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オブライエン厩舎から2頭の1000ギニー本命候補が浮上 今後の使い分けは…?

  • 2024年06月26日(水) 12時00分

ロイヤルアスコットの後半戦を一挙公開!


 英国競馬の華と称される、王室主催の「ロイヤルアスコット」が、6月18日から22日にかけて開催された。

 開催を通じて好天に恵まれた中。5日間を通じて前年比で2.8%アップとなる27万3526人の観客を動員。馬場状態も5日間を通じてGood to Firm という乾いてクイックな状態となり、2日目に組まれた3歳馬によるG2クイーンズヴァーズ(芝14F34y)では、3分00秒57というトラックレコードも飛び出した。日本調教馬の参戦が1頭もなかった年に、こういう日本調教馬にとってお誂え向きの舞台になったというのは、何とも皮肉である。

 国王即位後、初めてのロイヤルアスコットとなった2023年、5日間の開催を通じて皆勤し、競馬があまりお好きではないという前評判を、良い意味で裏切ったのがチャールズ3世だった。今年2月に癌を患っていることを公表し、治療と公務を並行されている今年は、果たしてお出ましがあるのかどうか、競馬関係者とファンは期待と不安の両方を抱いていたが、結果から記せば今年も5日間の開催中、4日間において、チャールズ3世の臨場があった。

 唯一御欠席された2日目(19日)には、名代としてウィリアム皇太子がお出ましになったし、カミラ王妃は昨年に続き今年も、5日間全て臨場。エリザベス2世亡きあとも、王室と競馬の結びつきは非常に強いことを改めて印象づけている。

 見どころたっぷりのレースが続いた中、開催後半に大きく動いたのが、来年の3歳牝馬クラシックを巡る前売りマーケットだった。

 開催4日目の21日に組まれていたのが、2歳牝馬による距離6FのG3アルバニーSで、ここでオッズ2.875倍の1番人気に推されていたのが、エイダン・オブライエン厩舎のフェアリーゴッドマザー(牝2、父ナイトオブサンダー)だった。

 叔父にグッドウッド競馬場の2歳G2リッチモンドS(芝6F)勝ち馬プロリフィック、祖母の1歳年上の半兄にニューマーケットの2歳G2ロイヤルロッジS(芝8F)勝ち馬アトランティスプリンスがいるという血統背景を持つ同馬。4月29日にネース競馬場のメイドン(芝6F)でデビューし2着に終わると、次走は強気に同じくネース競馬場のG3フィリーズスプリントS(芝6F)に挑み、ここを制し重賞で初勝利を挙げての参戦となったのがG3アルバニーSだった。

 ライアン・ムーア騎手が乗るフェアリーゴッドマザーは、前半は馬群後方を追走。残り2F付近から馬群を割って抜け出そうとした同馬だったが、前が壁になって出ていく隙間がなく、ムーア騎手は馬場真ん中から馬場大外へと進路を大きくスイッチ。大きな距離損があったが、残り150mぐらいから鋭い末脚を繰り出したフェアリーゴッドマザーは、見事な差し切り勝ちで重賞連勝を果した。

 オブライエン師はレース後、今後は9月15日にカラ競馬場で行われるG1モイグレアスタッドS(芝7F)を秋の目標にしたいとコメント。そしてこの段階でフェアリーゴッドマザーは、来年5月4日にニューマーケットで行われるG1英1000ギニー(芝8F)へ向けた前売りで、1番人気(オッズ6.0倍〜7.0倍)に浮上することになった。

 ところが、フェアリーゴッドマザーは1000ギニー本命の座から、たった24時間で陥落することになった。

 ロイヤルアスコット最終日(22日)に組まれていたのが、2歳による距離7FのLRチェシェイムSだ。ここでオッズ2.375倍の1番人気に推されたのが、同じくエイダン・オブライエンが管理するベッドタイムストーリー(牝2、父フランケル)だった。

 現役時代、ヨーク競馬場のG1ナンソープS(芝5F)を連覇したメッカズエンジェルの5番仔となるのがベッドタイムストーリーだ。

 昨年10月にカラ競馬場で行われたG3スタフォーズスタッドS(芝8F)の勝ち馬で、その後サンタアニタのG1BCジュヴェナイルフィリーズターフ(芝8F)で4着となったコンテントは、本馬の1歳年上の半姉である。

 6月6日にレパーズタウン競馬場のメイドン(芝7F60y)でデビューしたベッドタイムストーリーは、そこを1.1/4馬身差で制して緒戦勝ち。2戦目となったのが、LRチェシェイムSだった。

 こちらもライアン・ムーア騎手が手綱をとったベッドタイムストーリーは、前半は馬群内側7〜8番手を追走。残り500m付近から鞍上の手が動くと、素早く反応して先頭に立ち、その後はノーステッキのまま、2着以下に9.1/2馬身差をつける圧巻のパフォーマンスで2連勝を飾った。

 これに瞬時に反応したのがブックメーカー各社で、G1英1000ギニー(芝8F)へ向けた前売りで同馬に、3.75倍から4.0倍のオッズを提示し、1番人気に浮上させることになった。

 ベッドタイムストーリーに関してオブライエン師は、今後も7F路線を進むことになるだろうとコメント。その言葉通りなら、9月15日のG1モイグレアスタッドSでフェアリーゴッドマザーと顔を合わせることになる。

 フェアリーゴッドマザーとベッドタイムストーリーが、今後どのような成長を見せるか。オブライエン師が2頭の素質馬をどう使い分け、どこで直接対決させるか。今後の大きな見どころとなりそうである。

 なおロイヤルアスコットのG1・8競走と、オルバニーS、チェシェイムSなどの主要2歳戦の模様は、グリーンチャンネルで6月28日(金曜日)夜10時30分から放送される「All In Line〜世界の競馬」でご紹介する予定となっている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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