量がさらに上がっているからこそ、2着や3着になった時は「この馬なら勝てていたのでは」という悔しさもすごく大きくなっている、と最近は感じます。
「前走ではハミを取ることを覚えてくれた」ミナデオロの学習能力
──今年は上半期終了を前にキャリアハイの24勝を挙げていますが、本人の感覚としては?
西塚 昨年に比べると数字の面では勝たせていただいていますが、それでもまだまだですし、自分自身としても物足りません。日々が濃いものになっていますが、考えすぎてしまって「もうあんまり考えるな」と藤原先生から言われる時もあれば、考えが足りない時もあるので、もっとバランスを取って安定させたいです。
──そうした中、マーメイドSは自厩舎のホールネスで3着。
西塚 すごく悔しいレースでした。まず、1コーナーでの位置取りが全てを良くない方向に持っていってしまいました。ポジションをもうちょっと主張していれば、逃げた勝ち馬の近くで競馬ができましたし、4コーナーもあそこまで外に出さずにすみました。ジョッキーをやってきて一番悔しいレースになりました。ホールネスは状態も良かったですし、このメンバーで52kgという軽ハンデを考えると、勝てる力は十分にあったと思います。
──さっきおっしゃっていた「自分の不甲斐なさにイライラしてしまう」ような感じに?
西塚 レースが終わってからずっとそうでした。思い出して寝られなくなったり。もちろん、勝ったジョッキーには「おめでとう」という気持ちなんですけど、ホールネスを勝たせてあげられなかったことが申し訳なかったです。藤原厩舎の馬で、ここまでずっと一緒に競馬をしてきて能力があることは感じていて、あとは僕が上手く乗るだけでした。
▲以前から能力を感じていたという藤原英昭厩舎のホールネス(写真は23年12月、ユーザー提供:起きたろさん)
──それだけホールネスに強い思いを抱いているんですね。今週末のラジオNIKKEI賞には自厩舎のミナデオロに騎乗予定。コンビを組んで2連勝中です。
西塚 デビュー前からこの馬には跨っていて、当時から能力のある馬だと感じていました。前向きな気持ちがすごく強いので、力を入れるところと抜くところを教えないといけない、と思い、未勝利戦で初めて乗せていただいた時は馬の後ろに入れて落ち着かせることを意識しました。そして、直線に向いて一気に加速、というイメージで教えながら乗ったつもりでした。そこを勝って、白百合Sでは馬自身でそれをやってくれたので、学習能力があると思いました。
▲ゴール後笑顔がはじけた白百合S(c)netkeiba
──ラジオNIKKEI賞ではコーナー4回の競馬となります。舞台はどう感じますか?
西塚 芝でコーナー4回はデビュー戦以来ですけど、不器用な馬ではないので、器用にこなしてくれると思います。初勝利を挙げた時は4コーナーでフワッとするなど集中しきれない面もあったんですけど、前走ではグッとハミを取ることも覚えてくれたので、そういう競馬がまたできれば楽しみです。
──状態はどうですか?
西塚 ノーザンファームしがらきからいい状態で帰厩して、芝コースでの1週前追い切りでも状態の良さを感じました。
──最後に、ミナデオロと挑むラジオNIKKEI賞への思い、そしてご自身の今後への決意を聞かせてください。
西塚 まずはミナデオロでラジオNIKKEI賞を勝てたらと思います。自分自身のこととしては、どんな馬でも取りこぼしがないように気を付けながら、1頭1頭としっかり向き合って乗りたいと思います。
(文中敬称略)