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【宝塚記念】重馬場を苦にしないブローザホーンの快勝 騎手・調教師も共にGI初制覇

  • 2024年06月24日(月) 18時00分

コース選択が大きく明暗を分けた


重賞レース回顧

宝塚記念を制したブローザホーン(C)netkeiba


 レース中も降雨に見舞われた重馬場の「宝塚記念」。快勝したのはもっとも小柄な馬体(428キロ)で、スタミナはあり、また重馬場もこなすが、見方によっては非力ではないのかと映るブローザホーン(父エピファネイア)だった。たまたま偶然だろうが、2着に突っ込んだソールオリエンス(父キタサンブラック)も、馬体重460キロ。13頭の中で12番目に小ぶりな馬体だった。2021年の「大阪杯(重馬場)」で独走した422キロのレイパパレではないが、滑るような雨の重馬場だと、パワーや力強さで上回る大型馬は逆に負担やロスが大きくなるというのは、芝状態しだいで本当である。

 極悪のコンディションになった不良馬場ではなく、レース全体の流れのバランスは「前半61秒0-(12秒9)-後半58秒1」=2分12秒0(上がり34秒5)。数字だけを見ると稍重の芝くらいの、スローペースの2200mのレースの結果に映る。

 だが、実際は向こう正面から馬場の内側を通る馬はなく、上位5着までの馬は、3コーナー過ぎから最後の直線に向いて馬場の中ほどより外側に回った馬だけだった。勝ったブローザホーンと、2着のソールオリエンスは、大ゲサではなく広い京都コースの外ラチから数メートルしか離れていない位置にまで持ち出している。

 枠順もあったが、できるだけ外へ、最後の直線はもっと外へ、と進路を選んだ馬だけが上位争いに持ち込めている。それでいながらブローザホーンの上がり3ハロンは「34秒0」。今回も合わせ戦歴21戦中、断トツの速さであり、ソールオリエンスの上がりも「34秒0」。最近ではもっとも鋭い上がりだった。

 これが不思議だが、全周パトロール映像で確認すると、最後の直線は内と外では芝生の色がまったく異なっている。馬場の中央より内側と、外側では芝コンディションがまったく違っていた。結果的にだが、コースの選び方が大きく明暗を分けた。

 ブローザホーンで初GI制覇を達成した菅原明良騎手(23)の3コーナー過ぎからの一番外を回っての大胆なスパートは、これは結果的にではなく、文句なしのファインプレーであり、2馬身も抜け出しながらまだ余力があったからすごい。開業5年目の若い吉岡辰弥調教師もGI初勝利。ブローザホーンもこれでGI馬の仲間入り。年内は国内で新たなタイトルを狙う予定とされる。

 2着には昨年の皐月賞馬ソールオリエンスが突っ込んで意地を示し、3着には直線に向いて先頭に立って粘った大阪杯の勝ち馬ベラジオオペラ(父ロードカナロア)。2頭だけ出走していた4歳牡馬だった。今回だけで「4歳牡馬のレベルは…」に反撃できるわけではないが、ベラジオオペラはもちろん、早熟タイプかもなどとされたソールオリエンスも、確かな成長力を示すことに成功した。ソールオリエンスは珍しく好スタート。前半は中団より前になる場面もあったが、差し脚に賭けるために意識的に一度下げて、直線は外に出したのが大正解。ゴール寸前さらに伸びた。

 完成されるのが早いなどといわれがちだったエピファネイア産駒は今年「ステレンボッシュ、テンハッピーローズ、ダノンデサイル、そしてブローザホーン」。評価の高い繁殖牝馬が集まった年の産駒ではあるが、早くもGI馬4頭はすばらしい。

 人気のドウデュース(父ハーツクライ)は、状態は絶好と映った。控えて進むのも予定通りと思えたが(3コーナーで同じ位置にいたのは、ブローザホーンとソールオリエンスと、この馬)、こういう滑るような重馬場は本質的に不得手なのだろう。楽に見えても有馬記念のように自分から進出しかかる手ごたえがない。やむなく内を狙ったように思えた。

 2番人気のジャスティンパレス(父ディープインパクト)は内枠が災いし、ずっと内寄りの追走で外に出せる場面がなかった。このスローペースでスタミナを失うような3200mの天皇賞馬ではありえず、初の重馬場が致命的に響いてしまった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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