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【ヤマニンウルス×嶋津篤調教助手】“無敗の怪物候補”は馬房でドンくさい…? お茶目な素顔を公開!

  • 2024年06月30日(日) 18時01分
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▲プロキオンSに参戦するヤマニンウルスの性格は...?(撮影:大恵陽子)


衝撃的な着差をつけてデビュー戦を圧勝したヤマニンウルス。2着につけた4秒3は、史上最大着差(平地)でした。その後も間隔を空けながら連勝街道を進んだ大型馬が、いよいよ重賞に初挑戦します。

デビュー時から約50kg増え、「馬房での寝起きが苦手」と超大型馬ならではの可愛さを見せる同馬について、斉藤崇史厩舎で担当する嶋津篤調教助手に伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

「まさかあそこまでとは」2着に4.3秒差をつけた衝撃のデビュー戦


──圧勝したダートの新馬戦、580kg超えの雄大な馬体など様々な個性を持つヤマニンウルスですが、第一印象は?

嶋津 「おっきいなぁ」でした。デビュー前ですでに530kgあったと思います。

──小型のポニーよりも大型のばん馬の方が性格は温厚と聞きますが、大型馬のヤマニンウルスも穏やかな性格ですか?

嶋津 基本的に温厚ですね。急な物音とか、ふとした見慣れないものがある時にピッと反応して怖がることがたまにあるくらいです。新馬戦の時は初めての競馬場でしたけど、何も気にしていませんでした。あのレースは放馬があったり、ゲート内でひっくり返った馬がいて全馬、ゲートを入れ直しになったりと色々あったんですけど、この子だけ何も動じていませんでした。

──それでいて、レースに行くとあの強さ。2着に4秒3差をつけるなんて、なかなかお目にかかれません。

嶋津 ゲートに行っていて、バスの車内で実況を聞いて「余裕で勝ったんやな」と思っていたら、まさかあそこまでとは。電光掲示板を見た時には「えっ!」となりました。電光掲示板が壊れたのかな、と思うくらい(笑)。

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▲衝撃の大差勝ちを果たしたデビュー戦(c)netkeba


──勝ちタイム1分44秒3(小倉ダート1700m、稍重)はレコードで、2勝クラスでも通用しそうなタイム。デビュー前からずば抜けた素質を見せていたのでしょうか。

嶋津 厩舎でも「いい馬やな」とは話していたんですけど、最初の頃はトモがまだ緩くてしっかりと使えないので、ハミにモタれて走る感じでした。斉藤先生も「まずはダートからデビューかな」とダートを使ったんですけど、もうダートしか使えなくなっちゃいましたね。

──適性とは別に、馬体の成長度合いに応じて芝・ダートを使い分けることはしばしばありますけど、もうこの強さを見せられては(笑)。

嶋津 すごい大型馬なので、トビやストライドが大きいのはもちろんあるんですけど、乗っていると1完歩の稼ぎ方が違うというか何というか。滞空時間が長いのか、感覚で乗ると調教時計をミスしてしまいます。「え、こんなに時計が出ているの?」って。

──たしかにレースを見ていても、宙に浮いている時間も、1完歩の大きさも他馬とは違うように感じます。普段の動きでも感じますか?


嶋津 狭い動きは苦手なんですよ。馬房の中では結構どんくさいです。

──大柄な人が体の幅が分からずにぶつかるような感じですか?

嶋津 似ているかもしれません。寝起きもどんくさくて、飛節を擦りむいたことも一度ありました。この子にとったら、馬房も少し狭いかもしれないですね。

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▲馬房にいるヤマニンウルスの貴重な写真!(提供:嶋津篤調教助手)


──そうなると、小倉のようなローカル場の小回りコースは苦手な可能性も?

嶋津 それは大丈夫です。苦手なのはもっと狭い所で、角馬場とかですね。速い動きや大きな動きは得意です。

「ドンがいるんでね」存在が“大きい”厩舎の先輩


──これまで間隔を空けながらレースに使ってきていて、8か月ぶりとなった2戦目がプラス24kg、7か月ぶりの3戦目がプラス16kg。これは成長分ですか?

嶋津 そうですね。582kgだった前走が馬体や骨格など含めてちょうどいいくらいかな、と感じました。パドックでも先生と「いい体になりましたね」と話していました。ファンの方は「デカくなりすぎちゃうか」と心配されているかもしれませんが(笑)。

──厩舎の先輩には598kgで勝利歴のあるドンフランキーもいます。

嶋津 ドンがいるんでね、僕らはそんな驚きはないです。ここまで脚元に色々とありましたけど、骨折のような大きな怪我があったわけではなくて、慎重に慎重にやってきました。4歳で体もだいぶしっかりしてきましたね。

──きょうだいは480kg前後の馬が多いですけど、なぜヤマニンウルスだけ大きくなったのだと思いますか?

嶋津 何ででしょうね。でもね、体質とかは似ていますよ。若い時はちょっと弱くて、4歳や古馬になってからしっかりしてくる馬が多い印象です。半兄ヤマニンサンパ(宝塚記念9着)や半姉ヤマニンアンフィル(2勝)がそんな感じでした。

──ヤマニンウルスはどんなところに可愛さを感じますか?

嶋津 上がり運動をしている時です。調教で走り終わって、クリクリの目でキョトンとした顔をしています。引っ張っている僕にしか見られない表情で、可愛いです。

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▲体の大きな牡馬ですが可愛い一面も(撮影:大恵陽子)


──今回は平安SをパスしてプロキオンSに向かうことになりました。意気込みをお願いします。

嶋津 だいぶ状態も上がってきて、2週前の追い切りもすごかったです。坂路で53秒台を馬なりで、まだまだいけるって感じでした。レースから無事に帰ってきてほしい、というのはありますけど、これだけの馬。ファンも待ちに待っていると思うので、無敗のままGIに挑戦できればと思っています。ここも通過点にしたいです。

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▲念願の重賞初制覇へ!「無敗のままGIに挑戦できればと思っています」(撮影:大恵陽子)



(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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